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2day 5月2日 日曜日
【CASE2】①
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ここで誤魔化してもいずれバレる。正直に話した方が得策だろう。
「実は…俺、旧校舎に何度か足を運んでいて…」
「あそこは立ち入り禁止なはずだが?勝手に入ったのかね?」
「はい…すみません…」
頭を深々と下げる俺。月神はそんな俺を叱責する事はせずに、ある意外な提案を持ちかけてきた。
「松谷誠司くん。君がもし、あそこで何か不思議な体験をしたのなら…どうだろう?私と友達にならないか?」
「…ふぇ?」
緊迫した空気の中、不意に言われた「友達」という単語。思わず間抜けな声を出してしまった。
「おっと、すまない。"友達"は少々語弊があるかな。正しくは仲間だ。私と手を組もう」
「えっと…それはどういう」
「すまないが、詳しくは教えられない。君が私と手を組んでくれるなら、その時話そう。答えが出たら声をかけてくれ。私はこれにて失礼するよ」
「あ、ちょっと!?」
俺の困惑と制止を無視して月神は足早に部屋を出ていってしまった。俺は呆然と立ち尽くしたまま少しの間動けずにいたが、すぐにハッとして階段を駆け下り、月神を追った。しかし時すでに遅し。月神の姿はもう無かった。
「…なぁ母さん、姉さん、月神先生ってもう帰った?」
「…」
「…」
ん?
リビングにいた母と姉に声をかけたのだが、返事が返ってこない。聞こえなかったのだろうか。俺は先程よりも声を大きくして、もう一度同じ事を聞こうとするが、それよりも先に二人の口が動いた。
「ねぇ、誠司。あの人と…何か話した?」
「へ?いや、何も…」
「本当に?何も?」
「うん。何も…」
二人とも何かおかしい。何なんだ、さっきからこの違和感は。
それよりも空気が…何か違う。
「誠…司…」
「母さん?」
急に母の声色が変わった。
いや、違う。戻ったんだ。これがいつもの母の声だ。けれど、まだおかしい。動きがやけに重い。
母をまじまじと観察すると、カクカクな動きで台所に向かった。母は引き出しから包丁を取り出すと、ダーツの矢を投げる時のような構えを取った。もちろん今母が手にしているのはダーツの矢では無く、ガチの包丁だ。
母が大きく振りかぶった時、初めて顔がよく見えた。母は涙を流していた。
「逃げ…て…」
母は大振りで包丁をコチラに投げ飛ばし、ソレは壁に、俺の顔のすぐ隣に突き刺さった。
「母さん!?どうしたの!やめてくれよ!何だよ急に!?」
母は俺の事を無視。すぐに二本目の包丁を引き出しから取り出した。すぐに俺はそれを奪い取ろうと母に向かって行こうとしたが、誰かに背後を取られ、動きを封じられた。
「…」
俺を抑えていたのは紛れもない姉だった。
「やめろ!やめろって!姉貴!何してんだよ!?」
「…」
二人はもう喋らない。何も答えない。
「誰かっ…誰か助けっ」
バタンッ
絶対絶命のその時、廊下へと続くリビングの扉が勢いよく開かれた。そこにいたのは先程帰ったはずの月神だった。
「やはりなっ!…」
「先生!?どうして!?」
「話は後だ、まずは…」
月神は母が持っていた包丁を蹴り飛ばし、捕まった俺を姉から引き剥がしてくれた。次に月神は、ズボンの両ポケットから何か紙状の物を二枚取り出した。清めの御札だ。
「実は…俺、旧校舎に何度か足を運んでいて…」
「あそこは立ち入り禁止なはずだが?勝手に入ったのかね?」
「はい…すみません…」
頭を深々と下げる俺。月神はそんな俺を叱責する事はせずに、ある意外な提案を持ちかけてきた。
「松谷誠司くん。君がもし、あそこで何か不思議な体験をしたのなら…どうだろう?私と友達にならないか?」
「…ふぇ?」
緊迫した空気の中、不意に言われた「友達」という単語。思わず間抜けな声を出してしまった。
「おっと、すまない。"友達"は少々語弊があるかな。正しくは仲間だ。私と手を組もう」
「えっと…それはどういう」
「すまないが、詳しくは教えられない。君が私と手を組んでくれるなら、その時話そう。答えが出たら声をかけてくれ。私はこれにて失礼するよ」
「あ、ちょっと!?」
俺の困惑と制止を無視して月神は足早に部屋を出ていってしまった。俺は呆然と立ち尽くしたまま少しの間動けずにいたが、すぐにハッとして階段を駆け下り、月神を追った。しかし時すでに遅し。月神の姿はもう無かった。
「…なぁ母さん、姉さん、月神先生ってもう帰った?」
「…」
「…」
ん?
リビングにいた母と姉に声をかけたのだが、返事が返ってこない。聞こえなかったのだろうか。俺は先程よりも声を大きくして、もう一度同じ事を聞こうとするが、それよりも先に二人の口が動いた。
「ねぇ、誠司。あの人と…何か話した?」
「へ?いや、何も…」
「本当に?何も?」
「うん。何も…」
二人とも何かおかしい。何なんだ、さっきからこの違和感は。
それよりも空気が…何か違う。
「誠…司…」
「母さん?」
急に母の声色が変わった。
いや、違う。戻ったんだ。これがいつもの母の声だ。けれど、まだおかしい。動きがやけに重い。
母をまじまじと観察すると、カクカクな動きで台所に向かった。母は引き出しから包丁を取り出すと、ダーツの矢を投げる時のような構えを取った。もちろん今母が手にしているのはダーツの矢では無く、ガチの包丁だ。
母が大きく振りかぶった時、初めて顔がよく見えた。母は涙を流していた。
「逃げ…て…」
母は大振りで包丁をコチラに投げ飛ばし、ソレは壁に、俺の顔のすぐ隣に突き刺さった。
「母さん!?どうしたの!やめてくれよ!何だよ急に!?」
母は俺の事を無視。すぐに二本目の包丁を引き出しから取り出した。すぐに俺はそれを奪い取ろうと母に向かって行こうとしたが、誰かに背後を取られ、動きを封じられた。
「…」
俺を抑えていたのは紛れもない姉だった。
「やめろ!やめろって!姉貴!何してんだよ!?」
「…」
二人はもう喋らない。何も答えない。
「誰かっ…誰か助けっ」
バタンッ
絶対絶命のその時、廊下へと続くリビングの扉が勢いよく開かれた。そこにいたのは先程帰ったはずの月神だった。
「やはりなっ!…」
「先生!?どうして!?」
「話は後だ、まずは…」
月神は母が持っていた包丁を蹴り飛ばし、捕まった俺を姉から引き剥がしてくれた。次に月神は、ズボンの両ポケットから何か紙状の物を二枚取り出した。清めの御札だ。
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