2 / 101
2 みかみくん
しおりを挟む
えっと……。have been……。
その高坂から借りたノートの英文を、一つ一つ覚えていく。
やばい……、頭入らない……。
さっきの嫌っているという言葉が、なんだか引っかかっていた。
知らんやつに嫌われていてもなんともないのかもしれない。
けど。
知らんやつに嫌われるほどの何かなんてしてないのに。
「なんだよ」
ひとり、無意識に呟く。
ズズ……と音を立てて無くなったコーヒー牛乳のパックは、ゴミ箱に放り込んだ。
廊下でぶつかりそうになりながらも、ノートと睨めっこをしながら歩く。
二人は前で余裕そうに抜き打ちの話をしている。
そのまま教室まで行くと、先生の、
「早く席着け~!今日は抜き打ちやるぞー!教科書は鞄の中!」
という声が覆い被さるように降ってくる。
「え~」というお決まりの声で、教室はいっぱいになった。
慌てて席に着いたので、
「あ」
英語のノートを返し忘れたままなのに気付いたけれど、仕方なく自分の鞄の中にしまった。
英語の抜き打ちは、ノートのおかげでそれほど悪くはなかった。
まあ、特に良くもなかったけど。
それから、英語のノートの事は忘れ去り、再度英語のノートの借りっぱなしに気付いたのは、放課後のことだった。
ノートの表紙には、几帳面そうな字で、『高坂礼央』と書いてある。
亮太は後ろを振り返った。
確か、ケントが言うには、高坂の席は、後ろの後ろの右だ。
そして奴は、探すまでもなく、そこに居た。
視線が、合う。
後ろの後ろの右の席に座っていたのは、くるくるとした天パ黒髪に隠れるような眼鏡男子だった。
背は低くはなさそうだけれど、華奢な印象だ。
よかった、居た。
ふむ。
確かに見覚えはあるような。
けど、確かに名前はわからないな。
まあ、こいつがどうやら“れおくん”らしい。
目が合うなり、あからさまに目を逸らされる。
なんだよ。
このノートに気付いて見てたのかもしれないし、返ってこなくて不審に思ったのかもしれないけど。
そーやってあからさまに目逸らすのって、ちょっとしつれーなんじゃないの?
俺が、何したって言うわけ?
ぽすっと英語のノートを礼央の机の上に置く。
「これ……、借りてた。さんきゅな」
こんな奴とは関わらない方がいいって思いながら話したものだから、声はちょっと投げやりになった。
そしてまた礼央が、返事もせず俯いてしまったものだから、二人の間には、ギクシャクとした空気が流れた。
そのまま、ノートを置いて、立ち去ってしまおうと思った。
教室はもう他に誰も居なくて。
まだ部活も始まってないせいで外からも声の一つもしなかった。
ただ、明るい二人だけの教室。
「みかみくん」
けど、礼央が俺のことをそう呼んだから。
ふっと、振り返った。
振り返ってしまった。
◇◇◇◇◇
今作はこんな感じで二人の甘々の連続でいきたいと思います。
その高坂から借りたノートの英文を、一つ一つ覚えていく。
やばい……、頭入らない……。
さっきの嫌っているという言葉が、なんだか引っかかっていた。
知らんやつに嫌われていてもなんともないのかもしれない。
けど。
知らんやつに嫌われるほどの何かなんてしてないのに。
「なんだよ」
ひとり、無意識に呟く。
ズズ……と音を立てて無くなったコーヒー牛乳のパックは、ゴミ箱に放り込んだ。
廊下でぶつかりそうになりながらも、ノートと睨めっこをしながら歩く。
二人は前で余裕そうに抜き打ちの話をしている。
そのまま教室まで行くと、先生の、
「早く席着け~!今日は抜き打ちやるぞー!教科書は鞄の中!」
という声が覆い被さるように降ってくる。
「え~」というお決まりの声で、教室はいっぱいになった。
慌てて席に着いたので、
「あ」
英語のノートを返し忘れたままなのに気付いたけれど、仕方なく自分の鞄の中にしまった。
英語の抜き打ちは、ノートのおかげでそれほど悪くはなかった。
まあ、特に良くもなかったけど。
それから、英語のノートの事は忘れ去り、再度英語のノートの借りっぱなしに気付いたのは、放課後のことだった。
ノートの表紙には、几帳面そうな字で、『高坂礼央』と書いてある。
亮太は後ろを振り返った。
確か、ケントが言うには、高坂の席は、後ろの後ろの右だ。
そして奴は、探すまでもなく、そこに居た。
視線が、合う。
後ろの後ろの右の席に座っていたのは、くるくるとした天パ黒髪に隠れるような眼鏡男子だった。
背は低くはなさそうだけれど、華奢な印象だ。
よかった、居た。
ふむ。
確かに見覚えはあるような。
けど、確かに名前はわからないな。
まあ、こいつがどうやら“れおくん”らしい。
目が合うなり、あからさまに目を逸らされる。
なんだよ。
このノートに気付いて見てたのかもしれないし、返ってこなくて不審に思ったのかもしれないけど。
そーやってあからさまに目逸らすのって、ちょっとしつれーなんじゃないの?
俺が、何したって言うわけ?
ぽすっと英語のノートを礼央の机の上に置く。
「これ……、借りてた。さんきゅな」
こんな奴とは関わらない方がいいって思いながら話したものだから、声はちょっと投げやりになった。
そしてまた礼央が、返事もせず俯いてしまったものだから、二人の間には、ギクシャクとした空気が流れた。
そのまま、ノートを置いて、立ち去ってしまおうと思った。
教室はもう他に誰も居なくて。
まだ部活も始まってないせいで外からも声の一つもしなかった。
ただ、明るい二人だけの教室。
「みかみくん」
けど、礼央が俺のことをそう呼んだから。
ふっと、振り返った。
振り返ってしまった。
◇◇◇◇◇
今作はこんな感じで二人の甘々の連続でいきたいと思います。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
47歳のおじさんが異世界に召喚されたら不動明王に化身して感謝力で無双しまくっちゃう件!
のんたろう
ファンタジー
異世界マーラに召喚された凝流(しこる)は、
ハサンと名を変えて異世界で
聖騎士として生きることを決める。
ここでの世界では
感謝の力が有効と知る。
魔王スマターを倒せ!
不動明王へと化身せよ!
聖騎士ハサン伝説の伝承!
略称は「しなおじ」!
年内書籍化予定!
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。
鷹が雀に喰われるとはっ!
凪玖海くみ
BL
陽キャ男子こと知崎鷹千代の最近の趣味は、物静かなクラスメイト・楠間雲雀にウザ絡みをすること。
常にびくびくとする雲雀に内心興味を抱いている様子だが……しかし、彼らの正体は幼馴染で親にも秘密にしている恋人同士だった!
ある日、半同棲をしている二人に奇妙な噂が流れて……?
実は腹黒い陰キャ×雲雀のことが大好き過ぎる陽キャによる青春BL!
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
ルームシェアは犬猿の仲で
凪玖海くみ
BL
几帳面なエリート会社員・望月涼介は同僚の結婚を機に家を失う。
新たな同居人として紹介されたのは、自由奔放なフリーター・桜庭陽太。
しかし、性格が正反対な二人の共同生活は予想通りトラブル続き⁉
掃除、食事、ルール決め——ぶつかり合いながらも、少しずつ変化していく日常。
犬猿の仲なルームメイトが織りなす、ちょっと騒がしくて心地いい物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる