夢追い旅

夢人

文字の大きさ
上 下
39 / 248

新しい流れ

しおりを挟む
 突然、舅の取締役からメールが入り、横浜のM商事の支社の支社長室に朝一番に来るように連絡が入った。横浜は、前の社長の相談役の部屋があるところで、今更ここを日参する取締役はいない。彼は会長のポジションも与えられず、そのまま取締役でもない相談役に閉じ込められた。ただ、彼が完全に葬られなかったのは、創業者一族の一人で、一定の株式数をバックに持っていたと言われる。
「鈴木です」
 受付に伝えると、支社長室ではなく相談役室に通された。
「わざわざ悪い」
 取締役が、相談役と並んでソファにかけている。
 こういう時は、黙って成り行きを見るのが賢い。
「君とは初めてだな。墓守のような役だからな」
 相談役から口を開いた。
「昔は、君の舅に上手く罠をかけられた。私の周りにましな男はいなかったんだ。銀座のママが・・・いまさら言っても始まらないな」
「不思議に思っている?」
 昔のような野獣の目を舅はしている。
「どこまで調べた?」
「国崎さんのご存じの話ですか?」
「彼もまだ決心がつかないでいる」
「私にはまだ呑み込めないんです」
「それはそうだ」
 舅がゲラ原稿をテーブルに置く。
 目が活字を追っている。例の赤坂プロジェクトを書いている経済誌ではない。どちらかというと暴露記事の好きな業界誌である。
「国税が赤坂プロジェクトを脱税として目を付けた」
「得意の仕掛けじゃないのですね?」
「残念ながら、会長も無理をし過ぎた」
「ということは、社長派に?」
「会長派も社長派もない。土台の会社が危ない」
 でも、舅はここでも綱渡りをしようとしている。
「会長は藤尾に何か知られている。だから、あんな芝居を打った。国崎さんに情報を知られまいとして、私に轟との繋ぎを依頼した。私もその時は、さしたることではないと深い詮索もしなかった」
 いや、柳沢の女に夢中になっていたのだ。
「今答えは求めない。この記事が出たらもう一度話し合おう」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】この謎、どう思います? バーテンダーさん

まみ夜
ミステリー
看板猫がいるビア・バーを舞台に、ふとした日常での「小さな謎」を、どう思うか尋ねられたバーテンダーが謎解きます。 問題提議(Question)、情報開示(Information)、模範解答(Answer)、推理解説(Metafiction)の四話構成で一エピソード二~三千文字程度で完結のショートショート集です。 気になったワードをググれば、推理に必要な情報を検索可能ですので、特殊な知識不要でフェアな謎のハズです。 ビールを飲みながら、四分で読めるミステリーとして、お楽しみください。 出てくるお料理(おつまみ)にも一ヒネリありますので、ご堪能ください。 (オリジナルおつまみは、拙作「cat typing ~猫と麦酒~」のメニュー/日替わりお料理にまとめておりますので、よろしかったらご一読くださいませ) ナイトスクープでいう小ネタパラダイス。 ・読者様への挑戦 「公開しません」ので、ぜひ感想にて、推理をご披露ください。 もちろん、「公開希望」とお書きいただきましたら、「Answer」の後に、公開させていただきます。 表紙は、リアル雨くん(里子に来て1ケ月程の頃)の写真です。

半透明人間

あかさたな!
ミステリー
半透明って?? 半分透明?例えば上半身だけとか右側だけとか? それとも薄さが半透明で透けるけど、頑張れば見えるってこと? 半透明人間は 感情によって透き通る色がかわる 無なら透明 怒りなら赤が透ける 嬉しいと黄が透ける 悲しいと青が透ける 殺意なら黒とか… このお話は毎週火曜日に1話更新される予定です。 ------------------ →2022.3〜ミステリー大賞に参加します! そのため更新頻度は少し上げます。 3月末に完結する予定です。 長く応援していただき、ありがとうございます。 2022/03/23無事完結を迎えれました! 最後までお楽しみいただけると幸いです。ありがとうございました。

殺意の扉が開くまで

夕凪ヨウ
ミステリー
 警視庁捜査一課に所属する火宮翔一郎は、ある日の勤務中、何者かに誘拐される。いつのまにか失った意識を取り戻した彼の前には、1人の青年が佇んでいた。  青年の名は、水守拓司。その名を聞いた瞬間、互いの顔を見た瞬間、彼らの心は10年前へ引き戻される。  唯一愛を注いでくれた兄を殺された、被害者遺族の拓司。最も大切だった弟が殺人を犯し自殺した、加害者遺族の翔一郎。異なる立場にありながら、彼らは共に10年前の事件へ不信感を持っていた。  そして、拓司は告げる。自分と協力して、10年前の事件の真相を突き止めないか、とーーーー。  なぜ、兄は殺されたのか。 なぜ、弟は人を殺したのか。  不可解かつ不可思議なことが重なる過去の真実に、彼らは辿り着けるのか。

白い男1人、人間4人、ギタリスト5人

正君
ミステリー
20人くらいの男と女と人間が出てきます 女性向けってのに設定してるけど偏見無く読んでくれたら嬉しく思う。 小説家になろう、カクヨム、ギャレリアでも投稿しています。

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

こちら百済菜市、武者小路 名探偵事務所

流々(るる)
ミステリー
【謎解きIQが設定された日常系暗号ミステリー。作者的ライバルは、あの松〇クン!】 百済菜(くだらな)市の中心部からほど近い場所にある武者小路 名探偵事務所。 自らを「名探偵」と名乗る耕助先輩のもとで助手をしている僕は、先輩の自称フィアンセ・美咲さんから先輩との禁断の関係を疑われています。そんなつもりは全くないのにぃ! 謎ごとの読み切りとなっているため、単独の謎解きとしてもチャレンジOK! ※この物語はフィクションです。登場人物や地名など、実在のものとは関係ありません。 【主な登場人物】 鈴木 涼:武者小路 名探偵事務所で助手をしている。所長とは出身大学が同じで、生粋の百済菜っ子。 武者小路 耕助:ミステリー好きな祖父の影響を受けて探偵になった、名家の御曹司。ちょっとめんどくさい一面も。 豪徳寺 美咲:耕助とは家族ぐるみの付き合いがある良家のお嬢様。自称、耕助のフィアンセ。耕助と鈴木の仲を疑っている。 御手洗:県警捜査一課の刑事。耕助の父とは古くからの友人。 伊集院:御手洗の部下。チャラい印象だが熱血漢。

妻の失踪

琉莉派
ミステリー
 友部海斗(23)は、苦難の時期をささえてくれた純粋無垢な恋人・片山桜織を捨て、大金持ちの娘・奥平雪乃と結婚した。  結婚から二年が過ぎた頃、海斗は政治家になるべく次期市議選への出馬準備を進めていた。そんな折、弟の凌馬が深夜に突然やってきて、真っ青な顔で殺人を犯してしまったと告白。露見すれば海斗の政治生命が絶たれると考えた雪乃は、殺人の隠ぺいを提案。凌馬とともに遺体処理に向かうが、その翌日、雪乃は忽然と煙のように姿を消してしまう。  妻の行方を追う海斗がたどりついた、驚愕の真実とは……。

真夏に降る雪・真夏の雪はあなたを狂わせる

グタネコ
ミステリー
遺伝子組み替え技術で作成した薬が、町に降り注ぐ。人々は健康になるのだが、しだいに……。

処理中です...