君が僕を好きなことを知ってる

大天使ミコエル

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34 自分だけの舞台(5)

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 そして、大会の日はやって来た。

 大会の規模は以前見たFPSの大会と同じくらいだろうか。
 休日の朝だっていうのに、店の中は人でいっぱいだ。

 少し早く来て練習でも……って思ったけど、どうやら無理そうだな。

「みかみくん」

「うわっ」

 後ろから、礼央に声を掛けられる。
 礼央より早く来て、練習する予定だったのに。
 予想以上にゲームをやっている奴らしい。

「今日いっぱいだね」
「あ、どうする?練習とか。別のところ、行く?」

 この辺りには、ゲームセンターならここも入れて3ヶ所ほどある。

「あ、ううん。でもせっかくもう来てるなら、ちょっと遊ぼうか」
 と、礼央はいつものほわっとした笑みを浮かべた。
 言いながら指したのは、落ちものパズルだった。

 え?

 これ……って、FPSに関係ある???もしかして、これで条件反射を養おうと……?
 それとも、本番前に和ませる為に……?

 なんて深読みしてしまったけれど、礼央に早速負けたところで、そんな事はどうでもよくなってしまう。

 こいつ本当に、気を抜くと全て負けてしまうくらいにはゲームなんでも上手いんだよな。

 必死に対戦したところ、5戦やって2回勝つ事が出来た。
「よっしゃぁ……」

 ……いや、大会前にこれだけ疲れてるの、逆にダメなんじゃないか?

 なんて思考が掠めつつ、時間はやって来た。



「はい!今回は久しぶりにペア対決~!!!」
 店長の声がこだまする。
「うおー!」
 ノリのいい観客から声がした。

 うわ、俺大丈夫かな……。

 ステージには、4台の筐体が置かれていた。
 12組、24人の出場が決まっている。
 4組ずつ、3グループに分かれ、一番点数の高かったペアが決勝進出というわけだ。

 1グループ目に組み込まれた俺達は、早速ステージに上がった。

 うわ、思ったより、観客近い。
 それに、多い……。

 ちょっと高くなっているだけの舞台は、観客と視線も近い。
 すっかり、空気に飲まれてしまう。

 手、動くかな。
 これで全然ダメだったら……れおくんにも迷惑…………。

「お馴染み冷酷の黒獅子、レオンくんと、パートナー、温情の黒馬、エクウスくんのペア!ターテーガーミー!!」

「ぶふっ」

 モヤモヤとしていたのに、あまりにもあんまりな紹介につい吹き出してしまう。
 ……コーヒーとか飲んでなくて良かった。

「がんばれー!」
 わーっと観客が声を上げる。
 みんなが、笑ってる。
 れおくんも、俺も。

 そうだよな。
 別に、みんながみんな敵なわけじゃないんだから。

 楽しむのが大事なんだ。

 礼央と頷き合うと、筐体に付いている銃を手に取った。

 戦いが始まる。

 ゾンビが、やって来る。



◇◇◇◇◇



ペア対決の時は常連さん同士で組む事もあります。ペアのいない人も安心!
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