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記憶装置の影響②
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ようやくラッシャーの匂いが濃くなってきたとき、イーライが突然ふらっと道をそれてルヴァンたちから離れ始めた。
「イーライ?」
「ん、ああ」
ルヴァンが呼びかけてもイーライは上の空といった感じで離れていく。ルヴァンはイーライの前方に回り込んで彼の顔をのぞいた。
「どうしたの?」
イーライははっとしてルヴァンと目を合わせた。
「オレ、なんかしたか?」
「急にふらっと離れていったから」
イーライは困惑した様子でルヴァンを見返した。
「どうしたんだろう。なんかぼーっとしてたみたいだな」
イーライは困惑を払いのけ、いたって軽い口調で言った。
「無礼者もしも記憶装置の影響を受け始めたのか」
EZ-02がバリアコアをイーライに近づけた。
「なるべくこいつから離れない方がよい」
イーライはバリアコアをじっと見つめた。
「分かった」
「ねえ、このあたりラッシャーはうろうろしていたみたいだよ」
あたりを嗅いでいたルヴァンが言った。
「ならば、ラッシャーもこのあたりで記憶装置の影響を受けたのであろう」
「じゃあ、記憶装置もこの近くにあるのかもしれない」
ルヴァンは声をあげたが、それは全く喜ばしいことではなかった。
「分かれて探したら早いんじゃないか?」
イーライが提案した。
「だめだよ。バリアコアから離れないようにしないと」
「そっか」
イーライの尻尾がやや下がった。
ルヴァンとイーライはバリアコアを持っているEZ-02からなるべく離れないようにしながら森の中を詳しく探り始めた。しかしEZ-02は障害物の多い森の中でのろのろとしか進まないので、記憶装置を探す作業は難航した。
その時、イーライが突然わっと叫んだ。
ルヴァンが慌てて駆け寄ると、その向こうは下り坂になっていた。落ち葉で足を滑らせたイーライは坂道を転がり落ち、その先の茂みに突っ込んでいた。茂みから茶色い犬の足だけが突き出てジタバタと動いている。
「すぐ行くよ、イーライ!」
ルヴァンはそう言ってちらっとEZ-02を振り返ってみた。EZ-02がこの下り坂をイーライのようにならずに降りられるのか確信がなかった。イーライは自力で茂みから出てくると、興奮した様子で坂の上にいるルヴァンを見上げた。
「なんか変なもん見つけた!それに頭の中がなんかごちゃごちゃしてやばいかも」
「記憶装置?」
ルヴァンは飛ぶように坂を駆け下り、茂みに近づいた。その途端、妙に思考をかき乱され、ルヴァンは顔をしかめた。明らかに何かがおかしい。この茂みの中に何かがあると感じた。しかしそれがどういうものなのか考えているうちにだんだん考えがまとまらなくなってきた。頭の中がノイズで満たされたようにかき乱され、考えるのをやめたい欲求にかられた。
ルヴァンが何気なく坂の方を見ると、犬型の物体がずるずると滑りながら坂を下りてきたところだった。犬型が黒っぽいカプセルをルヴァンの前にかざした。
「イーゼットゼロツー」
その名がルヴァンの頭の中にふわりと舞い戻ってきた。そうだ、この犬型の物体はイーゼットゼロツー。そう思うと同時に、ルヴァンは自分も記憶を失いかけていたことに恐怖を覚えた。
「この元は私だけで見に行くのがよかろう。お前たちはこのバリアコアを持ってこの茂みから離れておくがよい」
EZ-02はルヴァンにバリアコアを差し出した。ルヴァンは首を横に振った。
「僕も見たいよ。バリアコアがあれば大丈夫でしょ」
「ナノダイヤの力にも限界というものがある」
それでも、EZ-02はそれ以上、茂みから遠ざかるように催促することはなく、前足を使って茂みを取り除いた。
銀色の半球体の物体が取り除かれた茂みの奥から現れた。周りには草が絡みつき、地面に半分埋まっているようだった。表面には複雑なパターンが彫り込まれている。
ルヴァンは再び思考をかき乱された。
