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【第11話:レムンとララティ】

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 学校から帰宅すると、一番にレムンが迎えてくれた。この前からウチで飼ってる妖狐ようこフックスだ。

 俺の姿を見ると駆け寄ってきて、飛びついてくる。
 抱き抱えてやると、愛らしい顔をスリスリ擦りつける。

「なにこの可愛い生物!」

 俺もお返しに頬を擦りつける。
 するとレムンが、またスリスリしてくれる。

 彼女は──レムンはメスらしいって妹のカナが言ってた──俺のことを好いてくれてるみたいだ。嬉しい。

「よし、散歩に行くか!」

 人間の言葉がわかるのか、俺が言うと嬉しそうに尻尾を振る。耳もぴょこぴょこ動いてる。可愛い。

 レムンを散歩に連れて行くのはすっかり日課になった。彼女は散歩が大好きで、いつもはしゃいで走り回る。

 今日は裏山に行った。レムンは嬉しそうに走り回っている。

「おーい、あんまり遠くに行くなよ~」

 レムンは走り回った末に、時々俺の姿を見失う。
 すると必死で俺を探して、俺を見つけると嬉しそうに駆け寄って来る。マジ可愛い。

『魔獣と言えども愛情を持って育てたら、心を通わせることができる。そうなれば人間を襲わずに済む』

 本に書いてあることを実現するためにも、俺はレムンに愛情をたっぷり注いで育てるつもりだ。
 妹のカナもレムンを大好きで可愛いがってるし、きっと大丈夫だろう。

「ただいま~」
「お帰り」

 散歩から帰宅すると、ララティが迎えてくれた。

「またレムンの散歩か」
「うん、そうだよ」
「ズルいぞ、レムンばっかり」
「……え? なにが?」
「いや別に。なんでもない」

 ララティがなぜか不機嫌だ。なんでだろう。

「◯※+♪※……!」

 ──ん? ララティが何やら訳の分からない言葉(?)でレムンに話しかけてる。
 それに対してレムンは「フグゥルルルゥゥゥ!」と唸り声を上げてる。

「おいおいお前ら、どうしたんだ? ケンカか?」
「いや、別に。ケンカなんかしてないし」

 なんて言いながら、プイとそっぽを向くのはなぜだ。明らかにケンカしてるだろ。

「なあララティ。レムンと仲良くしてくれよ」
「はい、わかりました」

 ララティは突然レムンを抱き上げて椅子に座った。そして膝の上にレムンを乗せ、優しく背中の毛並みを撫でる。

 最初は何事かと抵抗していたレムンも、ララティに敵意がないのがわかると、撫でられるに任せてる。気持ちよさそうだ。

 その気になればできるじゃないか。
 うんうん。仲良きことは美しいきかな

 それにしてもララティって、やっぱいいヤツだな。俺がお願いしたら素直に受け入れてくれるし。

「くっ……また眷属の……」
「え?」
「いや別に何もない。気にすんな」
「あ、うん。ところでララティ、今日はありがとう」
「なんの話だ?」
「魔法実技の時間さ。ツバルに『人をバカにするのはやめた方がいい』って言ったことさ。あれは俺のためだろ? ホントに感謝しかないよ」
「さあ。そんなこと言ったかな。記憶にない」

  そんな男前なセリフを吐くララティ。
 だけどニヤニヤが抑えきれてない。顔に『もっと言って』と書いてあるぞ。

「そっか。じゃあ俺の勘違いだな。まあいいや」

 わざと冷たく言って、台所に向かおうと一歩踏み出す。

「あ、いや。ちょっと待てフウマ」
「ん? どうした?」
「いや、今思い出した。確かにあたし、そんなこと言ったわ」
「何を?」

 わかってて、ちょっと意地悪したくなった。

「いやだから……ツバルにさ」
「やっぱりそうか。俺の勘違いじゃなかったんだな」
「そうだよ。だからあの……その……」
「なに?」

 なんでかはっきりしないララティ。
 どうしたんだ?

「もっとあたしを褒めていいんだぞ」

 なんだそれーっ!
 ツンデレかよ!

「ララティ。ホントにありがとう。めっちゃ感謝しかない。カッコ良かったし、最高だ」
「そっか?」
「ああ、そうだよ」
「えへへ」

 真っ赤な顔で頭を掻いてる。
 コイツ、マジで魔王の娘なのか?

 褒められ慣れてないのか、えらく照れてる。
 ギャップが可愛すぎるぞ。

 そっか。魔族って冷酷だし、きっとお互いに褒め合うとかあまりないんだろうなきっと。

 あまりに照れすぎたからなのか、ララティは膝の上のレムンを、すごい速さで撫で始めた。

 摩擦でレムンが苦しそうだから、やめてあげて!
 いやそれどころか、ララティの手から大量の魔力が漏れてるぞ!
 その魔力がどんどんレムンの体内に取り込まれてる!

「おい、ララティ! ヤバい! やめろ!」
「え? なにが?」

 その時突然、レムンの身体が眩しく光った。

「うわっ!」

 眩しくて目を閉じる。
 そしたらララティが叫ぶ声が聞こえた。

「うわぁ! しまった!」

 ──え? どうした?

 目を開けると、目の前には信じられないものがあった。

 黄色い髪の可愛い女の子。頭には獣のような耳が生えている。
 服装も動物の毛のような感じで、肩やお腹が出ている。下はショートパンツのような形で、白くて長い脚が眩しい。
 
「……だ、だれっ!?」

 セクシーな女の子が突然目の前に現れたら、誰だってパニックになる。
 しかもそれがまるで獣人のような見た目なんだからなおさらだ。

「フウマ様。……わたし、レムンですわ」
「……え?」

 ──なに言ってるかわからない。

 だけどその言葉の意味を脳が理解した瞬間、俺は叫んでいた。

「えええぇぇぇ~っっっ!? れ、レムン!?」
「はい」

 なんとまあ。びっくりした。
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