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16 れおくんの行く場所(2)
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店の中は小さいとはいえ、そこまで大きくはないだけで、数十人がごった返す広さはある。
店の中央端にある舞台に向けて、大勢が集まっているのはもちろんのこと、大会が始まるまでに様子を窺いつつゲームに興じる者、大会など興味がない者なども店内に散らばっていて、大きな筐体のせいで陰も多い。
くまなく見るのにはなかなか骨が折れそうだ。
どうしたものかと思っていると、マイクを伝って大きな声が聞こえた。
「さあ、今日も始めますよ!」
どうやら、大会が始まったらしい。
大きな声は店長のものだった。
舞台で、髭の店長がマイクを持って司会を務めているのが見えた。
「エントリーは16人!店大会はいつも人気がないのに、こんなに出てくれてありがとうございます」
観客達に、笑いが巻き起こる。
え………。
舞台と言っても、フロアから30センチほど高いだけの場所だ。
それほどはっきりと見えるわけじゃない。
けど。
見知った黒いくりくり頭は、その壇上に立っていた。
「なんであんなとこに……っ」
驚いている間に、出場者の紹介が始まる。
「この顔はもう覚えている人もいますね!?出場するたびに好成績を収めている、レオンくん!」
「…………!?」
大会に……何度も出てるって……。
人だかりの奥から顔を覗かせれば、確かにそのくりくり頭の人物は、見知った顔だった。
冷めた視線。
無表情の顔。
スラリと伸びた足。
まるで何にも興味がなさそうで、どこを見ているかわからない姿は、いつものイメージとは全く違った。
けど、髪のくりくり加減や、いつもの眼鏡を見たところ、そっくりさんだの双子だのという事はないのだろう。
何より、名前がそのまんまだ。
人の中に隠れるように、覗く。
「さあ、今回は、協力プレイを使って個人の点数で競っていただきます」
舞台の壁沿いに、二つ並んだ筐体が見える。
それぞれ2人ずつが使える。一度に4人のプレイヤーがプレイするということだ。
礼央らしき人物は、第一試合に出るようだった。
後ろ姿も、なんだか別人のようだ。
けど、そういえば、礼央はケントと楽しそうにゲーム実況を見ていたっけ。
観客達の声と、ゲームの音で騒がしい店内。
少しのミスをして、慌てた顔を見せたその人物の横顔は、確かに礼央だった。
あ、確かに、……れおくんだ。
確信に変わる。
「が、がんばれ……っ」
亮太の思わず出た声は、観客の声にかき消される。
きっと、届かない言葉だ。
けど、言わずにはいられなかった。
それからも亮太は、礼央には見えないよう、その場でコッソリと応援した。
礼央はそんな小さな応援なんて関係ないというように、あっという間に決勝戦へ進んだ。
◇◇◇◇◇
れおくんは、見た目にこだわらない上に、名前にもこだわらないタイプのようですね!
店の中央端にある舞台に向けて、大勢が集まっているのはもちろんのこと、大会が始まるまでに様子を窺いつつゲームに興じる者、大会など興味がない者なども店内に散らばっていて、大きな筐体のせいで陰も多い。
くまなく見るのにはなかなか骨が折れそうだ。
どうしたものかと思っていると、マイクを伝って大きな声が聞こえた。
「さあ、今日も始めますよ!」
どうやら、大会が始まったらしい。
大きな声は店長のものだった。
舞台で、髭の店長がマイクを持って司会を務めているのが見えた。
「エントリーは16人!店大会はいつも人気がないのに、こんなに出てくれてありがとうございます」
観客達に、笑いが巻き起こる。
え………。
舞台と言っても、フロアから30センチほど高いだけの場所だ。
それほどはっきりと見えるわけじゃない。
けど。
見知った黒いくりくり頭は、その壇上に立っていた。
「なんであんなとこに……っ」
驚いている間に、出場者の紹介が始まる。
「この顔はもう覚えている人もいますね!?出場するたびに好成績を収めている、レオンくん!」
「…………!?」
大会に……何度も出てるって……。
人だかりの奥から顔を覗かせれば、確かにそのくりくり頭の人物は、見知った顔だった。
冷めた視線。
無表情の顔。
スラリと伸びた足。
まるで何にも興味がなさそうで、どこを見ているかわからない姿は、いつものイメージとは全く違った。
けど、髪のくりくり加減や、いつもの眼鏡を見たところ、そっくりさんだの双子だのという事はないのだろう。
何より、名前がそのまんまだ。
人の中に隠れるように、覗く。
「さあ、今回は、協力プレイを使って個人の点数で競っていただきます」
舞台の壁沿いに、二つ並んだ筐体が見える。
それぞれ2人ずつが使える。一度に4人のプレイヤーがプレイするということだ。
礼央らしき人物は、第一試合に出るようだった。
後ろ姿も、なんだか別人のようだ。
けど、そういえば、礼央はケントと楽しそうにゲーム実況を見ていたっけ。
観客達の声と、ゲームの音で騒がしい店内。
少しのミスをして、慌てた顔を見せたその人物の横顔は、確かに礼央だった。
あ、確かに、……れおくんだ。
確信に変わる。
「が、がんばれ……っ」
亮太の思わず出た声は、観客の声にかき消される。
きっと、届かない言葉だ。
けど、言わずにはいられなかった。
それからも亮太は、礼央には見えないよう、その場でコッソリと応援した。
礼央はそんな小さな応援なんて関係ないというように、あっという間に決勝戦へ進んだ。
◇◇◇◇◇
れおくんは、見た目にこだわらない上に、名前にもこだわらないタイプのようですね!
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