164 / 176
164 王室図書館(1)
しおりを挟む
王都であっても、できる限り2人以上での外出が推奨されていた。
翌日、エマは、リナリと共に絵師エリオットの元へ行った。
スケッチブックに向かうエリオットの手元をじっと見る。
サカサカと、鉛筆が紙の上を走る音が聞こえる。
リナリは静かに、少し離れた場所で本を読んでいた。
付き合わせてしまって申し訳ないな。
「エリオットさん」
「どうしたの?」
エリオットは顔を上げず、声だけで対応した。
「王室図書館に行ってみたいと思ってるんですけど、誰でも入れるものなんですか?」
エリオットは鉛筆を顎に当て、「そうね」と少し考える顔をした。
「エマさんは、本が好きなの?」
「はい。私もですけど、リナリの方が」
名前を呼ばれ、リナリが本から顔を上げた。
「リナリさん、本が好きなのね」
「はい。魔術に関する本が多いですけど」
エリオットが本の題名に目を走らせる。リナリは丁度、レーヴ・ラビラントの著書を読んでいた。
「研究論文、好きなの?」
「はい。今、昔の精霊に関する本を重点的に読んでいて」
「あなたも、王室図書館に入りたいのね」
「はい」
そう静かに言ったリナリの目は、その声とは裏腹にキラキラと輝いていた。
「図書館は誰でもは入れないの。けど、私なら図書館に推薦状が書けるわ。あなたたち2人なら推薦してあげてもいいわね」
「本当ですか?ぜひ!」
エリオットが絵を描き終わると、正式な推薦状を書いてくれた。
最後に大きくサインを入れる。
この絵師さんはもしかして、この国でも結構すごい人だったりするのかな。
その推薦状を受け取った時、リナリの顔が綻んだ。
あ、やっぱりリナリとならここだって思ったんだ。
せっかくだから、リナリが行きたい場所にも行きたいし。
それに、もしかしたら、『メモアーレン』の攻略対象であるラビラントに会えるかもしれない。
ここで司書をしているらしいから。
二人は、その足で王室図書館まで出かけた。
王室図書館は、王城の側にある。
もちろん王族が使うために建てられた図書館だ。
けれど、その図書館は王城とは離れて建てられており、関係者の紹介で入館証を得られれば、誰でも入ることができる。
「入館証、もらえたらいいね」
「エリオットさんも学園の人間なら可能性高いって言ってたし、大丈夫じゃないかな」
そこから数十分ほど。てくてくと歩いた先に、その大きな建物はあった。
「こ…………ここが…………!」
興奮気味なのはリナリの方だ。
「おお~……」
感嘆の声が出る。
王城と合わせたグレーの石造りの大きな建築物。
「ちょっと緊張するね」
リナリが、小さな声で言う。
エマの腕につかまり、おどおどとリスのようになっていた。
大きな扉をくぐり、ホールに入ると、正面に案内所のようなカウンターが目に入る。
「こんにちは」
「こんにちは」
挨拶をすると、司書専用の落ち着いた色のローブを着たお兄さんが、顔を上げた。
「私達二人、図書館に入りたいのですが。推薦状も貰ってきました」
「推薦状……?拝見しますね」
そう言って、差し出した手紙を渡すと、司書さんは丁寧に中を確かめた。
「エリオット様の。わかりました。そちらでお待ち下さい」
案内の司書さんが示したのは、ロビーの片隅に置いてあるソファだった。小さなテーブルも据えられている。
二人、ちょこんとそのソファに座った。
◇◇◇◇◇
さてさて、ラビラントさんはいったいどんなキャラなのでしょうか。
翌日、エマは、リナリと共に絵師エリオットの元へ行った。
スケッチブックに向かうエリオットの手元をじっと見る。
サカサカと、鉛筆が紙の上を走る音が聞こえる。
リナリは静かに、少し離れた場所で本を読んでいた。
付き合わせてしまって申し訳ないな。
「エリオットさん」
「どうしたの?」
エリオットは顔を上げず、声だけで対応した。
「王室図書館に行ってみたいと思ってるんですけど、誰でも入れるものなんですか?」
エリオットは鉛筆を顎に当て、「そうね」と少し考える顔をした。
「エマさんは、本が好きなの?」
「はい。私もですけど、リナリの方が」
名前を呼ばれ、リナリが本から顔を上げた。
「リナリさん、本が好きなのね」
「はい。魔術に関する本が多いですけど」
エリオットが本の題名に目を走らせる。リナリは丁度、レーヴ・ラビラントの著書を読んでいた。
「研究論文、好きなの?」
「はい。今、昔の精霊に関する本を重点的に読んでいて」
「あなたも、王室図書館に入りたいのね」
「はい」
そう静かに言ったリナリの目は、その声とは裏腹にキラキラと輝いていた。
「図書館は誰でもは入れないの。けど、私なら図書館に推薦状が書けるわ。あなたたち2人なら推薦してあげてもいいわね」
「本当ですか?ぜひ!」
エリオットが絵を描き終わると、正式な推薦状を書いてくれた。
最後に大きくサインを入れる。
この絵師さんはもしかして、この国でも結構すごい人だったりするのかな。
その推薦状を受け取った時、リナリの顔が綻んだ。
あ、やっぱりリナリとならここだって思ったんだ。
せっかくだから、リナリが行きたい場所にも行きたいし。
それに、もしかしたら、『メモアーレン』の攻略対象であるラビラントに会えるかもしれない。
ここで司書をしているらしいから。
二人は、その足で王室図書館まで出かけた。
王室図書館は、王城の側にある。
もちろん王族が使うために建てられた図書館だ。
けれど、その図書館は王城とは離れて建てられており、関係者の紹介で入館証を得られれば、誰でも入ることができる。
「入館証、もらえたらいいね」
「エリオットさんも学園の人間なら可能性高いって言ってたし、大丈夫じゃないかな」
そこから数十分ほど。てくてくと歩いた先に、その大きな建物はあった。
「こ…………ここが…………!」
興奮気味なのはリナリの方だ。
「おお~……」
感嘆の声が出る。
王城と合わせたグレーの石造りの大きな建築物。
「ちょっと緊張するね」
リナリが、小さな声で言う。
エマの腕につかまり、おどおどとリスのようになっていた。
大きな扉をくぐり、ホールに入ると、正面に案内所のようなカウンターが目に入る。
「こんにちは」
「こんにちは」
挨拶をすると、司書専用の落ち着いた色のローブを着たお兄さんが、顔を上げた。
「私達二人、図書館に入りたいのですが。推薦状も貰ってきました」
「推薦状……?拝見しますね」
そう言って、差し出した手紙を渡すと、司書さんは丁寧に中を確かめた。
「エリオット様の。わかりました。そちらでお待ち下さい」
案内の司書さんが示したのは、ロビーの片隅に置いてあるソファだった。小さなテーブルも据えられている。
二人、ちょこんとそのソファに座った。
◇◇◇◇◇
さてさて、ラビラントさんはいったいどんなキャラなのでしょうか。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
夫に離婚を切り出したら、物語の主人公の継母になりました
魚谷
恋愛
「ギュスターブ様、離婚しましょう!」
8歳の頃に、15歳の夫、伯爵のギュスターブの元に嫁いだ、侯爵家出身のフリーデ。
その結婚生活は悲惨なもの。一度も寝室を同じくしたことがなく、戦争狂と言われる夫は夫婦生活を持とうとせず、戦場を渡り歩いてばかり。
堪忍袋の緒が切れたフリーデはついに離婚を切り出すも、夫は金髪碧眼の美しい少年、ユーリを紹介する。
理解が追いつかず、卒倒するフリーデ。
その瞬間、自分が生きるこの世界が、前世大好きだった『凍月の刃』という物語の世界だということを思い出す。
紹介された少年は隠し子ではなく、物語の主人公。
夫のことはどうでもいいが、ユーリが歩むことになる茨の道を考えれば、見捨てることなんてできない。
フリーデはユーリが成人するまでは彼を育てるために婚姻を継続するが、成人したあかつきには離婚を認めるよう迫り、認めさせることに成功する。
ユーリの悲劇的な未来を、原作知識回避しつつ、離婚後の明るい未来のため、フリーデは邁進する。
婚姻初日、「好きになることはない」と宣言された公爵家の姫は、英雄騎士の夫を翻弄する~夫は家庭内で私を見つめていますが~
扇 レンナ
恋愛
公爵令嬢のローゼリーンは1年前の戦にて、英雄となった騎士バーグフリートの元に嫁ぐこととなる。それは、彼が褒賞としてローゼリーンを望んだからだ。
公爵令嬢である以上に国王の姪っ子という立場を持つローゼリーンは、母譲りの美貌から『宝石姫』と呼ばれている。
はっきりと言って、全く釣り合わない結婚だ。それでも、王家の血を引く者として、ローゼリーンはバーグフリートの元に嫁ぐことに。
しかし、婚姻初日。晩餐の際に彼が告げたのは、予想もしていない言葉だった。
拗らせストーカータイプの英雄騎士(26)×『宝石姫』と名高い公爵令嬢(21)のすれ違いラブコメ。
▼掲載先→アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ
記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました
冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。
家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。
過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。
関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。
記憶と共に隠された真実とは———
※小説家になろうでも投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる