79 / 121
アルサーラー編
77
しおりを挟む
「ハァ…ハァ…しっかりしろサーナシア」
「…」
やはり口程にもない。さすがベルバーグ家の当主、凄い実力を秘めていた。けれど相手が悪かった。覚醒に覚醒を重ねた俺の前では二人は無力すぎた。
その証拠に、片腕を失ったマルガンが全身に大火傷を負って気絶したサーナシアを起こそうとしている。
「悪いけど、この剣は貰っていくよ」
俺は結界に手を伸ばし、剣に触れる。やはり俺だけが難なく通れる結界のようだ。そのまま毒剣フルンディングを台座から引き抜いた。
さすがに二本目を抜かれたとなると、世界が悲鳴を上げ始めた。抜いた途端に大きな地震が起こり、ベルバーグ家を襲った。かなり大きな地震で、食器が落ちて割れる音や家具が倒れる音が遠くの部屋から聞こえてくる。やがて天井や壁に亀裂が生じた。
「おっと…崩れそうだな。コイツらは…別にいいか」
大怪我を負ったベルバーグ夫妻を置いて、俺だけが空間魔法で家から脱出した。空間転移場所はベルバーグ家の全貌を見られる近くの丘の上。そこから見ていて数秒後、ベルバーグ家は瓦礫の山と化した。
「潰れちゃったかなぁ…全員」
「どうだろうな」
「っ!?」
背後から突然誰かの声がした。振り返るとそこにはジンとアナシアが立っていた。そして二人の後ろには気を失っている何人もの執事やメイドが寝かされている。マルガンとサーナシアの姿もあった。
「よぉ…キョウくん」
「キョウさん…どうして」
俺を見て凄まじい怒気を放つジン、そして悔し気な顔で悲しみにくれるアナシア。少し前の俺ならば今のジンには怯えるし、アナシアの顔を見たら心を痛めただろう。しかし今は不思議と何も感じない。
「悪いなジン、アナシア。お前らの家、壊しちゃった」
「それは別にいいよ。けど、分かっててやったんだよな?今何の前触れも無しに家を崩せば中にいる使用人や関係ない奴らが瓦礫の下敷きになるって。なぁ?キョウ」
ジンは俺を睨みつけ、ドスの利いた声で続ける。ここまでブチギレているジンを今まで見た事が無い。
「ノルザは死んだぞ。その他の使用人の約半数もあの下だ。間に合わなかった…」
ノルザが死んだ。やはり何も感じない。
何の感情も湧かないため、何を言えばいいかも分からなかったので俺はただ一言だけ二人に告げた。
「そうか」
俺の何気ない一言が火に油を注いだようで、ジンは先程よりオーラが強くなった。四大精霊の魔力による四色のオーラ。この感じは前にも見たが、今回は何かが違う。そんな気がする。
「おぅ、流石に気づいたか。キョウ、お前と会ってから日々成長した俺の実力、全部お前にぶつけてやるよ」
今ようやく分かった。前に見たジンのオーラは全て下位の四大精霊のものだった。だが、今彼が発しているオーラは全て上位精霊のものだ。
「…」
やはり口程にもない。さすがベルバーグ家の当主、凄い実力を秘めていた。けれど相手が悪かった。覚醒に覚醒を重ねた俺の前では二人は無力すぎた。
その証拠に、片腕を失ったマルガンが全身に大火傷を負って気絶したサーナシアを起こそうとしている。
「悪いけど、この剣は貰っていくよ」
俺は結界に手を伸ばし、剣に触れる。やはり俺だけが難なく通れる結界のようだ。そのまま毒剣フルンディングを台座から引き抜いた。
さすがに二本目を抜かれたとなると、世界が悲鳴を上げ始めた。抜いた途端に大きな地震が起こり、ベルバーグ家を襲った。かなり大きな地震で、食器が落ちて割れる音や家具が倒れる音が遠くの部屋から聞こえてくる。やがて天井や壁に亀裂が生じた。
「おっと…崩れそうだな。コイツらは…別にいいか」
大怪我を負ったベルバーグ夫妻を置いて、俺だけが空間魔法で家から脱出した。空間転移場所はベルバーグ家の全貌を見られる近くの丘の上。そこから見ていて数秒後、ベルバーグ家は瓦礫の山と化した。
「潰れちゃったかなぁ…全員」
「どうだろうな」
「っ!?」
背後から突然誰かの声がした。振り返るとそこにはジンとアナシアが立っていた。そして二人の後ろには気を失っている何人もの執事やメイドが寝かされている。マルガンとサーナシアの姿もあった。
「よぉ…キョウくん」
「キョウさん…どうして」
俺を見て凄まじい怒気を放つジン、そして悔し気な顔で悲しみにくれるアナシア。少し前の俺ならば今のジンには怯えるし、アナシアの顔を見たら心を痛めただろう。しかし今は不思議と何も感じない。
「悪いなジン、アナシア。お前らの家、壊しちゃった」
「それは別にいいよ。けど、分かっててやったんだよな?今何の前触れも無しに家を崩せば中にいる使用人や関係ない奴らが瓦礫の下敷きになるって。なぁ?キョウ」
ジンは俺を睨みつけ、ドスの利いた声で続ける。ここまでブチギレているジンを今まで見た事が無い。
「ノルザは死んだぞ。その他の使用人の約半数もあの下だ。間に合わなかった…」
ノルザが死んだ。やはり何も感じない。
何の感情も湧かないため、何を言えばいいかも分からなかったので俺はただ一言だけ二人に告げた。
「そうか」
俺の何気ない一言が火に油を注いだようで、ジンは先程よりオーラが強くなった。四大精霊の魔力による四色のオーラ。この感じは前にも見たが、今回は何かが違う。そんな気がする。
「おぅ、流石に気づいたか。キョウ、お前と会ってから日々成長した俺の実力、全部お前にぶつけてやるよ」
今ようやく分かった。前に見たジンのオーラは全て下位の四大精霊のものだった。だが、今彼が発しているオーラは全て上位精霊のものだ。
1
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる