11 / 27
1章 家族
兄が出来ました
しおりを挟む
マリアは部屋に入ってくるなり私も見てクスッと笑った。たしかに傍から見れば、5歳の女の子が眼帯をつけて鏡をじっくり見ているのだから、微笑ましいだろう。だけど私の中身は20歳+5歳、マリアはたしか15歳だから年下だ。
そのまま化粧台に備え付けられた椅子にちょこんと座り、恥ずかしくて下を向く。前世では顔に感情が出ないように出来たのに、体の年齢に引っ張られているからか難しいのだ。とは言っても目が少し見開かれ、頬がピンクに染まる程度だが、マリアには見抜かれているだろう。
そんな私の反応を見てマリアはさらに笑みを深め、私の背後までやって来た。
「おはようございます、シノン様」
「…おはよう、マリア」
「本日はどのような髪型になさいますか?」
どのような…自分で真っ直ぐはいいと断っておいて具体的な案を挙げないのも申し訳ないと思いつつ、鏡に映る自分を見る。
(なんか白い髪の毛がクセっ毛でふわふわしててなんだか羊みたい…羊…いいかも!!)
「マリア。私、羊がいいわ」
「羊、でございますか?」
「うん、サイドの髪を三つ編みにしてそれを上の方で羊の角みたいに渦巻き状にしてピンで止めれば完成で、簡単だと思うのだけど…だめかしら?」
「いえ、シノン様ならとてもお似合いになられますよ」
そう言ってマリアは微笑んでくれた。羊は私の好きな動物NO.1なのだ。羊を数えてればすぐに眠れるし、私にとっては良いパートナーでもあった。それから5分もしないうちに髪型は完成し、化粧と着替えを済ませた私は父様の待つ執務室へ向かった。
父様の執務室のドアをノックし、返事を待ってからドアを開けた。何気に執務室に入るのはこれが初めてで少し緊張する。部屋には、椅子から立ち上がったばかりの父様とこちらに背を向けて立っている子供がいた。
父様がこちらへ近づいてくると、その子がつられてこちらを向いた。少しだけ息を飲んでしまったのは仕方ないだろう。父様が私の手を取り、男の子の目の前まで誘導した。
「シノン、今日から君の兄となる人だよ。フラメル、挨拶を。」
「…わかり、ました。フラメル、と申します。よろしく、お願いします。」
父様から自己紹介を促され、フラメルは少したどたどしく自己紹介をした。じっと見入っていると父様から肩をポンと叩かれた。一瞬ピクッとなったが私も慌てて自己紹介をする。
「シノンと申します。こんな素敵な兄ができて嬉しいです。よろしくお願いします、フラメルお兄様。」
少しだけ微笑んだ私を見て、フラメルお兄様は目を見開いたがすぐに逸らしてしまわれた。
(女の子か男の子か一瞬分からなかった…)
フラメル・アダマンタイト。私の2歳年上の設定だから今は7歳のはずだ。黒髪に紫の瞳をしており、髪は肩より下の位置まで伸びていることと、端正な顔であることで女の子にも見える。
ゲームでは、シノンは5歳の誕生日を祝うお茶会で攻略対象達に会い、そのうちの1人に惚れてその人の婚約者候補になる。攻略対象達はいずれも長男であるため、父様はフラメルを養子にし、自分の跡を継がせようとする。
とある伯爵家でフラメルはその容姿と魔力量の多さを恐れられ、魔力を抑える枷をされ、監禁されていた。この世界には魔族が存在し、魔族は黒髪の者が多く、魔力量も多いためである。
シノンはフラメルの容姿を見て『魔族』『化け物』と蔑み、嫌い、いじめ倒していた。
フラメルルートでは、元の家族からも周りからも腫れ物扱いされ、シノンからは所有物というか奴隷のような扱いを受け、拗らせていく。そして学園である日、魔力暴走を起こしてしまい、それをヒロインに止めてもらう。そして、「あなたは1人じゃない、あなたを孤独になんかさせない」と言われ、孤独を埋めてくれたヒロインに心酔しヤンデレ化する。
そして、ヒロインとフラメルは結ばれシノンは処刑される。フラメルとは仲良くしないと危ないのだ。
そんなことを考えていると、父様が私とフラメルお兄様の頭を撫でながら微笑んだ。
「せっかくなのだから、2人で庭で遊んできたらどうだい?」
「…わかり、ました」
「わかりましたわ、父様」
フラメルお兄様と私は、私が先導する形で庭に向かって歩き出した。
そのまま化粧台に備え付けられた椅子にちょこんと座り、恥ずかしくて下を向く。前世では顔に感情が出ないように出来たのに、体の年齢に引っ張られているからか難しいのだ。とは言っても目が少し見開かれ、頬がピンクに染まる程度だが、マリアには見抜かれているだろう。
そんな私の反応を見てマリアはさらに笑みを深め、私の背後までやって来た。
「おはようございます、シノン様」
「…おはよう、マリア」
「本日はどのような髪型になさいますか?」
どのような…自分で真っ直ぐはいいと断っておいて具体的な案を挙げないのも申し訳ないと思いつつ、鏡に映る自分を見る。
(なんか白い髪の毛がクセっ毛でふわふわしててなんだか羊みたい…羊…いいかも!!)
