上 下
47 / 47
エピローグ

【最終回】お兄ちゃん

しおりを挟む
五年後
日桜高校 成人式兼同窓会

「それでは、乾杯!」
『乾杯~!』

 幹事の音頭に合わせて、周りの皆も各々のグラスを交わした。
 今日は日桜高校の卒業生達による成人式兼同窓会。元同級生だけによる集まり…なはずなのだが。

「何でお前がいるんだ」
「別にいいじゃないですか」
「日桜の生徒じゃないだろ」
「私と亮太の仲なのですから、関係無いのです!」

 俺の隣の席には何故か篠原亜美が座っていた。一体どこから嗅ぎつけたのか、この店に着いた時に気づいたら背後にいたのだ。

「ウィース!なんだなんだ?亮太の彼女かぁ?ヒューヒュー!」
「はい!亮太の彼女なのです!」

 早速酔いが回った同級生の男子生徒が絡んできた。ウザ絡み初体験です。亜美は同級生からの冗談混じりの質問に元気よく挙手して答えた。
 いつもなら真っ先にツッコミを入れる俺だが…

「おいおい本当かよ!亮太~?」
「ん…まぁ、うん」
「え…ガチ?」

 まさかの展開に同級生、そしてついでに周りで聞き耳を立てていた他の同級生も数人驚きの表情を見せる。なんだか失礼な気がしたが、気にしない事にした。

 そう、俺と亜美はあの事件が終息した後、連絡先を交換(無理やりされた)をしてちょくちょくプライベートで会っていたのだ。そこには心美もいたけれど、二人きりで会っていた事もしばしば…。
 そしてつい先日、俺は告白された。彼女いない歴=年齢の普段の俺なら即答していたのだが、とある状況によってだいぶ頭を悩ませ、返答を渋っていた。けれど後々の話し合いの結果、俺は亜美の告白を受ける事にしたのだ。

 それからは夜遅くになるまで、同級生とその中にすっかり溶け込んだ亜美と共に楽しい時間を過ごした。





☆●◇■△▼*▽▲□◆○★





 深夜。楽しい同窓会も終わりを迎え、幹事の解散の宣言で皆居酒屋を出た。続々と各々が別れの言葉を交わし、四方八方の帰路に散って行く。
 そんな中ただ一人、微動だにしない夜の闇に佇むシルエットを見つけた。

「む~、やっと出て来た」

 頬を膨らませてあからさまに不機嫌な女の子が一人。

「お前…まさかずっと店の前で待ってたのか?」
「お~!我が愛しの妹よ!ただいまなのです~!」

 すっかり酔って顔を赤くした亜美が目の前の美少女に勢いよく抱きついた。

「全く…まだお家じゃないよ、お姉ちゃん。ごめんね。せっかくの昔のお友達との時間にお姉ちゃんが水差しちゃって」
「別に気にしてないよ。こうなりそうな気はしてたし、なんだかんだ皆とすぐに打ち解けて普通に楽しめたし」
「そう、なら良かった」

 出た居酒屋の前で俺達を待っていたのは、あれから五年経ち、歳不相応に凛々しく成長した心美であった。

「うぃ~恋々美~大好きなのです~ちゅ~♡」
「はいはい。全く、成人してから毎回こんなに呑んで…大学のレポートは終わったの?」
「んにゃ~?あんなの出された日のうちに全部終わらせたのです~」
「さすが知能指数お化け」

 凛々しくなったのはこの姉のせい(おかげ)なのだと確信した。
 ずっとふにゃふにゃしていた亜美だったが、急に我に返り「それにしても…」と話を切り出した。

「恋々美~、本当に良かったのです?私が亮太と付き合ってしまって。あなたも亮太が好きだったのでしょう?」

 そう、これが俺が亜美からの告白の応えを渋った理由。亜美から告白された日、その後同じ日に心美からも告白されたのだ。そして俺を巡ってギスギスした姉妹喧嘩が起こる…なんて事は無く、三人で普通に話し合った結果、心美が手を引いて今に至る。

「うん…。あれからの二人を見てたら…ね。お姉ちゃんとの方がお似合いだもん。でもその代わり…」

 心美は少し照れたような様子で俯いてモジモジとしている。可愛い。やがてモジモジするのをやめて顔を上げ、俺の目を見て彼女は言う。

「ずっと…私の傍にもいてね」

 心美が義理ではあるが本当に妹になる。あの日から周りにつき続けた嘘がまさか本当になる日が来ようとは。

 恋々美はあの時と何ら変わらない笑顔を向けて言う。

「お兄ちゃん!」





☆●◇■△▼キャラその後▽▲□◆○★

佐神 亮太
高校卒業後、とある中小企業に就職し、高校時代から住んでいるアパートに亜美、心美と共に住んでいる。現在は三人で暮らせる一軒家を買うために貯蓄中。

笹橋 将
高校卒業後、大手家電メーカーに就職。毎日のように「仕事が辛い」だの「上司がウザイ」だのメッセージで亮太にだる絡みしてくる仲。月一くらいの頻度で飲みに行っている。

篠原 亜美
鍛え上げられた頭脳を駆使して超有名大学に一発合格を果たす。自分達のような新たな被害者が出ないよう「正義の学者」を目指して勉強中。

篠原 恋々美
無事市立の小学校に通い卒業。亜美に勉強を教わり中学受験に合格。飛び抜けた身体能力も成長すると共に制御できるようになり、今では陸上部のエースだそうだ。

月神 優
事件から二年後「特殊捜査部隊の隊長に任命された」と月神からメッセージが届いた。「おめでとうございます」と返したのだが、あれから三年。未だに送ったメッセージは既読にならない。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

エロゲソムリエの女子高生~私がエロゲ批評宇宙だ~

新浜 星路
キャラ文芸
エロゲ大好き少女佐倉かなたの学園生活と日常。 佐倉 かなた 長女の影響でエロゲを始める。 エロゲ好き、欝げー、ナキゲーが好き。エロゲ通。年間60本を超えるエロゲーをプレイする。 口癖は三次元は惨事。エロゲスレにもいる、ドM 美少女大好き、メガネは地雷といつも口にする、緑髪もやばい、マブラヴ、天いな 橋本 紗耶香 ツンデレ。サヤボウという相性がつく、すぐ手がでてくる。 橋本 遥 ど天然。シャイ ピュアピュア 高円寺希望 お嬢様 クール 桑畑 英梨 好奇心旺盛、快活、すっとんきょう。口癖は「それ興味あるなぁー」フランク 高校生の小説家、素っ頓狂でたまにかなたからエロゲを借りてそれをもとに作品をかいてしまう、天才 佐倉 ひより かなたの妹。しっかりもの。彼氏ができそうになるもお姉ちゃんが心配だからできないと断る。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...