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【24:高貴な良い名じゃ】
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ロリ神様は嬉しそうに俺の両手を握りながら、名前を訊いてきた。
「あの……柴崎天心だ」
「天心か。天の心な。高貴な良い名じゃ」
「あ、ありがとう」
「お前は優しいし、それになぜだか魅力を感じるぞよ。ワシはお前さんが大好きじゃ!」
ロリ神様は突然、俺に抱きついてきた。といってもちびっ子だから、俺の腰辺りにだけど。近所の子供に抱きつかれてるような気分だ。
「ちょ、ちょい待ってくれ」
「大好きじゃ、大好きじゃ」
ロリ神様は頰を俺の腰に押さえつけて、目を閉じてスリスリ、スリスリしてる。
あ、その仕草、結構可愛い……
でも俺が人生で初めて女の子に『好き』と言われた相手が、こんなロリっ子だということがとってもとっても残念だ。
──いや、100歳か。
この場合、どう考えればいいんだ?
お相手はロリっ子なのかお婆ちゃんなのか?
いや、どっちにしても神様相手にそれはないな。真剣に考えることじゃない。
「こら、このロリ婆あ、離れろ!」
神凪が急に立ち上がって、俺の腰にまとわりつくロリ神様に向かってつかみかかった。
そしてロリ神様を俺から引き剥がそうとする。だけどロリ神様は両腕に力を入れて、さらにしがみつく。
無理やりはがそうとするなよ。腰が痛ぇよー!
「おい待て、神凪。周りを見ろ」
周りを見回すと、店内の他のお客さんが不審な顔をこちらに向けている。周りの人からはロリ神様は見えないから、神凪が単に俺の腰にしがみついてるようにしか見えないに違いない。
しかもしがみついてる神凪本人が、なぜか『離れろ!』って叫んでるんだから、周りからしたら神凪がおかしな子に見えてるはずだ。
「あの子、あんなに美人なのに、かわいそうに……」
ほら。そんな声がひそひそと聞こえる。
それに気づいた神凪は、顔を真っ赤にして黙り込んだ。
「神凪。とにかく店を出よう」
「う、うん」
俺たちは席を立って、周りの人たちが怪訝に見つめる中を、ばたばたとカフェの出口に向かった。
慌ててカフェを出て、行き先も特に決めないまま二人と一柱で揃って歩き出すと、ようやくロリ神様は俺から離れて自分で歩いてくれた。
神凪が牽制するようにロリ神様をチラチラ見ながら、俺に尋ねてきた。
「これからどこ行く?」
「どこ行くって、貧乏神を探すっていう目的は済んだし、帰るしかないよな」
「そ、そうね」
ん? どうした?
なぜか神凪は残念そうだ。
あ、もしかして俺に何か食い物でも奢らせたいのか? さっきのカフェではワリカンだったしなぁ。
いや、女の子だから男に奢ってもらって当然という考えはいかがなものか。そりゃ神凪くらい美少女なら、奢ってやるという男は引く手あまたなんだろうけど。
俺はそんな俗世間な慣習には、断固抵抗するぞ!
──って、変なとこにこだわるから、俺は余計にモテないんだろうな。まあ仕方ない。
「ということで、帰るってことでいいかな、神凪?」
「え? ああ、そうね」
「ロリ神様はどうすんの? 周辺調査?」
「ワシも帰って寝る」
「帰るってどこに?」
帰る家なんかないだろうに。どうすんだ、こいつ?
しかも寝るって。神様もやっぱり眠るのか?
「巫女の家に泊まらせてくれ。神社だろう?」
「えっ、ちょっと待って! あんた、ウチ来る気? ダメよ!」
「なんでじゃ?」
「ウチの神社のご祭神様が嫌がるし!」
神凪は全身を大きく動かして拒否ってる。神凪はさっきからロリ神様を嫌ってるみたいだし、一緒にいるのはきっと嫌なんだろな。
「お前んとこのご祭神様はどなたじゃ?」
「凪桑神様よ」
「おお。凪桑神様なら、ワシの遠い親戚じゃから、歓迎してくれるぞよ」
神凪は目が点になってる。予想外の答えだったみたいだ。
おもろいな。さあ、神凪はどう切り返すんだ?
「ダメったらダメ! い、や、だ!」
ありゃ。とうとう駄々っ子のような断り方になっちゃったよ。ロリ神様はちょっと悲しそうな顔をしてる。かわいそうに。
「なぁ、ロリ神様。神社じゃないけど、俺んちに来るか?」
「お? おおっ? 天心の家に泊めてくれるか? それならば、ワシはその方が嬉しいぞよ」
「そっか。いいよ」
「一緒に風呂に入ろうな、天心よ!」
「いや、ちょっとそれは……」
ロリっ子と一緒に風呂なんて、俺を犯罪者にしないでくれ! いや、100歳の婆ちゃんだけど……ああっ、もう! いったいどう考えたらいいんだよ?
