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蘇った記憶③

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「俺のことは放っておいてくれてかまわない。あんたに迷惑をかけるわけにはいかないからな」

ノーランはかすれた声でそう言った。

シャノンは無言でノーランの腰を押さえつけている瓦礫を力いっぱい押し上げた。あのとき、元いた群れの仲間たちに感じた憤怒のすべてをかき集めて。かすかに瓦礫が動き、ノーランが力を振り絞って建物の下からはい出してきた。
彼の腰の白い毛皮に血がにじんでいた。

 「ありがとう」

ノーランは足を引きずり建物から遠ざかると、また残っている雪の上に横たわり、動かなくなった。

翌日、余分に獲物を捕まえたシャノンは、昨日の崩れた建物のところに戻った。ノーランは昨日と変わらない体勢のままうずくまっていた。シャノンはくわえていたウサギをノーランの前に落とした。ノーランが顔を上げた。

「...余分に捕まえたので」

シャノンはすっと目線をそらした。

「ああ...ありがとう」

ノーランが穏やかな声で言った。

「狩りができないほど痛むんですか」

シャノンはウサギを食べているノーランを見ながら尋ねた。

「無理したらできるかもな。でも、うまくいくかは分からないし、治るまで休んでいようと思ってな」

「ずいぶんと無防備な状態で休んでいたんですね」

なぜか非難しているような口調になった。ノーランはさえぎるものも何もない雪の上で寝ていた。

「まぁ、何かあったら、その時はその時だろう」

ノーランがのんきな口調で言った。シャノンは理解できなかった。もし、突然犬の群れが現れて襲われたら...そういうことを彼は考えないのだろうか。彼は格別にけんかに強いようには見えなかった。

次の日、ノーランはそこにいなかった。それでもシャノンはその周辺で一日を過ごすようになった。心のどこかでノーランと出くわすことを期待している自分がいた。それから、シャノンとノーランの行動範囲は徐々に重なるようになり、共に狩りをすることが増えた。

しかし、シャノンは、いつかノーランが自分のことを裏切るかもしれないという疑いを完全にぬぐい去ることはできなかった。だが、穏やかなノーランが自分を裏切るようには見えなかった。実際そうだった。ノーランは常にシャノンに対して真摯に接してくれた。シャノンは少しずつ、ノーランに心を開いていった。

その日は突然訪れた。強い雨が降り続いていた。ノーランとシャノンは建物の軒下で雨をしのいでいた。その時、轟音が聞こえてきてシャノンはびくっと反応した。水が、壊れかけた建物を流しながら、押し流れてきていた。あっという間に目の前の人工的なくぼ地に水が流れ込み、彼らはあっという間に水に飲まれた。

シャノンはノーランを探したが、彼の姿は見当たらなかった。流れてきた残骸がシャノンにぶつかり、彼女は水に沈んだ。半分意識を失いそうになりながら、上に向かい、再び鼻先が水の上に出た。

「ノーラン?!」

叫んだ瞬間、のどに水が流れこんだ。流され、もてあそばれ、ぶつかり、シャノンの意識は次第に薄れていった。
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