「ふむ。これは確かに記憶装置だ」
EZ-02が銀色の半球体の物体を見つめながら考え込むように言った。
「イーライ?」
「ん、ああ」
ルヴァンが呼びかけてもイーライは上の空といった感じで離れていく。ルヴァンはイーライの前方に回り込んで彼の顔をのぞいた。
「どうしたの?」
イーライははっとしてルヴァンと目を合わせた。
「オレ、なんかしたか?」
「急にふらっと離れていったから」
イーライは困惑した様子でルヴァンを見返した。
「どうしたんだろう。なんかぼーっとしてたみたいだな」
イーライは困惑を払いのけ、いたって軽い口調で言った。
「無礼者もしも記憶装置の影響を受け始めたのか」
EZ-02がバリアコアをイーライに近づけた。
「なるべくこいつから離れない方がよい」
イーライはバリアコアをじっと見つめた。
「分かった」
「ねえ、このあたりラッシャーはうろうろしていたみたいだよ」
あたりを嗅いでいたルヴァンが言った。
「ならば、ラッシャーもこのあたりで記憶装置の影響を受けたのであろう」
「じゃあ、記憶装置もこの近くにあるのかもしれない」
ルヴァンは声をあげたが、それは全く喜ばしいことではなかった。
「分かれて探したら早いんじゃないか?」
イーライが提案した。
「だめだよ。バリアコアから離れないようにしないと」
「そっか」
イーライの尻尾がやや下がった。
ルヴァンとイーライはバリアコアを持っているEZ-02からなるべく離れないようにしながら森の中を詳しく探り始めた。しかしEZ-02は障害物の多い森の中でのろのろとしか進まないので、記憶装置を探す作業は難航した。
その時、イーライが突然わっと叫んだ。
ルヴァンが慌てて駆け寄ると、その向こうは下り坂になっていた。落ち葉で足を滑らせたイーライは坂道を転がり落ち、その先の茂みに突っ込んでいた。茂みから茶色い犬の足だけが突き出てジタバタと動いている。
「すぐ行くよ、イーライ!」
ルヴァンはそう言ってちらっとEZ-02を振り返ってみた。EZ-02がこの下り坂をイーライのようにならずに降りられるのか確信がなかった。イーライは自力で茂みから出てくると、興奮した様子で坂の上にいるルヴァンを見上げた。
「なんか変なもん見つけた!それに頭の中がなんかごちゃごちゃしてやばいかも」
「記憶装置?」
ルヴァンは飛ぶように坂を駆け下り、茂みに近づいた。その途端、妙に思考をかき乱され、ルヴァンは顔をしかめた。明らかに何かがおかしい。この茂みの中に何かがあると感じた。しかしそれがどういうものなのか考えているうちにだんだん考えがまとまらなくなってきた。頭の中がノイズで満たされたようにかき乱され、考えるのをやめたい欲求にかられた。
ルヴァンが何気なく坂の方を見ると、犬型の物体がずるずると滑りながら坂を下りてきたところだった。犬型が黒っぽいカプセルをルヴァンの前にかざした。
「イーゼットゼロツー」
その名がルヴァンの頭の中にふわりと舞い戻ってきた。そうだ、この犬型の物体はイーゼットゼロツー。そう思うと同時に、ルヴァンは自分も記憶を失いかけていたことに恐怖を覚えた。
「この元は私だけで見に行くのがよかろう。お前たちはこのバリアコアを持ってこの茂みから離れておくがよい」
EZ-02はルヴァンにバリアコアを差し出した。ルヴァンは首を横に振った。
「僕も見たいよ。バリアコアがあれば大丈夫でしょ」
「ナノダイヤの力にも限界というものがある」
それでも、EZ-02はそれ以上、茂みから遠ざかるように催促することはなく、前足を使って茂みを取り除いた。
銀色の半球体の物体が取り除かれた茂みの奥から現れた。周りには草が絡みつき、地面に半分埋まっているようだった。表面には複雑なパターンが彫り込まれている。
ルヴァンは再び思考をかき乱された。
「ふむ。これは確かに記憶装置だ」
EZ-02が銀色の半球体の物体を見つめながら考え込むように言った。
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