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2章 特訓
杖の効果
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そう言って息を吸い込み詠唱を始めようとするレオナルド先生に私は慌てて立ち上がる。
「ちょ…!!ちょっと待ってください!!」
「え、なんで?」
レオナルド先生が心底不思議そうに首をコテンと傾げるが、そんな可愛い仕草をしようが自分の身が第一だ。
「先程、ご自身でおっしゃいましたよね?普通の杖を使うのとでは威力が桁違いだと。」
「うん、言ったねぇ。」
「では例え初歩の初歩の魔法であってもこの部屋の中で使ったら大変なことになるのでは…?」
誰でも考えつくことだとは思うのだが、レオナルド先生は目をぱちくりさせてから「あー」と間抜けな声をあげた。
「そういえばそうだねぇ。ここで使ったら大変なことになるところだったぁ。」
危ない危ないとレオナルド先生は笑っているが、こっちにしてみたら肝が冷える。命が幾つあっても足りない。語尾が間延びしている事から察するに余程魔法を使うのが楽しみで他のことに考えがいってないのだろう。
「これから訓練場に行くのも、杖をまた引っ込めて顕現させるのもめんどくさいからこっからでいっかぁ。」
そう言いつつレオナルド先生が窓際へ寄り、私達をちょいちょいと手招きする。私とフラン兄様はお互いに顔を見合わせてからレオナルド先生の傍へ行くと、彼は窓を開け放ち、杖を庭園へ向けた。その庭園の一角はちょうど花の植え替えの時期で何も植えられていなかった。
「『大地の魔法書第1部土の魔法1-1-1土よ、大いなる大地よ。その身を今こそ槍と変えん。土の槍』」
そう唱えた瞬間何の変哲もなかった庭園の土がグワッと持ち上がったかと思ったら、槍のように鋭い、2mほどの高さの三角錐を作り上げた。
「これが基礎詠唱ねぇ。普通の杖ならこの詠唱をしても10cmくらいのものしかできないんだぁ。じゃあ次ね!!」
そう言ってレオナルド先生が息を整える。
「『土よ、槍となれ。土の槍』」
すると、先程の槍の隣の位置からすごい勢いで土が巻き上がり、10m程の高さの三角錐を作り上げる。この屋敷は2階建てなのだが、天井がすごく高くできているためきっと屋根と三角錐はいい勝負をしているのだと思う。
「これが短縮詠唱。人によって短縮の仕方は変わってくるだぁ。じゃあ最後に」
レオナルド先生が杖を向け直そうとした時、後ろからバァンと音がした。振り向くと、父様が扉を開け放っており、鋭い視線がレオナルド先生へ向けられている。その氷を思わせるような視線にレオナルド先生の笑顔が引き攣る。
「レオナルド…何をしているのかな…?」
「ア、ハハハ…」
父様の凍えそうなくらいの重低音にレオナルド先生は乾いた笑いしかでないようだ。
この後、レオナルド先生は父様に2時間くらい説教をされ、庭園を完全に元に戻させられたらしい。だから嫌な予感がしたんだよね。まあ今回の事は魔法バカには良い薬になったのではないだろうか。そう思い内心私はほくそ笑んだ。
「ちょ…!!ちょっと待ってください!!」
「え、なんで?」
レオナルド先生が心底不思議そうに首をコテンと傾げるが、そんな可愛い仕草をしようが自分の身が第一だ。
「先程、ご自身でおっしゃいましたよね?普通の杖を使うのとでは威力が桁違いだと。」
「うん、言ったねぇ。」
「では例え初歩の初歩の魔法であってもこの部屋の中で使ったら大変なことになるのでは…?」
誰でも考えつくことだとは思うのだが、レオナルド先生は目をぱちくりさせてから「あー」と間抜けな声をあげた。
「そういえばそうだねぇ。ここで使ったら大変なことになるところだったぁ。」
危ない危ないとレオナルド先生は笑っているが、こっちにしてみたら肝が冷える。命が幾つあっても足りない。語尾が間延びしている事から察するに余程魔法を使うのが楽しみで他のことに考えがいってないのだろう。
「これから訓練場に行くのも、杖をまた引っ込めて顕現させるのもめんどくさいからこっからでいっかぁ。」
そう言いつつレオナルド先生が窓際へ寄り、私達をちょいちょいと手招きする。私とフラン兄様はお互いに顔を見合わせてからレオナルド先生の傍へ行くと、彼は窓を開け放ち、杖を庭園へ向けた。その庭園の一角はちょうど花の植え替えの時期で何も植えられていなかった。
「『大地の魔法書第1部土の魔法1-1-1土よ、大いなる大地よ。その身を今こそ槍と変えん。土の槍』」
そう唱えた瞬間何の変哲もなかった庭園の土がグワッと持ち上がったかと思ったら、槍のように鋭い、2mほどの高さの三角錐を作り上げた。
「これが基礎詠唱ねぇ。普通の杖ならこの詠唱をしても10cmくらいのものしかできないんだぁ。じゃあ次ね!!」
そう言ってレオナルド先生が息を整える。
「『土よ、槍となれ。土の槍』」
すると、先程の槍の隣の位置からすごい勢いで土が巻き上がり、10m程の高さの三角錐を作り上げる。この屋敷は2階建てなのだが、天井がすごく高くできているためきっと屋根と三角錐はいい勝負をしているのだと思う。
「これが短縮詠唱。人によって短縮の仕方は変わってくるだぁ。じゃあ最後に」
レオナルド先生が杖を向け直そうとした時、後ろからバァンと音がした。振り向くと、父様が扉を開け放っており、鋭い視線がレオナルド先生へ向けられている。その氷を思わせるような視線にレオナルド先生の笑顔が引き攣る。
「レオナルド…何をしているのかな…?」
「ア、ハハハ…」
父様の凍えそうなくらいの重低音にレオナルド先生は乾いた笑いしかでないようだ。
この後、レオナルド先生は父様に2時間くらい説教をされ、庭園を完全に元に戻させられたらしい。だから嫌な予感がしたんだよね。まあ今回の事は魔法バカには良い薬になったのではないだろうか。そう思い内心私はほくそ笑んだ。
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