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133 メイクリハ

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 それからすぐに脚本は完成し、練習が始まった。

 エマとチュチュを中心に、演技の練習をしていった。
 監督はもちろんリナリだ。
 ヴァルは劇には出ないけれど、裏方全般を請け負ってくれた。日々、町に出ては、衣装を借りたり、大道具を準備したりと、忙しくしている。

「今日はメイクリハをやります!」
 その日の午後、元気よく声を出したのはリナリだった。
「エマと、チュチュと、先生!」

 そう。
 身長で役を決めたら、乙女の母はシエロだろうということになった。
「やっぱりやるんだね……」
 鏡の前で、シエロがため息を吐く。
 リナリがどこからか持ってきた、大きなボックス入りのメイク道具が並べられる。
「じゃあ、いきますか」
 一番ノリノリなのはもしかしたらチュチュかもしれなかった。
 チュチュが不敵な笑みで、クリームを取り出すと、シエロの顎をクイっと持ち、クリームを塗っていく。

 正直、……あの美人なシエロくんが、やりたい放題されているのは、ちょっと見ていて心臓に来るものがある……。
 じっと見てしまう……。

 元々、そこらの女性なんて目じゃないほど。
 目元にメイクを施すと、もうどこかの女王様としか言えない誰かだった。
 金色の髪が揺らぐ。

「完……成…………」

 チュチュが、やり切ったという顔で、シエロから離れた。

「…………」

 そこにいた女子三人が、言葉を失った。

 次に鏡の前に座らされたチュチュは、もう半泣き状態だ。
「先生が美人すぎて、同じ人間として並ぶのやだぁ~」
 チュチュみたいな美少女を半泣き状態にしてしまうシエロくんの美貌……。

 今度は、エマが、ブラシを構え、チュチュにメイクを施していく。
 髪には丁寧に三つ編みを施し、唇に頬にとふんわりとした色を乗せる。
「完成!」

 ヘアメイクを終えたチュチュを、シエロとリナリに見せる。
 チュチュは、いかにも乙女といった風貌になった。
 編みあげた髪。
 ナチュラルめの清純派乙女メイク。

「お~~~」
 と、リナリが声を上げる。
 シエロも、これ以上ない優しい瞳でチュチュを見ていたけれど。チュチュは、シエロと目が合った途端、睨みつけ、頬を膨らませた。
「どうやったってあんなのと並びたくない」とかなんとかブツブツ言っている。

 苦笑をしながら、エマが鏡の前に座った。
「男役。男役と言っても、それほど男性メイクにする必要はないと思うんだよね。精霊だし」
 なんて言いながら、チュチュが威勢よくエマにメイクを施していく。
 結局、一つに纏めた髪と、ナチュラルメイクで収まった。

 作業をしているであろう実習室に、お披露目しにいく。
 実習室には、ヴァルとメンテが二人で小道具の準備をしていた。

 二人は振り向き、チュチュとエマを見て、「いいな」と笑みを見せたところで、後ろにいたシエロの顔を見て固まった。
 ヴァルとメンテの戦慄した顔と、シエロのただの困り顔なのになぜか絵になる姿は、きっとなかなか忘れることができないだろう。



◇◇◇◇◇



チュチュもエマもかわいいんですよ、もちろん。シエロくんが凌駕しているだけで。
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