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魔境地帯編

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「…振り返るなよ」

 一級危険指定怪奇メデューサ。大蛇の下半身に無数の蛇が生えた頭。頭の蛇かメデューサの本体と目が合ってしまえば、たちまち石化されてしまう。そんな一見手も足も出せないような化け物がスグ後ろにいる。

「キョウくん何とかして」
「無理ですって、いくらなんでも…」
「…俺が殺る」

 レイはメデューサに背を向けたまま銃口を後方に向けた。なんの躊躇いも無くレイは無鉄砲に引き金を引いた。甲高い金切り声が響き、何かが倒れた音がして地面が揺れた。

「え…?やったのか?」
「おい!バカ、カイロン!その台詞はフラー」

 急にカイロンを怒鳴ったリングだったが、その口の動きが唐突に鈍くなった。二人を横目で見てみると、後方から伸びて来ていた一匹の蛇に睨みつけられていた。

「グ…だって…」
「すま…ん…」

 蛇と目を合わせられてしまったカイロンとリング。あっという間に二人は隣で石化されてしまった。

「嘘…」
「…チッ、仕留めきれてなかったか」

 俺の魔法の火力ならばメデューサを瞬殺できるかもしれない。が、相手は見えない後方にいる。マトモに当てられる訳が無い。当たったとして中途半端にダメージを与えてしまうと、怒ったメデューサが何をしてくるかも分からない。一番の打開策は俺の最大火力を確実に当てる事だ。

「…仕方ない、か。キョウくん」
「はい?」

 珍しくレイが俺に話しかけた。

「…俺を殺れ」

 レイがそう言った途端、空気が凍った。レイの考えは皆分かっている。自分を殺させる事で必中魔法を俺に使わせようとしているのだろう。
 確かに俺が必中魔法を使えば確実に最大火力でメデューサを一撃で倒せる。しかしこの案はレイにとって相当覚悟のいる事だ。俺ももちろん、他の皆だってそうだ。目の前で仲間が仲間に殺されるのだから。アナシアの魔法で生き返れるとは言え、自ら死を選ぶというのはとても惨い選択と言えよう。

「…キミの魔法は中々にレア、殺めた者の魔法を使う事ができると聞く。だから俺を殺れ」

 俺は躊躇ったものの、迷っている時間は無い。メデューサもいつまでも待っててはくれない。
 ジュナ、アナシア、クルミ、そしてレイ。全員が俺を見る。

「…わかった」

 いい加減俺は覚悟を決め、レイの眉間に手を添えた。
 
「…キョウくんなら大丈夫だろ?…勝てよ」

 その言葉を最後に、レイは頭を氷柱で貫かれて死んだ。
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