「マリア。私、羊がいいわ」
「羊、でございますか?」
「うん、サイドの髪を三つ編みにしてそれを上の方で羊の角みたいに渦巻き状にしてピンで止めれば完成で、簡単だと思うのだけど…だめかしら?」
「いえ、シノン様ならとてもお似合いになられますよ」
そう言ってマリアは微笑んでくれた。羊は私の好きな動物NO.1なのだ。羊を数えてればすぐに眠れるし、私にとっては良いパートナーでもあった。それから5分もしないうちに髪型は完成し、化粧と着替えを済ませた私は父様の待つ執務室へ向かった。
父様の執務室のドアをノックし、返事を待ってからドアを開けた。何気に執務室に入るのはこれが初めてで少し緊張する。部屋には、椅子から立ち上がったばかりの父様とこちらに背を向けて立っている子供がいた。
父様がこちらへ近づいてくると、その子がつられてこちらを向いた。少しだけ息を飲んでしまったのは仕方ないだろう。父様が私の手を取り、男の子の目の前まで誘導した。
「シノン、今日から君の兄となる人だよ。フラメル、挨拶を。」
「…わかり、ました。フラメル、と申します。よろしく、お願いします。」
父様から自己紹介を促され、フラメルは少したどたどしく自己紹介をした。じっと見入っていると父様から肩をポンと叩かれた。一瞬ピクッとなったが私も慌てて自己紹介をする。
「シノンと申します。こんな素敵な兄ができて嬉しいです。よろしくお願いします、フラメルお兄様。」
少しだけ微笑んだ私を見て、フラメルお兄様は目を見開いたがすぐに逸らしてしまわれた。
(女の子か男の子か一瞬分からなかった…)
フラメル・アダマンタイト。私の2歳年上の設定だから今は7歳のはずだ。黒髪に紫の瞳をしており、髪は肩より下の位置まで伸びていることと、端正な顔であることで女の子にも見える。
ゲームでは、シノンは5歳の誕生日を祝うお茶会で攻略対象達に会い、そのうちの1人に惚れてその人の婚約者候補になる。攻略対象達はいずれも長男であるため、父様はフラメルを養子にし、自分の跡を継がせようとする。
とある伯爵家でフラメルはその容姿と魔力量の多さを恐れられ、魔力を抑える枷をされ、監禁されていた。この世界には魔族が存在し、魔族は黒髪の者が多く、魔力量も多いためである。
シノンはフラメルの容姿を見て『魔族』『化け物』と蔑み、嫌い、いじめ倒していた。
フラメルルートでは、元の家族からも周りからも腫れ物扱いされ、シノンからは所有物というか奴隷のような扱いを受け、拗らせていく。そして学園である日、魔力暴走を起こしてしまい、それをヒロインに止めてもらう。そして、「あなたは1人じゃない、あなたを孤独になんかさせない」と言われ、孤独を埋めてくれたヒロインに心酔しヤンデレ化する。
そして、ヒロインとフラメルは結ばれシノンは処刑される。フラメルとは仲良くしないと危ないのだ。
そんなことを考えていると、父様が私とフラメルお兄様の頭を撫でながら微笑んだ。
「せっかくなのだから、2人で庭で遊んできたらどうだい?」
「…わかり、ました」
「わかりましたわ、父様」
フラメルお兄様と私は、私が先導する形で庭に向かって歩き出した。
1
お気に入りに追加
2,294
あなたにおすすめの小説
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい
ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。
だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。
気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。
だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?!
