36 / 101
36 自分だけの舞台(7)
しおりを挟む
銃の重み。
予選よりは慣れた。
この歓声にも、観客の数にも、周りの音にも。
きっと他の2組もすごく上手いんだろうけど、一番大事なのはきっと、俺達二人が楽しむ事だ。
わかってても、緊張しちゃうよなぁ……。
「ゾンビの群れから生還し、栄冠を手にするのはどのペアなのか~!」
なんていう店長の叫びで決勝は始まった。
大丈夫。
さっきと同じように。
銃を構える。
一体二体……と、ゾンビが現れる。
茂みの陰から、車の陰から。
タンッ。
大丈夫。
いける。
冷や汗が出る。
失敗するわけには、いかない。
一体のゾンビに照準を合わせる。
と、
ダンッ!
と、トリガーを引く前にゾンビが倒されてしまう。
礼央が倒したのだ。
ん?
いつもなら、こういう確実なのは任せてくれるんだけど。
タンタンタンッ!
んんん???
さっきから、微妙に、れおくんが倒す割合多くないか?
決勝だから?
やっぱり、あんまり悪い成績は取りたくなくなったとか?
気のせいかもしれないし、なんて、黙って照準を合わせる。
タンッ!
明らかに照準を合わせたゾンビが、横から倒された。
わかってやってる……!?
なんだよ……。
タンッ!
なんだよ!!
亮太も、無理やり、いつもは礼央が倒しているゾンビのあたりまで、撃っていく。
「…………っ」
くっそ、ヘッド外した!
そこからは、もう礼央とゾンビの取り合いになった。
ダンダンダンダン!ダンダンダンダン!
礼央には、なかなか敵わない。
けど、負けたくも、ない。
ダンダンダンダン!ダンダンダンダン!
つまらない挑発だったかもしれなかった。
そんなものに乗ってしまったからかもしれなかった。
そんなやり取りを続けた末のことだった。
西部の町並みのようなステージ。
大量のゾンビ襲来。
そんな中で、二人が同時に、リロードしてしまったものだから。
その一瞬は命取り。
「あっ」
その手放した一瞬で、二人はゾンビの波にに飲まれてしまう。
「あ~……」
GAME OVERの文字を前に、亮太は呆気に取られた。
「ふっ……」
ん?
「くっ……ふっ……はははっ」
隣の礼央から、妙なクスクス笑いが聞こえた。
「おまっ……!変な遊びしなきゃ、もっと行けてたのに……っ」
礼央を睨みつけながら言うと、顔を赤くして笑いを堪える礼央と目が合う。
……まったく、何やって…………。
そこで、わっと周りから声が上がる。
礼央が脱落した事と、まだ続けている隣の台への声だった。
もう一組は、すでに終わっていたらしい。
「…………あ」
そこで亮太は気付く。
今、すっかり忘れていた。
見られている、ということを。
『自分だけの舞台』か。
隣を見ると、礼央はまだちょっと揶揄うような目をしていた。
これほど、観客の事がどうでもよくなるなんて。
……礼央の舞台に、飲み込まれただけかもしれない。
けど、その舞台は、緊張なんてなくて、確かに楽しいものだったんだ。
◇◇◇◇◇
やっと決着がつきました!二人とも楽しかったようですね。
予選よりは慣れた。
この歓声にも、観客の数にも、周りの音にも。
きっと他の2組もすごく上手いんだろうけど、一番大事なのはきっと、俺達二人が楽しむ事だ。
わかってても、緊張しちゃうよなぁ……。
「ゾンビの群れから生還し、栄冠を手にするのはどのペアなのか~!」
なんていう店長の叫びで決勝は始まった。
大丈夫。
さっきと同じように。
銃を構える。
一体二体……と、ゾンビが現れる。
茂みの陰から、車の陰から。
タンッ。
大丈夫。
いける。
冷や汗が出る。
失敗するわけには、いかない。
一体のゾンビに照準を合わせる。
と、
ダンッ!
と、トリガーを引く前にゾンビが倒されてしまう。
礼央が倒したのだ。
ん?
いつもなら、こういう確実なのは任せてくれるんだけど。
タンタンタンッ!
んんん???
さっきから、微妙に、れおくんが倒す割合多くないか?
決勝だから?
やっぱり、あんまり悪い成績は取りたくなくなったとか?
気のせいかもしれないし、なんて、黙って照準を合わせる。
タンッ!
明らかに照準を合わせたゾンビが、横から倒された。
わかってやってる……!?
なんだよ……。
タンッ!
なんだよ!!
亮太も、無理やり、いつもは礼央が倒しているゾンビのあたりまで、撃っていく。
「…………っ」
くっそ、ヘッド外した!
そこからは、もう礼央とゾンビの取り合いになった。
ダンダンダンダン!ダンダンダンダン!
礼央には、なかなか敵わない。
けど、負けたくも、ない。
ダンダンダンダン!ダンダンダンダン!
つまらない挑発だったかもしれなかった。
そんなものに乗ってしまったからかもしれなかった。
そんなやり取りを続けた末のことだった。
西部の町並みのようなステージ。
大量のゾンビ襲来。
そんな中で、二人が同時に、リロードしてしまったものだから。
その一瞬は命取り。
「あっ」
その手放した一瞬で、二人はゾンビの波にに飲まれてしまう。
「あ~……」
GAME OVERの文字を前に、亮太は呆気に取られた。
「ふっ……」
ん?
「くっ……ふっ……はははっ」
隣の礼央から、妙なクスクス笑いが聞こえた。
「おまっ……!変な遊びしなきゃ、もっと行けてたのに……っ」
礼央を睨みつけながら言うと、顔を赤くして笑いを堪える礼央と目が合う。
……まったく、何やって…………。
そこで、わっと周りから声が上がる。
礼央が脱落した事と、まだ続けている隣の台への声だった。
もう一組は、すでに終わっていたらしい。
「…………あ」
そこで亮太は気付く。
今、すっかり忘れていた。
見られている、ということを。
『自分だけの舞台』か。
隣を見ると、礼央はまだちょっと揶揄うような目をしていた。
これほど、観客の事がどうでもよくなるなんて。
……礼央の舞台に、飲み込まれただけかもしれない。
けど、その舞台は、緊張なんてなくて、確かに楽しいものだったんだ。
◇◇◇◇◇
やっと決着がつきました!二人とも楽しかったようですね。
1
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
それはきっと、気の迷い。
葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ?
主人公→睦実(ムツミ)
王道転入生→珠紀(タマキ)
全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》
市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。
男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。
(旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる