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油断しました

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今日はノア先生との最初の授業の日。晴天だったのでせっかくだから外で授業をしようと連れ出された。
今、ノア先生とテラスでイスに座りながら授業を受けている…のだが、距離が近い。向かい合わせでも良いのに隣で1冊の教科書を一緒に見ている状態だ。

「あの、ノア先生」
「なんだい?アリーチェ」

微笑みながらノア先生が問うてくるが、名前を呼ばれていることと至近距離にあるその美形が相まってとてつもない破壊力をもっている。最初はアリーチェ様と呼ばれていたのだが、なんだかこのイケメンさんに様をつけて呼ばれるのがこそばゆくて呼び捨てで呼ぶようにお願いしたのだ。

「距離が、その…」
「距離が、なんだい?」

分かってるくせにノア先生は笑顔ですごく距離を詰めてくる。あまり無下に出来ないのは、彼の父にどうやら父様がとてもお世話になったらしく「くれぐれも無下に扱わないように」と先日かなり念を押されてしまったからだ。
さらに、私が少しでも冷たく接するとしょぼんとした顔を見せるのだ、本当にずるい、確実に分かっててやってる。

「えっと、さすがに近すぎて集中できないかなぁ…なんて…?」
「ふーん?でもアリーチェは授業から脱走して池に落ちたって聞いたんだけど。」
「う…それは、そうなんですけど…」
「それにこんなに一気に痩せて、心配なんだよね、僕。だから倒れると困るからこれあげるね。」

有無を言わさぬ笑顔で手を取られブレスレットをはめられた。それはパワーストーンのブレスレットのように、紫色と赤色と透明な色の3色の石によって構成されていた。

「これ、なんですか?」
「ん?これはね、僕お手製のブレスレットで、魔法を込めてある。つまり魔導具。」
「魔導具…?」
「そう、このブレスレットに使われているのは魔法石と言って、魔法を込めることができるんだ。ただ、その魔法に見合う魔法石の数や大きさが必要になってくるんだ。今回の場合は3つ付与したかったから3色にしたんだ。」
「何の魔法が込められているんですか?」
「1つ目はどのくらい食べても食べなくても体に適切な栄養を補給する魔法、これは治癒魔法の応用ね。だから今まで通りお肉とかお菓子とか食べても大丈夫だよ。」

ノア先生の言葉に思わず息を飲んだ。そんな夢みたいな魔法、世の女性が聞いたらみんな欲しがるだろう。それに私にとってもすごく嬉しいことだ。フルーツばかりだと心配だと周りからすごく言われていたから、このブレスレットさえあればフルーツだけを好きなだけ食べることが出来る。

「そんな夢みたいな魔法、あるんですね…すごいです…!!」
「うん、でも今のところ僕にしか出来ないだろうからアレックス…様にしか言っちゃダメだよ?それと2つ目と3つ目は君を守る魔法だよ。詳しいことは秘密。」
「秘密…?!3つのうち2つも秘密なんて怖いです!!やです!!」

そう言って慌ててブレスレットを外そうとしたのだが、外れない。ビクともしない。それでも頑張って外そうと奮闘してるとノア先生がくすくすと笑い始めた。

「アリーチェ、無駄だよ。1度つけたらブレスレットの魔法はずーっと発動するようになってて、しかも僕しか外せないようになってるんだよね。諦めて♡」

私はノア先生の言葉に絶望することになった。

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