33 / 63
思考を読む迷路③
しおりを挟む
「すっかり迷っちまってるからな」
ノーランがあきらめた口調で言う。
「でも、さっきここに行き止まりはなかったよ」
「確かなのか」
「確かだよ」
ルヴァンが自信を持ってノーランの問いに答える。
「お前が言うのなら、そうなんだろうがな」
皆、ルヴァンの頭脳と記憶力の良さは認めていたので、困ったように顔を見合わせた。
「壁が勝手に動いてるってことか」
ノーランが行き止まりをにらむ。
「階段の前に勝手に壁が降りてきたことを考えるとありえなくもない」
ラッシャーが青ざめた顔で言った。
「ここで止まってても仕方ない。とりあえず他の道に進もう」
そう言って別の通路を選んで歩きながら、ルヴァンは妙な感覚にとらわれていた。
先程から、自分が考えてもいない思考が頭の中を横切り、見たこともない情景が頭の中に浮かんでは消えていくのだ。
なんだか他の誰かの頭の中をのぞいているみたいだ。そう思ったとき、今度ははっきりとした思考がルヴァンの頭の中にぶつかってきた。
(なんとしてでもここから出なきゃならねえ。俺にはこいつらを守る責任があるんだ。)
どういうことだろう?これはどう考えても僕の思考じゃない。イーライはこんなこと考えていなさそうだし、もしかしてノーランの思考だろうか。僕は他の犬の思考が読めるようになったのかな。そう思うと同時に、責任を感じているノーランに同情する気持ちが湧いた。
もしかして他のみんなも、他の犬の思考が読める不思議な現象に陥っているのかな。
試しにルヴァンはこんなメッセージを強く思い浮かべた。
(大丈夫。ノーランが責任を感じる必要はないよ。僕たちはきっと出られるから。)
横をちらりと見ると、ノーランの表情がかすかにこわばり、ルヴァンを見た。
「お前、何か言ったか?」
「何も言ってないよ」
「さっきから変な感じがするんだ」
ノーランとルヴァンがしゃべったことで、ラッシャーも感じていたことを口にした。
「オレも変なんだ。頭の中で急に今の状況を分析しはじめたりしてさ」
とイーライ。
「それは僕だ」
とラッシャー。
「オレはいつからお前の頭の中が見えるようになったんだ?」
「それを言うなら僕も同じだ。僕はこんな状況で今夜は何を食べようか考えたりしない」
ラッシャーはこれはお前の思考だろうと言わんばかりにイーライを見る。
「確かに今日はウサギが食いたいなとは思ってた」
イーライが認める。
「一体全体どうなってるんだ?」
ノーランが天井を仰ぎ見る。
「他の犬の思考が読める。だから僕たちはこの迷路から出られないんだ」
しばらく考えていたルヴァンはこの状況を説明する結論に至った。
「どういうことだ?」
「僕たちの思考が読まれてるんだよ。この迷路に」
ノーランがあきらめた口調で言う。
「でも、さっきここに行き止まりはなかったよ」
「確かなのか」
「確かだよ」
ルヴァンが自信を持ってノーランの問いに答える。
「お前が言うのなら、そうなんだろうがな」
皆、ルヴァンの頭脳と記憶力の良さは認めていたので、困ったように顔を見合わせた。
「壁が勝手に動いてるってことか」
ノーランが行き止まりをにらむ。
「階段の前に勝手に壁が降りてきたことを考えるとありえなくもない」
ラッシャーが青ざめた顔で言った。
「ここで止まってても仕方ない。とりあえず他の道に進もう」
そう言って別の通路を選んで歩きながら、ルヴァンは妙な感覚にとらわれていた。
先程から、自分が考えてもいない思考が頭の中を横切り、見たこともない情景が頭の中に浮かんでは消えていくのだ。
なんだか他の誰かの頭の中をのぞいているみたいだ。そう思ったとき、今度ははっきりとした思考がルヴァンの頭の中にぶつかってきた。
(なんとしてでもここから出なきゃならねえ。俺にはこいつらを守る責任があるんだ。)
どういうことだろう?これはどう考えても僕の思考じゃない。イーライはこんなこと考えていなさそうだし、もしかしてノーランの思考だろうか。僕は他の犬の思考が読めるようになったのかな。そう思うと同時に、責任を感じているノーランに同情する気持ちが湧いた。
もしかして他のみんなも、他の犬の思考が読める不思議な現象に陥っているのかな。
試しにルヴァンはこんなメッセージを強く思い浮かべた。
(大丈夫。ノーランが責任を感じる必要はないよ。僕たちはきっと出られるから。)
横をちらりと見ると、ノーランの表情がかすかにこわばり、ルヴァンを見た。
「お前、何か言ったか?」
「何も言ってないよ」
「さっきから変な感じがするんだ」
ノーランとルヴァンがしゃべったことで、ラッシャーも感じていたことを口にした。
「オレも変なんだ。頭の中で急に今の状況を分析しはじめたりしてさ」
とイーライ。
「それは僕だ」
とラッシャー。
「オレはいつからお前の頭の中が見えるようになったんだ?」
「それを言うなら僕も同じだ。僕はこんな状況で今夜は何を食べようか考えたりしない」
ラッシャーはこれはお前の思考だろうと言わんばかりにイーライを見る。
「確かに今日はウサギが食いたいなとは思ってた」
イーライが認める。
「一体全体どうなってるんだ?」
ノーランが天井を仰ぎ見る。
「他の犬の思考が読める。だから僕たちはこの迷路から出られないんだ」
しばらく考えていたルヴァンはこの状況を説明する結論に至った。
「どういうことだ?」
「僕たちの思考が読まれてるんだよ。この迷路に」
10
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
『 ゆりかご 』
設樂理沙
ライト文芸
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
魔法少女はまだ翔べない
東 里胡
児童書・童話
第15回絵本・児童書大賞、奨励賞をいただきました、応援下さった皆様、ありがとうございます!
中学一年生のキラリが転校先で出会ったのは、キラという男の子。
キラキラコンビと名付けられた二人とクラスの仲間たちは、ケンカしたり和解をして絆を深め合うが、キラリはとある事情で一時的に転校してきただけ。
駄菓子屋を営む、おばあちゃんや仲間たちと過ごす海辺の町、ひと夏の思い出。
そこで知った自分の家にまつわる秘密にキラリも覚醒して……。
果たしてキラリの夏は、キラキラになるのか、それとも?
表紙はpixivてんぱる様にお借りしております。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる