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思考を読む迷路③

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「すっかり迷っちまってるからな」

ノーランがあきらめた口調で言う。

「でも、さっきここに行き止まりはなかったよ」

「確かなのか」

「確かだよ」

ルヴァンが自信を持ってノーランの問いに答える。 

「お前が言うのなら、そうなんだろうがな」
 
皆、ルヴァンの頭脳と記憶力の良さは認めていたので、困ったように顔を見合わせた。

「壁が勝手に動いてるってことか」

ノーランが行き止まりをにらむ。

「階段の前に勝手に壁が降りてきたことを考えるとありえなくもない」

ラッシャーが青ざめた顔で言った。

「ここで止まってても仕方ない。とりあえず他の道に進もう」

そう言って別の通路を選んで歩きながら、ルヴァンは妙な感覚にとらわれていた。

先程から、自分が考えてもいない思考が頭の中を横切り、見たこともない情景が頭の中に浮かんでは消えていくのだ。

なんだか他の誰かの頭の中をのぞいているみたいだ。そう思ったとき、今度ははっきりとした思考がルヴァンの頭の中にぶつかってきた。

(なんとしてでもここから出なきゃならねえ。俺にはこいつらを守る責任があるんだ。)

どういうことだろう?これはどう考えても僕の思考じゃない。イーライはこんなこと考えていなさそうだし、もしかしてノーランの思考だろうか。僕は他の犬の思考が読めるようになったのかな。そう思うと同時に、責任を感じているノーランに同情する気持ちが湧いた。

もしかして他のみんなも、他の犬の思考が読める不思議な現象に陥っているのかな。

試しにルヴァンはこんなメッセージを強く思い浮かべた。

(大丈夫。ノーランが責任を感じる必要はないよ。僕たちはきっと出られるから。)

横をちらりと見ると、ノーランの表情がかすかにこわばり、ルヴァンを見た。

「お前、何か言ったか?」

「何も言ってないよ」

「さっきから変な感じがするんだ」

ノーランとルヴァンがしゃべったことで、ラッシャーも感じていたことを口にした。

「オレも変なんだ。頭の中で急に今の状況を分析しはじめたりしてさ」

とイーライ。

「それは僕だ」

とラッシャー。

「オレはいつからお前の頭の中が見えるようになったんだ?」

「それを言うなら僕も同じだ。僕はこんな状況で今夜は何を食べようか考えたりしない」

ラッシャーはこれはお前の思考だろうと言わんばかりにイーライを見る。

「確かに今日はウサギが食いたいなとは思ってた」

イーライが認める。

「一体全体どうなってるんだ?」

ノーランが天井を仰ぎ見る。

「他の犬の思考が読める。だから僕たちはこの迷路から出られないんだ」

しばらく考えていたルヴァンはこの状況を説明する結論に至った。

「どういうことだ?」

「僕たちの思考が読まれてるんだよ。この迷路に」
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