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魔境地帯編

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「おーい…もしもーし…」
「んっ…ぅうん?」

 皆が寝静まった深夜、俺は誰かに揺さぶられて目を覚ました。夜の暗闇に目が慣れて、見えたのはジュナの顔だった。

「あ、キョウくん起きた?」
「ジュナ?どうしたんだ、こんな夜中に」
「いいからいいから♪」

 いきなり俺はジュナに叩き起され、外へ連れ出された。洞穴から出ると眩い月光が夜とは思えないほど辺りを照らしていた。少し青がかった月とその光。とても綺麗だ。

「初めてでしょ?こんな綺麗なお月様。魔境地帯は自然が盛んの場所。都会じゃ見ることができない綺麗な物がたくさん見れるんだ!」

 それから俺はジュナに手を引かれ、二人歩いて色んな自然の夜景を見に行った。月を反射する湖や、不思議な影を作る岩山、辺りを全貌できる丘、眠っている怪奇の様子をこっそり見に行ったりもした。
 一通り魔境地帯をグルっと回った頃、なぜ俺を夜中に急に連れ出したのかとジュナに聞いてみた。今回の狩では俺にだいぶ助けられたから、彼女なりのささやかなお返しだそうだ。

「私もレイも、リングさんもカイロンさんもクルミさんも家族はいない。でも、皆が家族みたいなもの。ハンターになって、ショボイ魔法でも強くなれるって見返すため、同じ目標を持った大切な人達…これを家族と言わずしてなんと言おうかー」
「家族…」

 久方ぶりにその単語に温かみを感じた気がする。

「…ね、キョウくんもそう思わない?」
「…うん、そうだね」

 俺の家族よりもよっぽどこっちの方が家族だ。互いを対等に見て、労り合える。非常に居心地が良い。

「キョウくんは…あまり兄弟とかとは仲良くないんだっけ。せっかくだし、教えてよ。君のこと色々と」

 今までの辛い経験、クライス家への憎悪。この際全て彼女にぶちまけてしまおうか。そう思っていると。

「僕も聞きたいなぁ…」
「…!?誰!?」

 突然聞こえた若い男の声。振り返ると俺よりも年下であろう男の子が立っていた。

「…キョウくんの知り合い?」

 ジュナの問に対し俺は首を横に振る。こんな男は見た事が無い。

「君たちだろ?最近キマイラとメデューサを討伐したってのは」
「それが何」
「潰す」

 次の瞬間、俺達は見えない何かに吹き飛ばされた。体が宙を舞い、体が地面に強く叩きつけられた。まいった、厄介な相手だ。近づく事ができないとは。
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