3 / 85
3 嫌いっていうより
しおりを挟む
ただ、静かな教室だった。
明るい日差しの入る南向きの教室で。
亮太はただ、礼央の瞳を覗くことができた。
一瞬だった。
眼鏡越しだったし、直ぐに逸らされてしまった。
けど。
へ?
紅潮した頬。
奥で光る瞳。
「あっ……」
小さく漏れた声と。
そんな顔を隠すように持ち上げられた腕と。
なんで…………。
目が離せなかった。
なんで、そんな顔、すんだよ…………。
名前を呼んだのも、特に用があるわけじゃないみたいだった。
ノートを借りっぱなしだったことに文句を言われるわけでもなく、抜き打ちはどうだったのかって会話をするでもなく。
睨みつけてくるわけでもなかった。
嫌いなら。
もし、嫌いなら。
普通は怯えた目になったり、嫌そうにしたり、素っ気なくしたりするもんだろ。
なんでそんな……。
まるで緊張してるみたいな。
逃げるんじゃなくて、隠れたいみたいな。
なんか、少女漫画で読んだことあるみたいな。
なんかこれって……………………。
そんな変な思考に行き着いて。
そんな思考に行き着いた自分が嫌で。
亮太は教室を早足で出て行った。
気付けば、隣の校舎の音楽室から、吹奏楽部の音が聞こえていた。
外ではジョギングをしているサッカー部が居た。
いつもの、放課後の風景。
何処か、非日常の世界から、いつもの世界に戻ってきたみたいだった。
なんだよ、あの顔。
きっと英語の時間、ノートが無くて困っただろうに。
なんかちょっと…………嬉しそうだっ………………。
「…………」
そんな思考になって。
出来るだけ苦い顔を作った。
出来るだけ早く歩いたし、出来るだけ人と会わなそうな帰り道を選んだ。
校門の前の並木道の木漏れ日が、頭の上から降り注いだ。
いつもの公園を通り抜けずに歩いた。
いつも会う人懐こい犬にも、今日だけは会いたくなかった。
どれだけ早く歩いて、どれだけ振り払おうとしても、あの顔が、脳裏から離れることがなかった。
火照った頬と。
眼鏡の奥の瞳が。
おかしいって……。
おかしいって!
家に入って、なんとか「ただいま」を絞り出す。
妹が学校鞄を背中に背負ったまま台所を物色しているのに気付いたけれど、声を掛けることもしなかった。
階段を転がるように上がった。
だって、俺は男で。
あいつだって男だった。
だから、あり得ない想像をしている。
まるで、好きな人を前にして、戸惑ってるみたいだった、なんて。
もしかしたら。
もしかしたら、あいつが、俺のことを好きかもしれない…………なんて。
そんな、こと。
階段から足が滑りそうになって、ギリギリのところで堪える。
自室のドアを閉めて、やっと、亮太は久しぶりに息をしたような気がした。
何考えてんだよ。俺は。
けどやっぱり、どうしても、あの顔を……。
あのれおくんの顔を、考えずにはいられなかった。
◇◇◇◇◇
ちなみに、主人公のみかみくんは、三上亮太くんです。
明るい日差しの入る南向きの教室で。
亮太はただ、礼央の瞳を覗くことができた。
一瞬だった。
眼鏡越しだったし、直ぐに逸らされてしまった。
けど。
へ?
紅潮した頬。
奥で光る瞳。
「あっ……」
小さく漏れた声と。
そんな顔を隠すように持ち上げられた腕と。
なんで…………。
目が離せなかった。
なんで、そんな顔、すんだよ…………。
名前を呼んだのも、特に用があるわけじゃないみたいだった。
ノートを借りっぱなしだったことに文句を言われるわけでもなく、抜き打ちはどうだったのかって会話をするでもなく。
睨みつけてくるわけでもなかった。
嫌いなら。
もし、嫌いなら。
普通は怯えた目になったり、嫌そうにしたり、素っ気なくしたりするもんだろ。
なんでそんな……。
まるで緊張してるみたいな。
逃げるんじゃなくて、隠れたいみたいな。
なんか、少女漫画で読んだことあるみたいな。
なんかこれって……………………。
そんな変な思考に行き着いて。
そんな思考に行き着いた自分が嫌で。
亮太は教室を早足で出て行った。
気付けば、隣の校舎の音楽室から、吹奏楽部の音が聞こえていた。
外ではジョギングをしているサッカー部が居た。
いつもの、放課後の風景。
何処か、非日常の世界から、いつもの世界に戻ってきたみたいだった。
なんだよ、あの顔。
きっと英語の時間、ノートが無くて困っただろうに。
なんかちょっと…………嬉しそうだっ………………。
「…………」
そんな思考になって。
出来るだけ苦い顔を作った。
出来るだけ早く歩いたし、出来るだけ人と会わなそうな帰り道を選んだ。
校門の前の並木道の木漏れ日が、頭の上から降り注いだ。
いつもの公園を通り抜けずに歩いた。
いつも会う人懐こい犬にも、今日だけは会いたくなかった。
どれだけ早く歩いて、どれだけ振り払おうとしても、あの顔が、脳裏から離れることがなかった。
火照った頬と。
眼鏡の奥の瞳が。
おかしいって……。
おかしいって!
家に入って、なんとか「ただいま」を絞り出す。
妹が学校鞄を背中に背負ったまま台所を物色しているのに気付いたけれど、声を掛けることもしなかった。
階段を転がるように上がった。
だって、俺は男で。
あいつだって男だった。
だから、あり得ない想像をしている。
まるで、好きな人を前にして、戸惑ってるみたいだった、なんて。
もしかしたら。
もしかしたら、あいつが、俺のことを好きかもしれない…………なんて。
そんな、こと。
階段から足が滑りそうになって、ギリギリのところで堪える。
自室のドアを閉めて、やっと、亮太は久しぶりに息をしたような気がした。
何考えてんだよ。俺は。
けどやっぱり、どうしても、あの顔を……。
あのれおくんの顔を、考えずにはいられなかった。
◇◇◇◇◇
ちなみに、主人公のみかみくんは、三上亮太くんです。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
唇を隠して,それでも君に恋したい。
不破 海美ーふわ うみー
BL
同性で親友の敦に恋をする主人公は,性別だけでなく,生まれながらの特殊な体質にも悩まされ,けれどその恋心はなくならない。
大きな弊害に様々な苦難を強いられながらも,たった1人に恋し続ける男の子のお話。
アリスの苦難
浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ)
彼は生徒会の庶務だった。
突然壊れた日常。
全校生徒からの繰り返される”制裁”
それでも彼はその事実を受け入れた。
…自分は受けるべき人間だからと。
主人公は俺狙い?!
suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。
容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。
だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。
朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。
15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。
学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。
彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。
そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、
面倒事、それもBL(多分)とか無理!!
そう考え近づかないようにしていた。
そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。
ハプニングだらけの学園生活!
BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息
※文章うるさいです
※背後注意
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる