上 下
15 / 121
盗賊団編

14

しおりを挟む
「なにぃっ!?」
「リーグ!早く下がるのです!」

 もう遅い。
 団長の位置
 副団長の位置
 その他の生き残っている団員の位置
 既に把握済みだ。

「発動」

 俺の左手の平から雷が具現化されてできた矢が五本ほど目にも止まらぬ速さで放たれた。その五本の矢はまず真後ろにいたリーグに全て突き刺さる。それからリーグの体を貫通した矢は周囲にいた別の人へ飛んでいく。
 連鎖。雷から成る五本の矢は各々別の方向へ飛び、誰かを感電させたら別の誰かへと飛んでいく。あちらこちらから悲鳴が聞こえ、瞬く間に盗賊団の九割ほどの人員が地に倒れ伏した。
 そして…。

ボゥッ…

(…炎魔法が反応した…?)

 一瞬、俺の体から炎のオーラが湧き出たように感じた。もしかしたらリーグを倒した事で炎魔法の魔力が上がったのかもしれない。魔力も少なからず回復したような気がする。

「…一瞬でこの人数が死んだのか。本当に化け物だな、クライス家の小僧。サラザド、リーグはどうだ?」
「…ダメです。既に…」

 どうやら一番倒したかった二人は無傷のようだ。見るとゲインは俺を睨みつけ、サラザドは目を覚まさないリーグの脈を見ていた。

「…やってくれたな。キョウ」

 ゲインは俺の事を睨みつけたまま四方八方、周囲の至る所に氷柱を出して見せた。もちろん氷柱の先端は全て俺に向けられている。

「いくら貴様でもこの量の攻撃はかわしきれまい…俺達を敵にしたこと、あの世で後悔しろ。冷徹処刑牢獄クールプリズン

 氷柱が一斉に放たれ、俺に襲いかかる。正直なとこヤバい。ゲインの言った通り、俺の炎魔法の最大火力でも前半分の氷柱を溶かしきれるかどうかの瀬戸際だろう。
 さっきまでの俺だったらの話だがな。

「炎魔法レベル2…最大火力っ!!」

 両手を大きく広げ、炎魔法を最大限の威力で放出する。すると今までとは比べ物にならない火力が辺りの敵に猛威を振るった。先程まであったはずの氷柱を一瞬にして全て溶け、蒸発して消えてなくなった。

「そんな…バカな…」
風圧アクセル

 ゲインが呆気にとられている僅かな間に、風魔法を使って高速移動。瞬時にゲインの背後に立ち回る。

「しまっ…!?」
「終わりだ」

 ゲインの背中から腹を通して光が過ぎ去った。次の瞬間、雷撃の音が盗賊団アジト全体に響き渡った。



現在餞ストック
炎魔法 レベル2
風魔法 レベル1
雷魔法 レベル1
吹雪魔法 レベル1
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...