平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。
ヒロインを虐めなくても死亡エンドしかない悪役令嬢に転生してしまった!
青星 みづ
恋愛
【第Ⅰ章完結】『イケメン達と乙女ゲームの様な甘くてせつない恋模様を描く。少しシリアスな悪役令嬢の物語』
なんで今、前世を思い出したかな?!ルクレツィアは顔を真っ青に染めた。目の前には前世の押しである超絶イケメンのクレイが憎悪の表情でこちらを睨んでいた。
それもそのはず、ルクレツィアは固い扇子を振りかざして目の前のクレイの頬を引っぱたこうとしていたのだから。でもそれはクレイの手によって阻まれていた。
そしてその瞬間に前世を思い出した。
この世界は前世で遊んでいた乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢だという事を。
や、やばい……。
何故なら既にゲームは開始されている。
そのゲームでは悪役令嬢である私はどのルートでも必ず死を迎えてしまう末路だった!
しかもそれはヒロインを虐めても虐めなくても全く関係ない死に方だし!
どうしよう、どうしよう……。
どうやったら生き延びる事ができる?!
何とか生き延びる為に頑張ります!
乙女ゲームのヒロインに転生したらしいんですが、興味ないのでお断りです。
水無瀬流那
恋愛
大好きな乙女ゲーム「Love&magic」のヒロイン、ミカエル・フィレネーゼ。
彼女はご令嬢の婚約者を奪い、挙句の果てには手に入れた男の元々の婚約者であるご令嬢に自分が嫌がらせされたと言って悪役令嬢に仕立て上げ追放したり処刑したりしてしまう、ある意味悪役令嬢なヒロインなのです。そして私はそのミカエルに転生してしまったようなのです。
こんな悪役令嬢まがいのヒロインにはなりたくない! そして作中のモブである推しと共に平穏に生きたいのです。攻略対象の婚約者なんぞに興味はないので、とりあえず攻略対象を避けてシナリオの運命から逃げようかと思います!
【完結済】悪役になりきれなかったので、そろそろ引退したいと思います。
木嶋うめ香
恋愛
私、突然思い出しました。
前世は日本という国に住む高校生だったのです。
現在の私、乙女ゲームの世界に転生し、お先真っ暗な人生しかないなんて。
いっそ、悪役として散ってみましょうか?
悲劇のヒロイン気分な主人公を目指して書いております。
以前他サイトに掲載していたものに加筆しました。
サクッと読んでいただける内容です。
マリア→マリアーナに変更しました。
完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
水鳥楓椛
恋愛
わたくし、エリザベート・ラ・ツェリーナは今日愛しの婚約者である王太子レオンハルト・フォン・アイゼンハーツに婚約破棄をされる。
なんでそんなことが分かるかって?
それはわたくしに前世の記憶があるから。
婚約破棄されるって分かっているならば逃げればいいって思うでしょう?
でも、わたくしは愛しの婚約者さまの役に立ちたい。
だから、どんなに惨めなめに遭うとしても、わたくしは彼の前に立つ。
さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
悪役令嬢の庶民準備は整いました!…けど、聖女が許さない!?
リオール
恋愛
公爵令嬢レイラーシュは自分が庶民になる事を知っていた。
だってここは前世でプレイした乙女ゲームの世界だから。
さあ準備は万端整いました!
王太子殿下、いつでも婚約破棄オッケーですよ、さあこい!
と待ちに待った婚約破棄イベントが訪れた!
が
「待ってください!!!」
あれ?聖女様?
ん?
何この展開???
※小説家になろうさんにも投稿してます
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる