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109 夜会にて(1)

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 翌日は、パーティーの準備でてんてこ舞いだった。
 シュバルツ家のメイド達に手伝ってもらい、朝からの風呂や髪の手入れから始まった。
「エマ様、寝不足はお肌の敵ですよ!」
 とか、
「エマ様、髪はアップでいいですね。ドレスに合わせて少し色気を出した方がいいかしら」
 とか、そんなお説教や相談も交じる。
 食事もそこそこに、準備に専念する。メイクまで終わると、すっかり午後だった。
 本格的なパーティーの準備ってこんなにするの……?
 肌も滑らかで髪もこの上なくいい匂いがする。……つけてもらったオイルは何なんだろう……。

 ドレスを着込み、悩みながらもアクセサリーを着けてもらうと、本当にどこかのプリンセスみたいだった。映画で見たシンデレラみたいだ。
 鏡の向こうの自分に感動する。
 ドレスは、以前試着したドレスで、薄紫色のちょっと大人っぽいドレスだ。

「あ、でも、これ……やっぱり、肩……とか、出過ぎじゃないですか?」
「あら、」
 にっこりとしたメイド達が、口々に言う。
「殿方をメロメロにするなら、これくらいはしないと」
「メロメロにする相手なんて……」
「ヴァル様ですよ」
「あ……えと…………」
「あらあら、お顔が」
「………………」
「お綺麗ですよ」

 準備が完了し、椅子に座らされると、次第に心臓がバクバクと跳ねた。止められない。

 これ……、ヴァルが見るんだよね。
 どう思われるだろう。
 やっぱり肩も胸元も出過ぎだし。
 何も、言われないならいいけど、もし、もし褒められでもしたら……私は……、どうしよう……。

 うわあああああああ。
 心臓口から出そう!!

 一頻りそわそわする。
 すると、扉が、コンコン、と音を立てた。
 扉を、メイドに開けてもらう。

 そこに立っていたのは、ヴァルだった。

 き、きたああああああああああ。

 ああああああああああああ………………。

 当たり前なんだけど、ヴァルも正装だった。
 珍しく、髪もちゃんとセットしてある。
 キラキラしたブローチが、眩しい。

 か………………っこい………………。

 これ……直視ヤバい…………。

「よぅ」
 目の前に立ったヴァルは、静かに、それだけを言った。

「いいね」
 照れ隠しに、へへっと笑ってみせる。

 ヴァルが両手を差し出したので、その上に手を乗せる。
 立ち上がるのに、手を貸してくれたのかと、思ったから。

 けど。

 逆に近付いて来たかと思うと、耳元で、
「似合ってる」
 と一言囁いた。

 声…………が……。

 ヴァルの息が、耳にかかる。
 息が、止まりそうになる。

「行こう」
 そのまま手を引かれ立ち上がったけれど、フリーズしてしまっていて、何を言われているのかわからなくなり、ぼんやりしてしまった。
 ヴァルの顔を、見上げる。ヴァルが、優しく笑った。
「ほら、こっち」
 ヴァルがエマの手を、自分の腕に絡ませた。
 そっか……。腕を組むんだ。

 うわぁ……。

 本格的にパーティーのパートナーといった感じ。
 これ、いいな。
 えへへ、と笑ってみせる。
「うん、行こう、ヴァル」
 エマのドレスが、ふわりと揺れた。



◇◇◇◇◇



とうとうパーティー開始です!
しばらくは二人のラブラブっぷりをお楽しみください!
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