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4day 5月4日 火曜日

ただいま

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 降り出した雨の中、ワゴン車で移動中に男は色々な事を語ってくれた。しかしその内容は先程脳裏によぎった誰かの記憶と類似したものだった。

「それにしても…君達が殺される、ましてやツクヨミの仮性空間に閉じ込められる結果にならなくて良かったよ」
「仮性空間…ですか?」
「あぁ、僕は話で聞いただけで実際には見た事無いんだけどね。一度入れば出ることは叶わないだろう。まぁヤツが消えた今、あの空間がどうなったのかなんて知ったこっちゃないが」

 それからも車を走らせながら男は詳しく話をしてくれたが、自身の素性については一切を語らなかった。これ以上俺を余計な事に巻き込まないためだろう。

「ここで良いのかな?」
「はい、ありがとうございます」

 男は俺を家まで送り届けてくれた。雨が降ってて、傘を持ってなかったので助かる。

「それじゃ、後のことは俺達に任せてくれ。あとツクヨミに関する今までの事は他言無用で、可能なら忘れてくれ。その方が君のためだ」
「はい…あ、あの!」
「ん?何かね」
「…月神先生の事…よろしくお願いします」
「…分かった」

 男は軽く会釈し、すぐに車を発車させた。
 久しぶりの我が家。大して久しくないはずなのに、そう感じてしまう。寝ている母を起こさないよう静かに玄関の鍵を開け、忍び足で自分の部屋まで向かう。体は酷く疲弊している。連日の調査の疲れが今になってドっと来て、激しい睡魔に襲われた。ベッドに横になり、そのまま一眠りしようと目を閉じた。

(…)

 あれから数時間。朝日はとっくに昇って、暗かったはずの世界が既に明るい。俺は未だに眠れずにいた。
 ツクヨミの事。
 月神の事。
 松谷枯男ちちおやの事。
 目を閉じてしばらくすると、あの惨状がフラッシュバックして、それと同時にあの記憶が脳裏に蘇る。結果、俺は安眠できずにいた。

(…何か飲も)

 何か飲んで落ち着こうと冷蔵庫の元へ向かう。

ガチャ

『あ…』

 と、そこに丁度よく玄関の扉が開かれる。姉が配達から帰ってきたようだ。姉は真っ先にリビングに向かい、そこで俺と目が合った。

「えと…これ飲む…?」

 姉から差し出されたのは牛乳、それも瓶タイプの物。見ると姉の手にはそれが二本。聞くと他の配達員からの差し入れで貰った物らしい。
 俺は無言で姉から牛乳を一本受け取り、その場で栓を開けた。姉も残ったもう一本の栓を開ける。二人同時に口に牛乳を運び、ほぼ同時に飲み干す。そして顔を合わせ一言。

『おかえり』

 それもまた同時だった。
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