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131 配役決め
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「精霊と人間の恋物語なんだけど、脚本を書く前にメインの二人の配役だけ決めちゃっていいかな?」
ということで、まず主役の二人を決めることになった。
「男女で恋愛するんでしょ?ヴァルとエマでいいんじゃない?」
「は?」
ヴァルが顔を上げると、チュチュのニヤニヤしている顔が見えた。
「俺はやらないよ。裏方ならやる」
「え~~~~~~」
チュチュが叫ぶ。
「エマと『愛してる~』とか言い合えちゃうんだよ!?がばぁ!で、ちゅー!」
「…………」
ヴァルが、眉を寄せる。
そんなこと言われたら、余計にやるわけにはいかない。
注目を浴びる舞台の上でなんてことさせようとしてんだ。
「俺、今から仕事だから」
ヴァルは立ち上がり、教室から出ていく。
「いってらっしゃ~い」
と、シエロが手を振ると、みんなも「いってらっしゃい」と口々に言う。
扉をくぐる際、後ろから、
「じゃあ、エマの相手は先生?メンテの方がいいかなぁ」
と、声が上がるのを聞いた。
……エマは、決定なんだろうか。
扉を閉め、ため息を一つ。
芝居ごときで、気にしすぎなのかもしれないが。
そんな芝居ごときで、そこまですることも、ないんじゃないか。
用事を済ませ、学園に帰ってくると、昼をとっくに過ぎた時間だった。
昼食を食べるため、食堂に入る。
そこにはまだ学園のメンバーが全員居た。
「ヴァル、おかえり」
エマがにっこりと笑顔を向けてくれる。
みんなは昼食を食べ終えたところらしく、食堂から出ていくところだった。
チュチュがはしゃいでいる。
「ヴァールー!エマが精霊役になったよ!今からイメージ固めるのに、もうちょっと話し合いするから、実習室に行くんだ。ご飯食べたら来て!」
「ふぅん……」
結局エマはやるのか。
食堂で、無言で一人、弁当を食べる。
『がばぁ!で、ちゅー!』
チュチュの言葉が頭をよぎる。
「…………」
誰と。
「ハァ……」
ため息を吐くと、弁当をかきこんだ。
なんでこんな気分にならないといけないんだ。
早足で、実習室に向かう。
出来る限り早く階段を上がった。
実習室は、ガラス張りになっている。
中で、エマが中心に立っているのが見えた。
扉の前。
中から声が聞こえる。
「身長差もいいんじゃないかな」
シエロの声だ。
バン!
扉を開けると、部屋の中心で、人間が二人、抱き合っているのが見えた。
「…………」
エマと、チュチュだった。
「え……?」
扉の近くに座っていたメンテの隣に座る。
「先生、『流石に教師がメインキャラやるわけにいかない』って言ってさ。結局、メンバーの中で一番背の高いエマが精霊をやることになったんだ。乙女役がチュチュで」
そこまで聞いて、やっと理解する。
……精霊の男と人間の乙女の物語なのだ。
それで、エマが男役なのか。
なんだ、これなら。
向き直ると、そこに、エマの腕の中でドヤ顔をしながらこっちを見ているチュチュの姿があった。
……不愉快な気分ではあるけれど、俺がやるよりはまだマシというものだ。
キャッキャと抱き合う二人に、それをキラキラした目で見るリナリ。
ヴァルはまた一つため息を吐いて、その光景を眺めた。
◇◇◇◇◇
というわけで、町のお祭りエピソード開始です!
しばらくほのぼのをお楽しみください!
ということで、まず主役の二人を決めることになった。
「男女で恋愛するんでしょ?ヴァルとエマでいいんじゃない?」
「は?」
ヴァルが顔を上げると、チュチュのニヤニヤしている顔が見えた。
「俺はやらないよ。裏方ならやる」
「え~~~~~~」
チュチュが叫ぶ。
「エマと『愛してる~』とか言い合えちゃうんだよ!?がばぁ!で、ちゅー!」
「…………」
ヴァルが、眉を寄せる。
そんなこと言われたら、余計にやるわけにはいかない。
注目を浴びる舞台の上でなんてことさせようとしてんだ。
「俺、今から仕事だから」
ヴァルは立ち上がり、教室から出ていく。
「いってらっしゃ~い」
と、シエロが手を振ると、みんなも「いってらっしゃい」と口々に言う。
扉をくぐる際、後ろから、
「じゃあ、エマの相手は先生?メンテの方がいいかなぁ」
と、声が上がるのを聞いた。
……エマは、決定なんだろうか。
扉を閉め、ため息を一つ。
芝居ごときで、気にしすぎなのかもしれないが。
そんな芝居ごときで、そこまですることも、ないんじゃないか。
用事を済ませ、学園に帰ってくると、昼をとっくに過ぎた時間だった。
昼食を食べるため、食堂に入る。
そこにはまだ学園のメンバーが全員居た。
「ヴァル、おかえり」
エマがにっこりと笑顔を向けてくれる。
みんなは昼食を食べ終えたところらしく、食堂から出ていくところだった。
チュチュがはしゃいでいる。
「ヴァールー!エマが精霊役になったよ!今からイメージ固めるのに、もうちょっと話し合いするから、実習室に行くんだ。ご飯食べたら来て!」
「ふぅん……」
結局エマはやるのか。
食堂で、無言で一人、弁当を食べる。
『がばぁ!で、ちゅー!』
チュチュの言葉が頭をよぎる。
「…………」
誰と。
「ハァ……」
ため息を吐くと、弁当をかきこんだ。
なんでこんな気分にならないといけないんだ。
早足で、実習室に向かう。
出来る限り早く階段を上がった。
実習室は、ガラス張りになっている。
中で、エマが中心に立っているのが見えた。
扉の前。
中から声が聞こえる。
「身長差もいいんじゃないかな」
シエロの声だ。
バン!
扉を開けると、部屋の中心で、人間が二人、抱き合っているのが見えた。
「…………」
エマと、チュチュだった。
「え……?」
扉の近くに座っていたメンテの隣に座る。
「先生、『流石に教師がメインキャラやるわけにいかない』って言ってさ。結局、メンバーの中で一番背の高いエマが精霊をやることになったんだ。乙女役がチュチュで」
そこまで聞いて、やっと理解する。
……精霊の男と人間の乙女の物語なのだ。
それで、エマが男役なのか。
なんだ、これなら。
向き直ると、そこに、エマの腕の中でドヤ顔をしながらこっちを見ているチュチュの姿があった。
……不愉快な気分ではあるけれど、俺がやるよりはまだマシというものだ。
キャッキャと抱き合う二人に、それをキラキラした目で見るリナリ。
ヴァルはまた一つため息を吐いて、その光景を眺めた。
◇◇◇◇◇
というわけで、町のお祭りエピソード開始です!
しばらくほのぼのをお楽しみください!
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