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151 チュチュがゲームをやってみた
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その日の夜。
ベッドに寄りかかり座ると、チュチュは、オープニングを食い入るように見た後、スタートをタップした。
確かに、そこにイラストで登場する5人は、ほとんど見たことがある人だった。
若い頃のパパ。
いつの日か言葉を交わしたことがある国王陛下。
昔の姿のヴァル。
そして、子供みたいな姿の先生。
……この、眼鏡の人は知らないな。
「うわぁ……」
今は、3人しか選べないらしい。
パパ、国王陛下、そしてヴァルのシナリオが途中まで。
「とりあえずここはぁ~~~~」
指でピッピッピ、と3人を指差していく。
この、国王陛下の隣に立っているのがヒロイン、なのかな。
心なしか、見たことがある顔な気がする。
「うん???」
この人、もしかして、王妃様???
王妃様がヒロインなの?
パパが相手の時はどうなるの?
「う~~~~~~ん」
正直、自分の父親に口説かれてもそれほど嬉しくない。
そんなわけで、国王陛下のシナリオを遊んでみることにする。
改めて、オープニングが流れた。
最初に流れたオープニングと同じものだ。
「ふふふふふふ」
それにしても、これがパパでこれがヴァルでこれが先生だなんて。
「何これ何これー!」
画面の中で、でかいヴァルの下から、小さいシエロが顔を覗き込んだ。
『これが、噂の炎使い?…………ふぅん』
いつもと背の高さが逆!
「楽しーーーーい!」
ベッドに寝転がって、足をバタバタさせる。
それから、数時間後。
ベッドの上で、突っ伏しているチュチュがいた。
「…………」
窓の外を、見る。うっすらと、明け方の匂いがする。
画面を見た。
イベントスチルが、表示されたまま放ってある画面。
「…………」
ニヤけてしまいそうな唇を噛みしめる。
そしてまた、ベッドの布団に顔を押し付けた。
ルームウェアの胸の辺りを握りしめる。
また、画面を見る。
特定の人が登場しただけで、こんな気持ちになるなんて。
深く深く、深呼吸する。
ちょっと予想外の顔を見ただけだ。
ちょっと、知らなかった顔を知ってしまっただけ。
けど。
画面から目が離せない。
「ふっ……ふふふふふふふふふ」
顔が緩んでしまう。
ああ、こんな気持ちをパパが知ったらなんて言うだろう。
パパはきっとこの人を好きじゃないから、こんなふうに嬉しくなってしまう気持ちを持ってしまっただけで大激怒かもしれない。
「確かに、恋愛相手としては……甘くないなぁ」
ベッドの上の布団をかき集めて抱きついた。
大丈夫。これはそういうゲームで、この人もそういう目的でデザインされたキャラクターだから、こんな気分になってしまうだけ。
本当に好きになったわけじゃない。
「もう寝なきゃ」
寝転がったまま画面に目をやる。
チュチュは困ったような顔で、潤んだ瞳で、その画面を見つめた。
◇◇◇◇◇
やってみたシリーズ3人目。
チュチュが気になりそうな人なんて1人しかいないわけですが。あえて勿体ぶる感じでいきたいと思います!
ベッドに寄りかかり座ると、チュチュは、オープニングを食い入るように見た後、スタートをタップした。
確かに、そこにイラストで登場する5人は、ほとんど見たことがある人だった。
若い頃のパパ。
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そして、子供みたいな姿の先生。
……この、眼鏡の人は知らないな。
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今は、3人しか選べないらしい。
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最初に流れたオープニングと同じものだ。
「ふふふふふふ」
それにしても、これがパパでこれがヴァルでこれが先生だなんて。
「何これ何これー!」
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『これが、噂の炎使い?…………ふぅん』
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「楽しーーーーい!」
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それから、数時間後。
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「…………」
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画面を見た。
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「…………」
ニヤけてしまいそうな唇を噛みしめる。
そしてまた、ベッドの布団に顔を押し付けた。
ルームウェアの胸の辺りを握りしめる。
また、画面を見る。
特定の人が登場しただけで、こんな気持ちになるなんて。
深く深く、深呼吸する。
ちょっと予想外の顔を見ただけだ。
ちょっと、知らなかった顔を知ってしまっただけ。
けど。
画面から目が離せない。
「ふっ……ふふふふふふふふふ」
顔が緩んでしまう。
ああ、こんな気持ちをパパが知ったらなんて言うだろう。
パパはきっとこの人を好きじゃないから、こんなふうに嬉しくなってしまう気持ちを持ってしまっただけで大激怒かもしれない。
「確かに、恋愛相手としては……甘くないなぁ」
ベッドの上の布団をかき集めて抱きついた。
大丈夫。これはそういうゲームで、この人もそういう目的でデザインされたキャラクターだから、こんな気分になってしまうだけ。
本当に好きになったわけじゃない。
「もう寝なきゃ」
寝転がったまま画面に目をやる。
チュチュは困ったような顔で、潤んだ瞳で、その画面を見つめた。
◇◇◇◇◇
やってみたシリーズ3人目。
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