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17 れおくんの行く場所(3)

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 結局……こんな時間までこんな所にいるな……。

 壁の時計を見れば、夕方の4時。
 舞台では、決勝が始まるところだ。

 けど、見ていないわけにもいかなかった。

「さあ!決勝の始まりだ!」
 店長の声がビリビリと響く。

 決勝の舞台に出てくる礼央の姿が見えた。
 観客をじっと眺めるものだから、少しだけ見つかるんじゃないかと緊張する。

 う、あ。

 後ろ向きにしゃがんで、人混みの中に隠れた。

 びっくり、した。

 そこで、ハタと気付く。
 なんで俺……こんな風に隠れて…………。

 別に見つかってもいいはずだ。
 見つかっても困る事なんてない。
 けど、なんだか。

 なんだか、見てはいけないものを見てしまっているようで。

 そこで、
「冷酷の黒獅子!レオン!」
 という店長による礼央の紹介が入る。

「ぶふっ」

 なんだあれ……。

 つい、吹き出してしまう。
 見えない場所に居たことに少しだけ感謝する。

 決勝を盛り上げる演出なんだろうか。
 出場者全てに、謎の二つ名が添えられていた。

 そして、4人がゲームを始める。

 礼央の後ろ姿を眺めた。
 あまりやったことのないゲームだけれど、何事もなく点数を積んでいるように、見える。
 少なくとも、一緒に協力プレイをしている相手よりは、点数を積んでいるようだった。

 全員が、息を呑んで見守った。
 店長までも、マイクを握りしめたまま、音を出さないようにしているようだった。
 店の中は、数あるゲームの音だけが充満した。

 一瞬、礼央が悩むような顔をしたのを、見逃す事が出来なかった。

 亮太も、気付けば真剣に、礼央を見守っていた。

 ガシュン!ドン!ドンドン!

 最後に礼央がトリガーを引き、そこで試合は終わった。

 リザルト画面のBGMが流れる。
 どっと、観客達の声がした。
「勝負ついたー!!!!」
 そのまま、店長が点数を読み上げていく。

「優勝は……!冷酷の黒獅子!」

「おおっ……!」
 思わず、亮太も声を上げる。

「レオンくん!」

 わああああああああ!!店内が騒がしくなる。
 名前を呼ばれ、礼央が少し戸惑う。

「おめでとう!レオンくん!!初優勝ですねぇ!」
「ありがとうございます」
「優勝商品は、当店の3ヶ月パス1枚と~、店名入りのタオルマフラー!これで、うちの店、宣伝してね」
「ははっ」
 礼央が苦笑する。
 冷めた顔。
 こんな顔も、できるんだな。

 なんだか感慨深く思いながら、舞台から降りてくるところで、亮太は礼央を待ち構えた。
 せっかく優勝したんだし、おめでとうの一つも、言ってもいいかもしれないと、思った。

「……っ!」

 視線が合った瞬間、礼央の顔が、いつもの表情に戻る。
 驚きの表情が、かぁっと赤くなる。
 オロオロと周りを見渡し、何かを探すような視線。
 表情を隠すためなのか、パーカーの袖で顔を擦る。
「な、んで……見に来て……?」
 言ってから、見に来たんじゃなく、偶然見つかったという方が可能性が高い事に気付き、礼央はまた視線を泳がせた。

「すごいじゃん。……おめでとう」
 にっと笑うと、礼央はまた照れながら、
「ありがとう」
 と微笑んだ。



 二人、並んで歩く。

「ゲーム、好きだったんだ」

「まあまあ?やってみると、けっこうさっぱりしてさ。面倒な事、忘れられるっていうか」

「すごい上手くて、びっくりした」

「ははっ」
 礼央が、困ったように笑う。
「ああいうのなら、ね。格闘ゲームとかクレーンゲームとかはあんまり上手くないんだけど」

「じゃあ今度なんか対戦しよ」

「うん!いつでも受けて立つよ」



◇◇◇◇◇



照れながら笑うの、可愛いんじゃないかと思います。
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