「あーっ!」
突然神様凪が大きく口を開けて、大声を出した。
なんだ? 何が起きた?
「そうだそうだ。ウチの神社では、今『いらっしいませ神様キャンペーン』をやってるんだった!」
な、なんじゃ、そら?
神社でそんなキャンペーンをやってるなんて、聞いたことないぞ。神凪んとこの神社は、よっぽど変わり種か?
「だから豊姫美様、ウチに来なさい」
おいおい、巫女が神様に命令してるよ。大丈夫か? ばちが当たったりしないのか?
「いや、ワシは天心の家に泊まると決めたんじゃ」
「え~っ? 天心君の家は、お父さんお母さんに迷惑かかるから、ダメだよねぇ」
「え? いや、別にそれほどでも……」
「だ、め、だ、よ、ねぇ~!!」
神凪はずいっと一歩近づいて、俺に顔を寄せて睨みつけてくる。
ち、近い。そして怖い。
「はい」
俺は速攻で同意してしまった。
──うーん、俺って弱い。
ロリ神様は不満げな様子だけど仕方ない。これ以上神凪に逆らったら殺される。
ロリ神様の行き先が決まり、ようやく解散となって、神凪は渋るロリ神様を引きずるようにして、家の方に帰っていった。
◆◇◆
私の家、神凪神社に豊姫美様──いや、天心君のように、もうコイツはロリ神様と呼んでやろう。ロリ神様を無理矢理連れて帰ってきたけど。
ほんっと、なんなのよコイツ。
今日はせっかく貧乏神を確認しに行くという口実をつけて、天心君と休みの日に会えたのに。
コイツのせいで台無しー!
はい、ジ・エンドー!
今まで天心君と会ってる時って、なんだかんだでバタバタすることが多かったし、一度ゆっくりと話をしてみたかった。天心君の霊力や、彼がいったい何者なのかを探りたいという気持ちもある。
それと素直に自分を出して、もっと天心君と仲良くなりたかったなぁ。せっかく気合いを入れて、可愛いカッコをして行ったのに。
なのに──
ロリ神様のせいで。
すべてが台無し。
どうすりゃいいの?
はぁっ。ロリ神様は何も言わずについてくるけど、こいつの顔を見てたらため息が出るわ。
でも天心君の家に行かせて、彼と二人っきりにさせるよりはマシ。
そんなことを考えながら歩いてるうちに、神凪神社の裏にある、木造一戸建ての我が家に着いた。
「あの……柴崎天心だ」
「天心か。天の心な。高貴な良い名じゃ」
「あ、ありがとう」
「お前は優しいし、それになぜだか魅力を感じるぞよ。ワシはお前さんが大好きじゃ!」
ロリ神様は突然、俺に抱きついてきた。といってもちびっ子だから、俺の腰辺りにだけど。近所の子供に抱きつかれてるような気分だ。
「ちょ、ちょい待ってくれ」
「大好きじゃ、大好きじゃ」
ロリ神様は頰を俺の腰に押さえつけて、目を閉じてスリスリ、スリスリしてる。
あ、その仕草、結構可愛い……
でも俺が人生で初めて女の子に『好き』と言われた相手が、こんなロリっ子だということがとってもとっても残念だ。
──いや、100歳か。
この場合、どう考えればいいんだ?
お相手はロリっ子なのかお婆ちゃんなのか?
いや、どっちにしても神様相手にそれはないな。真剣に考えることじゃない。
「こら、このロリ婆あ、離れろ!」
神凪が急に立ち上がって、俺の腰にまとわりつくロリ神様に向かってつかみかかった。
そしてロリ神様を俺から引き剥がそうとする。だけどロリ神様は両腕に力を入れて、さらにしがみつく。
無理やりはがそうとするなよ。腰が痛ぇよー!
「おい待て、神凪。周りを見ろ」
周りを見回すと、店内の他のお客さんが不審な顔をこちらに向けている。周りの人からはロリ神様は見えないから、神凪が単に俺の腰にしがみついてるようにしか見えないに違いない。
しかもしがみついてる神凪本人が、なぜか『離れろ!』って叫んでるんだから、周りからしたら神凪がおかしな子に見えてるはずだ。
「あの子、あんなに美人なのに、かわいそうに……」
ほら。そんな声がひそひそと聞こえる。
それに気づいた神凪は、顔を真っ赤にして黙り込んだ。
「神凪。とにかく店を出よう」
「う、うん」
俺たちは席を立って、周りの人たちが怪訝に見つめる中を、ばたばたとカフェの出口に向かった。
慌ててカフェを出て、行き先も特に決めないまま二人と一柱で揃って歩き出すと、ようやくロリ神様は俺から離れて自分で歩いてくれた。
神凪が牽制するようにロリ神様をチラチラ見ながら、俺に尋ねてきた。
「これからどこ行く?」
「どこ行くって、貧乏神を探すっていう目的は済んだし、帰るしかないよな」
「そ、そうね」
ん? どうした?
なぜか神凪は残念そうだ。
あ、もしかして俺に何か食い物でも奢らせたいのか? さっきのカフェではワリカンだったしなぁ。
いや、女の子だから男に奢ってもらって当然という考えはいかがなものか。そりゃ神凪くらい美少女なら、奢ってやるという男は引く手あまたなんだろうけど。
俺はそんな俗世間な慣習には、断固抵抗するぞ!
──って、変なとこにこだわるから、俺は余計にモテないんだろうな。まあ仕方ない。
「ということで、帰るってことでいいかな、神凪?」
「え? ああ、そうね」
「ロリ神様はどうすんの? 周辺調査?」
「ワシも帰って寝る」
「帰るってどこに?」
帰る家なんかないだろうに。どうすんだ、こいつ?
しかも寝るって。神様もやっぱり眠るのか?
「巫女の家に泊まらせてくれ。神社だろう?」
「えっ、ちょっと待って! あんた、ウチ来る気? ダメよ!」
「なんでじゃ?」
「ウチの神社のご祭神様が嫌がるし!」
神凪は全身を大きく動かして拒否ってる。神凪はさっきからロリ神様を嫌ってるみたいだし、一緒にいるのはきっと嫌なんだろな。
「お前んとこのご祭神様はどなたじゃ?」
「凪桑神様よ」
「おお。凪桑神様なら、ワシの遠い親戚じゃから、歓迎してくれるぞよ」
神凪は目が点になってる。予想外の答えだったみたいだ。
おもろいな。さあ、神凪はどう切り返すんだ?
「ダメったらダメ! い、や、だ!」
ありゃ。とうとう駄々っ子のような断り方になっちゃったよ。ロリ神様はちょっと悲しそうな顔をしてる。かわいそうに。
「なぁ、ロリ神様。神社じゃないけど、俺んちに来るか?」
「お? おおっ? 天心の家に泊めてくれるか? それならば、ワシはその方が嬉しいぞよ」
「そっか。いいよ」
「一緒に風呂に入ろうな、天心よ!」
「いや、ちょっとそれは……」
ロリっ子と一緒に風呂なんて、俺を犯罪者にしないでくれ! いや、100歳の婆ちゃんだけど……ああっ、もう! いったいどう考えたらいいんだよ?
「あーっ!」
突然神様凪が大きく口を開けて、大声を出した。
なんだ? 何が起きた?
「そうだそうだ。ウチの神社では、今『いらっしいませ神様キャンペーン』をやってるんだった!」
な、なんじゃ、そら?
神社でそんなキャンペーンをやってるなんて、聞いたことないぞ。神凪んとこの神社は、よっぽど変わり種か?
「だから豊姫美様、ウチに来なさい」
おいおい、巫女が神様に命令してるよ。大丈夫か? ばちが当たったりしないのか?
「いや、ワシは天心の家に泊まると決めたんじゃ」
「え~っ? 天心君の家は、お父さんお母さんに迷惑かかるから、ダメだよねぇ」
「え? いや、別にそれほどでも……」
「だ、め、だ、よ、ねぇ~!!」
神凪はずいっと一歩近づいて、俺に顔を寄せて睨みつけてくる。
ち、近い。そして怖い。
「はい」
俺は速攻で同意してしまった。
──うーん、俺って弱い。
ロリ神様は不満げな様子だけど仕方ない。これ以上神凪に逆らったら殺される。
ロリ神様の行き先が決まり、ようやく解散となって、神凪は渋るロリ神様を引きずるようにして、家の方に帰っていった。
◆◇◆
私の家、神凪神社に豊姫美様──いや、天心君のように、もうコイツはロリ神様と呼んでやろう。ロリ神様を無理矢理連れて帰ってきたけど。
ほんっと、なんなのよコイツ。
今日はせっかく貧乏神を確認しに行くという口実をつけて、天心君と休みの日に会えたのに。
コイツのせいで台無しー!
はい、ジ・エンドー!
今まで天心君と会ってる時って、なんだかんだでバタバタすることが多かったし、一度ゆっくりと話をしてみたかった。天心君の霊力や、彼がいったい何者なのかを探りたいという気持ちもある。
それと素直に自分を出して、もっと天心君と仲良くなりたかったなぁ。せっかく気合いを入れて、可愛いカッコをして行ったのに。
なのに──
ロリ神様のせいで。
すべてが台無し。
どうすりゃいいの?
はぁっ。ロリ神様は何も言わずについてくるけど、こいつの顔を見てたらため息が出るわ。
でも天心君の家に行かせて、彼と二人っきりにさせるよりはマシ。
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