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162 異世界転生ってこういうのでしたっけ(1)
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エマは、一人じっと、並べられたグッズを見た。
丁寧にベッドの上に並べたジークのグッズ。
中でも、抱えるのにちょうどいい大きさのダイカットクッションは、お気に入りだったものと同じものだ。
標準の濃い緑のマントを羽織って、座っているジークのイラスト。
ベッドの上で、ジークのグッズに囲まれる。
おもむろに、ジークのダイカットクッションを抱える。
そうだった。
こんな感じだった。
落ち着く。
クッションを、ぎゅっと抱きしめた。
なんて落ち着くんだろう。
そのまま、前のめりにベッドへ突っ伏した。
手探りでスマホを手にして、電源を入れる。
『メモアーレン』のオープニングが流れる。
クッションを抱きしめたまま、ベッドに横になる。
目の前にも、頭の上にも、ジークのグッズ。
それだけで、なんでこんなにも心がふわふわしてしまうんだろう。
「ふふっ」
そのまま、スマホに目をやった。
オープニング。
オープニングの次は、攻略キャラ選択。
その後は、主人公のキャラメイク。
「…………」
オープニングが目に入ると、心臓が、きゅっとした。
スタートをタップする。
選択できるキャラクターは3人。
王子に、パツパツ騎士団長に、……ジーク。
ジークルート。
念願の、ジークのルート。
けど、気持ちは複雑だ。
このゲームのヒロインはアステールだ。
このゲームは、名前が変えられる。
外見の変更もできる。
けど。
動画やイベントスチルで出てくるのは、やっぱりアステールだ。
やっぱりヒロインはアステールなんだ。
そうなると、このゲームをやることで、ジークと恋に落ちるのはアステールだ。
デートするのも、愛を囁かれるのも、私じゃない。
ジークがヴァルだってことは……つまり……。
それも……アステールっていったら…………。
王子ルートによれば、ジークの初恋の人じゃないか…………。
「………………」
ジークのイベントスチルは見たい。
けど。
けど。
見たくない。
ため息をついて、ジークのクッションを潰す勢いで抱きしめる。
そのまま、眠るように目を閉じた。
「う……うぅぅ…………」
コンコン。
突然、エマの部屋の扉が叩かれた。
「はーい」
そちらを見ずに、返事をする。
きっとチュチュだろう。
さっきの話だろうか。それとも、もう夕食の時間だろうか。
ガチャ。
扉が開く音が聞こえた。
「…………」
「…………?」
なんの声も出さないので、仕方なく顔を上げる。
「どうし……」
エマは、目を疑った。
そこに立っていたのは、ヴァルだった。
気まずそうに目を逸らされる。
「…………夕食」
エマが自分の手元を見ると、そこにはまぎれもなくジークのダイカットクッションを抱きしめる自分の手があった。
周りには、所狭しとジークグッズが並べられている。
「あ…………。あの……これはその……違うの」
『違うの』と言ってみたはいいけれど、何も違わない。
カチャ、とヴァルは目を逸らしたまま、扉を閉めて行ってしまった。
「あ……あ…………ああああああああああ」
顔を布団に埋め、エマは小さな悲鳴をあげた。
◇◇◇◇◇
推しのグッズに囲まれている所を本人に見られる。
推しのいる世界に行ったからにはこんなことももちろんあるでしょ!?
……異世界転生ってこういうのでしたっけ。
丁寧にベッドの上に並べたジークのグッズ。
中でも、抱えるのにちょうどいい大きさのダイカットクッションは、お気に入りだったものと同じものだ。
標準の濃い緑のマントを羽織って、座っているジークのイラスト。
ベッドの上で、ジークのグッズに囲まれる。
おもむろに、ジークのダイカットクッションを抱える。
そうだった。
こんな感じだった。
落ち着く。
クッションを、ぎゅっと抱きしめた。
なんて落ち着くんだろう。
そのまま、前のめりにベッドへ突っ伏した。
手探りでスマホを手にして、電源を入れる。
『メモアーレン』のオープニングが流れる。
クッションを抱きしめたまま、ベッドに横になる。
目の前にも、頭の上にも、ジークのグッズ。
それだけで、なんでこんなにも心がふわふわしてしまうんだろう。
「ふふっ」
そのまま、スマホに目をやった。
オープニング。
オープニングの次は、攻略キャラ選択。
その後は、主人公のキャラメイク。
「…………」
オープニングが目に入ると、心臓が、きゅっとした。
スタートをタップする。
選択できるキャラクターは3人。
王子に、パツパツ騎士団長に、……ジーク。
ジークルート。
念願の、ジークのルート。
けど、気持ちは複雑だ。
このゲームのヒロインはアステールだ。
このゲームは、名前が変えられる。
外見の変更もできる。
けど。
動画やイベントスチルで出てくるのは、やっぱりアステールだ。
やっぱりヒロインはアステールなんだ。
そうなると、このゲームをやることで、ジークと恋に落ちるのはアステールだ。
デートするのも、愛を囁かれるのも、私じゃない。
ジークがヴァルだってことは……つまり……。
それも……アステールっていったら…………。
王子ルートによれば、ジークの初恋の人じゃないか…………。
「………………」
ジークのイベントスチルは見たい。
けど。
けど。
見たくない。
ため息をついて、ジークのクッションを潰す勢いで抱きしめる。
そのまま、眠るように目を閉じた。
「う……うぅぅ…………」
コンコン。
突然、エマの部屋の扉が叩かれた。
「はーい」
そちらを見ずに、返事をする。
きっとチュチュだろう。
さっきの話だろうか。それとも、もう夕食の時間だろうか。
ガチャ。
扉が開く音が聞こえた。
「…………」
「…………?」
なんの声も出さないので、仕方なく顔を上げる。
「どうし……」
エマは、目を疑った。
そこに立っていたのは、ヴァルだった。
気まずそうに目を逸らされる。
「…………夕食」
エマが自分の手元を見ると、そこにはまぎれもなくジークのダイカットクッションを抱きしめる自分の手があった。
周りには、所狭しとジークグッズが並べられている。
「あ…………。あの……これはその……違うの」
『違うの』と言ってみたはいいけれど、何も違わない。
カチャ、とヴァルは目を逸らしたまま、扉を閉めて行ってしまった。
「あ……あ…………ああああああああああ」
顔を布団に埋め、エマは小さな悲鳴をあげた。
◇◇◇◇◇
推しのグッズに囲まれている所を本人に見られる。
推しのいる世界に行ったからにはこんなことももちろんあるでしょ!?
……異世界転生ってこういうのでしたっけ。
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