8 / 56
8 そしたらどうする?
しおりを挟む
心臓を抑え込まれたような感覚と、喉の奥が詰まるような感覚。
一瞬、放心状態になる。
だけど。
あ、えっと。
そうだ。
このまま、こいつを放置するわけにもいかなかった。
「俺らさ、」
話を続けたけれど、カスカスになった声は、声にはならなかった。
「ケホッ、ん、んん……」
やり直し。
「俺らさ、この時間はいつも非常階段でたむろってるんだけど、一緒にどう?」
「え、あ……」
礼央が口ごもる。
礼央の方も、どうやら会話の内容が頭にうまく入らない程、まだ動揺しているらしかった。
「僕も、行っていいの?」
礼央がどんな顔をしているのか、見ることが出来ずに、
「当たり前だろ」
前を向いたまま返事をした。
ちゃんとついて来ているか確認だけはしながら、亮太は前を歩いた。
賑やかな午後の校舎の中。
階段を1階まで降り、校舎の裏へまわる。
非常階段なので、2階や3階からでも校舎の端まで行けば、もちろん階段には出られるのだけれど、上級生のいるフロアを堂々と歩けるほど、亮太はまだ学校に慣れてはいない。
非常階段に向かうと、そこには既にケントとサクの二人が居た。
サクは壁に寄りかかり、居眠りに興じている。
ケントの方はどうやらまたスマホで推しでも眺めているみたいだった。
二人が来るなり、ケントが、
「あ、れおくん、見て見て!これ、俺の推し~」
と、予想通りの行動に出る。
「かわいいね」
「だろ~」
亮太は階段に座り、手に持っていたコーヒー牛乳のパックをじっと見る。
普通を装うので、精一杯だった。
あの……顔…………。
思い出すだけで、喉の奥が潰れそうになる。
見せられないような顔をしている気がして、じっと壁の方を見つめた。
……流石に、「好かれている」という前提で動いた方がいいよな。
そう決まったわけじゃないけど。
これで勘違いだって切り捨てるのは、むしろ……失礼なんじゃないか?
だったら、離れたほうが……いいの、かな。
その気持ちに応えるつもりなんて、ないわけだし。
「…………」
ズルズルと、パックのコーヒー牛乳を口にした。
けど。
二人の会話を聞く。
「え、猫耳の子、これ?」
「そうそう。このがむしゃらに撃ってるおっさん」
「イメージと違うね」
「だろー?そこがいいわけ」
なんだか楽しそうで。
それで……俺はどうしたらいいって……?
友達にまでなるななんて、そんなことを言うつもりはなかった。
別に……嫌なヤツじゃないしな。
告ってくるわけじゃないし。
襲ってくるわけじゃないし。
ベタベタ触ってくるわけでも、変な目で見てくるわけでもない。
ちらりと見ると、ケントと一緒にゲーム実況を楽しんでいる。
「おっさん動きがすごい……。解ってる動きだ」
「だっろ~!人気はそこそこだけど、ちょー!オススメだから」
礼央が、笑う。
「………………」
突き放すなら、何かあった時でいいか。
きっと今は、このままでいいんだ。
◇◇◇◇◇
ケントの推しは、ゾンビと戦うようなゲームが得意なタイプです。
一瞬、放心状態になる。
だけど。
あ、えっと。
そうだ。
このまま、こいつを放置するわけにもいかなかった。
「俺らさ、」
話を続けたけれど、カスカスになった声は、声にはならなかった。
「ケホッ、ん、んん……」
やり直し。
「俺らさ、この時間はいつも非常階段でたむろってるんだけど、一緒にどう?」
「え、あ……」
礼央が口ごもる。
礼央の方も、どうやら会話の内容が頭にうまく入らない程、まだ動揺しているらしかった。
「僕も、行っていいの?」
礼央がどんな顔をしているのか、見ることが出来ずに、
「当たり前だろ」
前を向いたまま返事をした。
ちゃんとついて来ているか確認だけはしながら、亮太は前を歩いた。
賑やかな午後の校舎の中。
階段を1階まで降り、校舎の裏へまわる。
非常階段なので、2階や3階からでも校舎の端まで行けば、もちろん階段には出られるのだけれど、上級生のいるフロアを堂々と歩けるほど、亮太はまだ学校に慣れてはいない。
非常階段に向かうと、そこには既にケントとサクの二人が居た。
サクは壁に寄りかかり、居眠りに興じている。
ケントの方はどうやらまたスマホで推しでも眺めているみたいだった。
二人が来るなり、ケントが、
「あ、れおくん、見て見て!これ、俺の推し~」
と、予想通りの行動に出る。
「かわいいね」
「だろ~」
亮太は階段に座り、手に持っていたコーヒー牛乳のパックをじっと見る。
普通を装うので、精一杯だった。
あの……顔…………。
思い出すだけで、喉の奥が潰れそうになる。
見せられないような顔をしている気がして、じっと壁の方を見つめた。
……流石に、「好かれている」という前提で動いた方がいいよな。
そう決まったわけじゃないけど。
これで勘違いだって切り捨てるのは、むしろ……失礼なんじゃないか?
だったら、離れたほうが……いいの、かな。
その気持ちに応えるつもりなんて、ないわけだし。
「…………」
ズルズルと、パックのコーヒー牛乳を口にした。
けど。
二人の会話を聞く。
「え、猫耳の子、これ?」
「そうそう。このがむしゃらに撃ってるおっさん」
「イメージと違うね」
「だろー?そこがいいわけ」
なんだか楽しそうで。
それで……俺はどうしたらいいって……?
友達にまでなるななんて、そんなことを言うつもりはなかった。
別に……嫌なヤツじゃないしな。
告ってくるわけじゃないし。
襲ってくるわけじゃないし。
ベタベタ触ってくるわけでも、変な目で見てくるわけでもない。
ちらりと見ると、ケントと一緒にゲーム実況を楽しんでいる。
「おっさん動きがすごい……。解ってる動きだ」
「だっろ~!人気はそこそこだけど、ちょー!オススメだから」
礼央が、笑う。
「………………」
突き放すなら、何かあった時でいいか。
きっと今は、このままでいいんだ。
◇◇◇◇◇
ケントの推しは、ゾンビと戦うようなゲームが得意なタイプです。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ハヤトロク
白崎ぼたん
BL
中条隼人、高校二年生。
ぽっちゃりで天然パーマな外見を、クラスの人気者一ノ瀬にからかわれ、孤立してしまっている。
「ようし、今年の俺は悪役令息だ!」
しかし隼人は持ち前の前向きさと、あふれ出る創作力で日々を乗り切っていた。自分を主役にして小説を書くと、気もちが明るくなり、いじめも跳ね返せる気がする。――だから友達がいなくても大丈夫、と。
そんなある日、隼人は同学年の龍堂太一にピンチを救われる。龍堂は、一ノ瀬達ですら一目置く、一匹狼と噂の生徒だ。
「すごい、かっこいいなあ……」
隼人は、龍堂と友達になりたいと思い、彼に近づくが……!?
クーデレ一匹狼×マイペースいじめられっこの青春BL!
ひとりぼっちの180日
あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。
何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。
篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。
二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。
いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。
▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。
▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。
▷ 攻めはスポーツマン。
▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。
▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
気の遣い方が斜め上
りこ
BL
俺には同棲している彼氏がいる。だけど、彼氏には俺以外に体の関係をもっている相手がいる。
あいつは優しいから俺に別れるとは言えない。……いや、優しさの使い方間違ってねえ?
気の遣い方が斜め上すぎんだよ!って思っている受けの話。
火傷の跡と見えない孤独
リコ井
BL
顔に火傷の跡があるユナは人目を避けて、山奥でひとり暮らしていた。ある日、崖下で遭難者のヤナギを見つける。ヤナギは怪我のショックで一時的に目が見なくなっていた。ユナはヤナギを献身的に看病するが、二人の距離が近づくにつれ、もしヤナギが目が見えるようになり顔の火傷の跡を忌み嫌われたらどうしようとユナは怯えていた。
嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです
浮気性のクズ【完結】
REN
BL
クズで浮気性(本人は浮気と思ってない)の暁斗にブチ切れた律樹が浮気宣言するおはなしです。
暁斗(アキト/攻め)
大学2年
御曹司、子供の頃からワガママし放題のため倫理観とかそういうの全部母のお腹に置いてきた、女とSEXするのはただの性処理で愛してるのはリツキだけだから浮気と思ってないバカ。
律樹(リツキ/受け)
大学1年
一般人、暁斗に惚れて自分から告白して付き合いはじめたものの浮気性のクズだった、何度言ってもやめない彼についにブチ切れた。
綾斗(アヤト)
大学2年
暁斗の親友、一般人、律樹の浮気相手のフリをする、温厚で紳士。
3人は高校の時からの先輩後輩の間柄です。
綾斗と暁斗は幼なじみ、暁斗は無自覚ながらも本当は律樹のことが大好きという前提があります。
執筆済み、全7話、予約投稿済み
雫
ゆい
BL
涙が落ちる。
涙は彼に届くことはない。
彼を想うことは、これでやめよう。
何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。
僕は、その場から音を立てずに立ち去った。
僕はアシェル=オルスト。
侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。
彼には、他に愛する人がいた。
世界観は、【夜空と暁と】と同じです。
アルサス達がでます。
【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。
随時更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる