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序章

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………
…………ま……
………キョ………ま………………ウ……
……………………………………………………キョウさま…

「キョウ様!!」
「………あ…れ…?」
「よ…良かった…お目覚めになられましたか」
「…アーロン?」

 気がつくと、目の前には泣きそうな顔をしているアーロンがいた。

「俺…いったい…」

 どうやらここは城の応急室。病気や怪我をした時に使われる部屋だ。ここには休むためのベッド、世界のあちこちから取り寄せた高価な薬や治療道具が常備されている。そして今、俺はそのベッドの上で目を覚ましたようだ。

「実は昨晩、アルゴ様がボロボロのキョウ様を抱えて執事室に駆け込んできたのです。」
「アルゴ兄様が…?」
「はい…魔法の訓練中の事故でこうなった。とだけ…」

 一方的に焼き殺しに来た癖に…。アルゴは訓練と称して俺の怪我の事を吹聴しているようだ。

(…にしても)

 完全にあの時、俺はアルゴの炎で内蔵まで、体の芯まで焼かれたはず…しかし、今自分の体を見ても表面上の軽い火傷が数箇所あるだけだ。激痛の末に意識を失い、死んだとさえおもったが、あれは錯覚だったのだろうか。
 何にせよ、アーロンの処置能力には驚いた。まだ痛みはあるものの、日常生活に支障がないほどに体は動く。彼にこんな才能があったとは。

「それではキョウ様、私はこれにて失礼致します」
「うん。ありがとう、アーロン」
「…それと、キョウ様」
「?」

 アーロンは制服の懐から丸い何かを取り出した。手のひらサイズの球体、何かのアイテムだろうか。

「…こちら、マジックキャンセラーという物です」
「なっ…!?マジックキャンセラー!?」

 思わず驚愕する。マジックキャンセラーと言えば超高級なレアアイテム。王族、貴族、英雄並の冒険者でも手に入れるのはとても困難なアイテムのはずだ。あちこちの国王が大戦に備えて血眼になって探すほどと聞いたことがある。俺も初めて見た。

「アーロン、これをいったいどこで…」
「これの使い方は簡単です。投げるなり、落とすなり、相手にぶつけるなり、何か強い衝撃を与えると即座に結界が広がります。その結界の中にいる限りありとあらゆる魔法が使用不可になります」
「いや、使い方よりも、どうしてコレを俺に…」
「キョウ様」

 俺の問いを遮り、アーロンはいつになく真剣な眼差しでコチラを見つめながら言う。

「私は…あなたの…あなた様の味方でございます」

 それだけ言い残し、アーロンは応急室を後にした。
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