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103 とてもよく似た人(2)

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 それから応接室に通された。
 庭に繋がる大きな窓のある部屋で、窓の外にはやはり、多種多様なバラが見えた。
 眩しい光の中、エーデルがソファへ促してくれる。
 エマ、シエロ、ヴァル、エーデルの4人で、しばらくその部屋で過ごした。

 この人は……ジークじゃないんだ。
 あの、7歳だった小さなエーデルくんなんだ。

 公式設定資料集に小さく出ていたエーデルくんを思い描く。
 兄であるジークによく懐いていて、ちょっとだけ気が弱くて。
 確かに、目の前の人は、あのエーデルくんだ。

 けど。

 ふと髪が揺れる度、視線が動く度、いちいちビクッとしてしまう。

 心臓が、苦しくなる。

「学園はどうですか。僕はまだ行ったことがなくて。これでも魔術はかじってるんですけど」
 と笑うエーデルから、目が離せない。

 エーデルが、エマに向かってふわっと笑顔を見せる。
 そして目が離せないほど似ているからこそ、妙な違和感を覚えてしまっていた。

 エーデルは、ジークと顔が似過ぎていて。けど雰囲気やいろいろな細かいところが違い過ぎていて。
 どうしても、“違う”と思ってしまう。

 別人なのは知ってるのに。

 考えてしまう。

 ジークはこんなにサラサラの髪じゃない。
 こんなに柔らかく笑わない。

 もっとツンツンしてて。
 もっとからかうような顔で笑って。
 一人立つ姿が凛々しくて。

 こんなに優しい雰囲気じゃない。

 エマはもう、何を見て何を聞けばいいのかわからなくなり、空笑いになってしまっていた。
 機械的に、紅茶を口に運ぶ。
 口に入れたマカロンも、どんな味だか、不鮮明だ。

「それでは、ごゆっくり。あとで、メイドに部屋へ案内させましょう」
 にっこりと笑って、エーデルが部屋を出て行った。
 ……こんな気持ち、失礼すぎるのはわかっている。
 偽者なわけじゃない。あれはエーデルだ。

 固まったまま、泣きそうになる。

 ふいっと、ヴァルが、顔を覗いてきた。
「…………」
 無言のまま、じっと、複雑な顔をしている。
 気遣う気持ちが、現れた瞳。

 ヴァルだって、ジークの弟なのに。
 確かに似ている。顔だって。
 けど、こんな妙な違和感に襲われることはない。……ずっと一緒にいるからだろうか。

 それに、エーデルはヴァルのお兄さんでもある。
 いくら私がジークを好きなのを知っていても、偽者扱いしてるなんて、弟としては複雑だったりするかも。

 何か、言わないと。

 えーと……。

「お、お兄さん、かっこいいね」

「………………は?」
 ヴァルの呆れるような、ちょっと嫌そうな顔が見えた。

 …………私、何言ってるんだろう!!
 ジークとそっくりだからって、顔ばっかり見ちゃってたし、顔の感想しか出てこないなんて……。

 隣を見れば、シエロが困ったように笑って、二人を眺めていた。



◇◇◇◇◇



身長はそれぞれ、ジークが180cm、シエロくんが172cm、ヴァルが169cm、エマちゃんが156cmくらいの設定です。
ヴァルは現在成長中。でも、180cmまではいかないでしょうね。
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