上 下
40 / 47
日常の終点

改ざん

しおりを挟む
「さぁ、駒は揃った。今話そう、亮太くん。何故彼女が協力者と呼ばれていたのか」
「えっへん!」
(何故得意げなのだろう)

 月神は上着のポケットから一枚の折りたたまれた紙を取り出した。この辺り一帯の地図のようだ。地名等の詳細は書かれておらず、二箇所にバツ印が描かれている。

「いいかい?まずこの印が亮太くんのアパート」
「はい」
「そしてこっちが…心美ちゃんが捨てられたアパート」
「…え?」

 なんと心美が最初に捨てられた場所は、俺の住んでいるアパートでは無い。月神はそう言った。

「やはり順を追って話そう。ここが篠原家。篠原竜太のご両親の家だ」
「だいぶ遠いですね…」
「うん。そして、篠原竜太の父親、篠原正男が歩いて心美ちゃんを捨てに行ったのが…このアパートだ」
「これ…正反対じゃないですか」

 篠原家から見ると、俺の住むアパートと心美が捨てられていたアパートは全く正反対の方角にあった。

「そう、しかもこっちのアパートはもう使われていない。廃墟状態の建物なんだ。すると、それに気づいた何者かが心美ちゃんを移動させたという事になる。廃アパートから君のアパートまでね」
「なるほど…そしてその何者かが…」
「私の事なのですっ!」

 再度亜美が物理的に首を突っ込みに来た。さっきまで心美とデレデレ遊んでいたはずなのだが。驚くべき反応速度。
 そして亜美は元気いっぱいの表情を掻き消し、しんみりとした様子で話の続きをツラツラと話してくれた。

「私は頭が良いです。あ、自慢とかじゃないですよ?投与された薬のせいなんです…」
「それって…」
「竜太が君達姉妹に治験と称して飲ませたアレだね」
「はい。どうやら薬のせいで恋々美は身体を。私は頭をおかしくさせ…いえ、成長させられたようなのです。それも急速に。
お父さんは目に分かる異変を起こした恋々美にばかり付きっきりになって、私の事なんて忘れていたみたいです。ま、そのおかげで自由に動けて恋々美を安全な所へ…偶然にも君の所へ運べた訳なのです」

 亜美は悲しげな瞳のまま、俺を見て微笑んだ。
 怪しい薬によって急速に発達した姉妹。一人は身体能力を。一人は頭脳を授かり、結果悲劇を生んだ。

「恋々美を…私の大切な妹を拾ってくれて…ありがとうなのです」

 亜美は俺に向かって深深と頭を下げた。
 この姉妹は被害者だ。最悪な父親のせいで悲惨な人生を歩まされた被害者。そんな彼女が見ず知らずの男に頭を垂れている姿を見て胸がムシャクシャして仕方がない。

 何なのだろう。この気持ちは。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

購買の喪女~30歳喪女で毒女の私が、男子校の購買部で働いている件について~

ダビマン
キャラ文芸
 自由に生きる!がモットーだった。 ちょっとお馬鹿で、ギャンブル好きな、佐倉公子(さくらきみこ)さんが。  バイトをクビになったのをキッカケに、男子校の購買部で働く事に……。  そして、いろんな事に毒を吐きながら、独断と偏見で渋々と問題事を解決?するお話し。  きみこさんは人と関わりたくは無いのですが……。男子高校生や周りの人達は面白い物がお好きな様子。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

処理中です...