夢の橋

生活13

　病院の薄暗い廊下で４０分待たされる。今日は室長から頼まれて不正融資の状況調査で外に出ている。もちろん担当如きがどうすることもできない内容だ。形だけ午前中相手の会社で調査して抜け出す。１時には総司と待ち合わせの病院の長椅子にかける。彼女は１か月に一度ここで定期検診をする。
「どうぞ」
　看護婦の声で中に入る。おばさんが一度一緒に病院に行くように言われていたのだ。私には分からない検査が３０分ほど続いて、
「今までの中で大きく改善しているな？」
　年配の医者が眼鏡を取ってカルテを見ている。
「もう１０年になるかな？眩暈はここ３か月ないな？お兄さんは初めてだね？」
　これに付いて総司も私も黙って聞いている。説明するのが面倒なのだ。
「交通事故からまだ抜け出していない。今でも総司の夢を見るのか？」
　医者は夢と言う。
「はい」
「それを見なくなると完治するのだがな？現実から逃げようとしている」
　違うように思う。
　病院を出ると総司はスカートをひらひらとしている。
「治ると向こうに行けないのね？」
「どうかな？」
「私向こうで子供出来るのかしら？」
「分からない。でも最近凄くするときに感ずる」
「私もだ」
　酷い時は寝る前にして朝にもする。
「どうだった？」
　おばさんが２人の常連を相手におでんを加えている。
「よくなっていると」
　私は頭を軽く下げると会社に戻る。先ほどから室長からメールが入っている。