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第八章 虫と獣の戦争
虫の帝国最深部へ
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バランは身体をコンパクトにまとめるようにすると風のようにヴェスパブラッディリアの懐に飛び込んだ。
捨て身の一撃。
ヴェスパブラッディリアの攻撃をものともせずに横殴りに拳を振るう。
相討ちのようになってぶつかり合う力と力。
しかしこちらの矢は一本ではなかった。
バランに気をとられたヴェスパブラッディリアはウェライの光の爪が迫るのに一瞬だけ対応が遅れた。
実物よりもふた回りほど大きくなった爪の一撃がヴェスパブラッディリアに襲いかかる。
斜めに振り下ろされた光の一撃に、ヴェスパブラッディリアの鋼鉄のような身体が切り裂かれて斜めに滑り落ちた。
あまりの衝撃映像に唖然とするしかないレオンたち。
ウェライが仲間で本当によかった。
これが敵だったら…。
深く考えないことにした。
壮絶なバトルに目を奪われたレオンたちは、隙を狙ってダークスパイダーが姿をくらませたことに気づかなかった。
レオンの意識はそちらには完全にいってなかったのだ。
それはなぜなら、戦いを終えたバランが、着地した拍子にそのまま地面に崩れ落ちてしまったからだ。
「バラン先生!」
駆け寄るレオンたち。
バランは無理に笑うようにするが、肩口から背中にかけてザックリと切り裂かれていた。
ヴェスパブラッディリアの攻撃のすさまじさがわかる。
マリアが即座に回復魔法を施したが、バランの息はまだ荒かった。
「ちょっと無茶しすぎたかな…歳はとりたくないもんだ」
そう言って力なく笑うバランはそれでも多少ふらつきながらも立ち上がった。
「ここから先は僕たちだけでいきます!バラン先生は無理しないでください」
レオンはそう言うとウェライを見る。
「ウェライ大帝もさっきのダメージがありますよね。バラン先生をお願いできますか?」
ウェライもバランも困ったような表情をする。
「お前たちだけではあまりに危険すぎる。この先何がいるのかわからないんだぞ」
バランはそういうがさっきから汗が尋常ではない。
体に蓄積されたダメージとヴェスパブラッディリアの毒の強さを物語っていた。
「俺たち、まだ何にもしてねーし、大丈夫ですよ。先生は休んでいてください。絶対虫たちに負けたりしませんから!」
ダンはそう言うとグッと拳を握って見せる。
特に根拠のない自信なのだが、本人に迷いはなかった。
まだ活躍らしい活躍をしていないダンはまだ行けるという自負があるのだろう。
「………」
困ったように顔を見合わせるウェライとバランだが、息をスーっと吐くと口を開いたのはバランだった。
「仕方ないな。俺が足手まといになってしまっているのは事実だし。任せるとしよう」
バランはそう言うと、ダンとハイデンを呼び寄せ、二言三言ささやいた。
ダンとハイデンはハッとしたような表情をしたあと、同じようににやっと笑うと顔を見合せて頷き合った。
「気を付けろ。この先は何があるかわからんぞ。何かあったらクラベス、頼んだぞ。お前が一番の年配者だがらな」
ウェライはそう言うとクラベスを見た。
話題をふられたクラベスはフッと笑うと、恭しく頷いた。
「かしこまりましたよ。大帝様。この子達の子守りは最後までいたしましょう」
そう言って、レオンを向きじっとレオンを見つめた。
「あのがきんちょが信頼するだけのことはある。さっきの魔法は見事だったよ。さぁ行くとしようか。時間もないことだしね」
不意に誉めれたレオンは少し頬を赤くするが、気を引き締め直してこの洞窟の更に奥地へ行くべくバランやウェライと行動を異にした。
目指すは洞窟の最深部。
この争いの最深部へ。
闇への一本道は静かに続いていた。
捨て身の一撃。
ヴェスパブラッディリアの攻撃をものともせずに横殴りに拳を振るう。
相討ちのようになってぶつかり合う力と力。
しかしこちらの矢は一本ではなかった。
バランに気をとられたヴェスパブラッディリアはウェライの光の爪が迫るのに一瞬だけ対応が遅れた。
実物よりもふた回りほど大きくなった爪の一撃がヴェスパブラッディリアに襲いかかる。
斜めに振り下ろされた光の一撃に、ヴェスパブラッディリアの鋼鉄のような身体が切り裂かれて斜めに滑り落ちた。
あまりの衝撃映像に唖然とするしかないレオンたち。
ウェライが仲間で本当によかった。
これが敵だったら…。
深く考えないことにした。
壮絶なバトルに目を奪われたレオンたちは、隙を狙ってダークスパイダーが姿をくらませたことに気づかなかった。
レオンの意識はそちらには完全にいってなかったのだ。
それはなぜなら、戦いを終えたバランが、着地した拍子にそのまま地面に崩れ落ちてしまったからだ。
「バラン先生!」
駆け寄るレオンたち。
バランは無理に笑うようにするが、肩口から背中にかけてザックリと切り裂かれていた。
ヴェスパブラッディリアの攻撃のすさまじさがわかる。
マリアが即座に回復魔法を施したが、バランの息はまだ荒かった。
「ちょっと無茶しすぎたかな…歳はとりたくないもんだ」
そう言って力なく笑うバランはそれでも多少ふらつきながらも立ち上がった。
「ここから先は僕たちだけでいきます!バラン先生は無理しないでください」
レオンはそう言うとウェライを見る。
「ウェライ大帝もさっきのダメージがありますよね。バラン先生をお願いできますか?」
ウェライもバランも困ったような表情をする。
「お前たちだけではあまりに危険すぎる。この先何がいるのかわからないんだぞ」
バランはそういうがさっきから汗が尋常ではない。
体に蓄積されたダメージとヴェスパブラッディリアの毒の強さを物語っていた。
「俺たち、まだ何にもしてねーし、大丈夫ですよ。先生は休んでいてください。絶対虫たちに負けたりしませんから!」
ダンはそう言うとグッと拳を握って見せる。
特に根拠のない自信なのだが、本人に迷いはなかった。
まだ活躍らしい活躍をしていないダンはまだ行けるという自負があるのだろう。
「………」
困ったように顔を見合わせるウェライとバランだが、息をスーっと吐くと口を開いたのはバランだった。
「仕方ないな。俺が足手まといになってしまっているのは事実だし。任せるとしよう」
バランはそう言うと、ダンとハイデンを呼び寄せ、二言三言ささやいた。
ダンとハイデンはハッとしたような表情をしたあと、同じようににやっと笑うと顔を見合せて頷き合った。
「気を付けろ。この先は何があるかわからんぞ。何かあったらクラベス、頼んだぞ。お前が一番の年配者だがらな」
ウェライはそう言うとクラベスを見た。
話題をふられたクラベスはフッと笑うと、恭しく頷いた。
「かしこまりましたよ。大帝様。この子達の子守りは最後までいたしましょう」
そう言って、レオンを向きじっとレオンを見つめた。
「あのがきんちょが信頼するだけのことはある。さっきの魔法は見事だったよ。さぁ行くとしようか。時間もないことだしね」
不意に誉めれたレオンは少し頬を赤くするが、気を引き締め直してこの洞窟の更に奥地へ行くべくバランやウェライと行動を異にした。
目指すは洞窟の最深部。
この争いの最深部へ。
闇への一本道は静かに続いていた。
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