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73 何者なんだ?
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二人が学園に着くと、学園内はとても騒がしかった。
まだ夕食を作っている最中で、メンテとチュチュがキッチンに入っていた。
「お帰り!」
チュチュが叫ぶ。
「ただいま」
エマが食卓にお土産にもらった籠を置いた。
「エマ!たいへん!今日突然、学園長様が来てね。今日からしばらく大広間でご飯だから!学園長様は今、自室にいるの。大広間の方を手伝ってあげてくれない?」
ヴァルはため息をつきながら、袖をまくり、キッチンへ入っていった。
エマは急いで大広間へ行く。
大広間では、シエロとリナリが大きなテーブルクロスをかけたところだった。
「手伝います!」
エマが叫びながら手を貸す。
リナリが花瓶を準備し、シエロとエマはテーブルセッティングを始める。
「エマ、お疲れ様。帰ってきてすぐで申し訳ないね」
「いえ、全然疲れてもないので!」
みんなで急いで料理を並べ、シエロが学園長を呼びに行った。
なんとか、全員が席に着く。
「仕事で来ただけだが、これほど手厚く歓迎してもらって。ありがとう、みんな」
学園長が泣きそうな顔で言う。
ヴァルがそれを見て白けた顔をしたし、それを見たシエロが苦笑した。
夕食後。
学園長はまた自室へ戻ったらしい。
食堂が落ち着いた頃、ヴァルは一人、食堂を出て行った。
コンコン。
学園長の扉をノックする。
扉が開かれると、そこにはワイシャツにスラックスという仕事スタイルの大魔術師が立っていた。
「やあ、愛しの弟子よ」
招き入れられ、無言で部屋に入る。
大魔術師の部屋。
物がひたすらに多い。本も多く、本棚はあるものの入りきらずに床に積み重なっている。
大きなデスクで何か作業をしていたらしく、マグカップからコーヒーの匂いがした。
学園長はデスクの椅子に座ると、ヴァルをそばの大きなクッションに座るよう促した。
「じいさん」
大きなクッションにあぐらで座ると、学園長の顔も見ずに、ヴァルが口を開いた。
昔とは違うその呼び名に、学園長が鼻から息を吐く。
「エマはじいさんが連れてきただろ」
「そうじゃの」
その質問を予想していたのか、学園長は大人しく返事をした。
「あいつ、何者なんだ?」
「ふむ……。何者かと問われれば、クレスト子爵のご令嬢じゃ」
長い髭を指に巻き付けながら、学園長が答える。
ヴァルは、探るように学園長の顔を見た。
「どうして……母さんの町に伝わる歌を知ってる?」
「ふむ……」
学園長は、ヴァルの視線を真っ直ぐに受け止めた。
「ワシが教えたんだ」
「……は?」
「確かにそうだ。ワシが教えた」
眉を寄せ複雑な表情を作るヴァルに、学園長は優しい目を向ける。
「疑うような娘じゃない。見た目通りだ。ワシの友人じゃよ」
じっと、学園長の目を見る。
ヴァルは、ひとつため息を吐いた。
「師匠の言うことは信じるよ」
束の間、思案するような表情を見せ、ヴァルは言った。
「あいつ、変なことに巻き込んでないだろうな」
すると、学園長はあからさまに遠い過去を見るような瞳をした。
「こっちか……」
ヴァルが呆れたように呟く。
「あの子を大事にするのは、お前の役目じゃろ」
茶目っ気を装った目の前の老人に、ヴァルはまた一つため息を吐いた。
◇◇◇◇◇
大魔術師は、自分の部屋でも、仕事の時はスーツスタイルで決めちゃうタイプです。コーヒーはブラック。
まだ夕食を作っている最中で、メンテとチュチュがキッチンに入っていた。
「お帰り!」
チュチュが叫ぶ。
「ただいま」
エマが食卓にお土産にもらった籠を置いた。
「エマ!たいへん!今日突然、学園長様が来てね。今日からしばらく大広間でご飯だから!学園長様は今、自室にいるの。大広間の方を手伝ってあげてくれない?」
ヴァルはため息をつきながら、袖をまくり、キッチンへ入っていった。
エマは急いで大広間へ行く。
大広間では、シエロとリナリが大きなテーブルクロスをかけたところだった。
「手伝います!」
エマが叫びながら手を貸す。
リナリが花瓶を準備し、シエロとエマはテーブルセッティングを始める。
「エマ、お疲れ様。帰ってきてすぐで申し訳ないね」
「いえ、全然疲れてもないので!」
みんなで急いで料理を並べ、シエロが学園長を呼びに行った。
なんとか、全員が席に着く。
「仕事で来ただけだが、これほど手厚く歓迎してもらって。ありがとう、みんな」
学園長が泣きそうな顔で言う。
ヴァルがそれを見て白けた顔をしたし、それを見たシエロが苦笑した。
夕食後。
学園長はまた自室へ戻ったらしい。
食堂が落ち着いた頃、ヴァルは一人、食堂を出て行った。
コンコン。
学園長の扉をノックする。
扉が開かれると、そこにはワイシャツにスラックスという仕事スタイルの大魔術師が立っていた。
「やあ、愛しの弟子よ」
招き入れられ、無言で部屋に入る。
大魔術師の部屋。
物がひたすらに多い。本も多く、本棚はあるものの入りきらずに床に積み重なっている。
大きなデスクで何か作業をしていたらしく、マグカップからコーヒーの匂いがした。
学園長はデスクの椅子に座ると、ヴァルをそばの大きなクッションに座るよう促した。
「じいさん」
大きなクッションにあぐらで座ると、学園長の顔も見ずに、ヴァルが口を開いた。
昔とは違うその呼び名に、学園長が鼻から息を吐く。
「エマはじいさんが連れてきただろ」
「そうじゃの」
その質問を予想していたのか、学園長は大人しく返事をした。
「あいつ、何者なんだ?」
「ふむ……。何者かと問われれば、クレスト子爵のご令嬢じゃ」
長い髭を指に巻き付けながら、学園長が答える。
ヴァルは、探るように学園長の顔を見た。
「どうして……母さんの町に伝わる歌を知ってる?」
「ふむ……」
学園長は、ヴァルの視線を真っ直ぐに受け止めた。
「ワシが教えたんだ」
「……は?」
「確かにそうだ。ワシが教えた」
眉を寄せ複雑な表情を作るヴァルに、学園長は優しい目を向ける。
「疑うような娘じゃない。見た目通りだ。ワシの友人じゃよ」
じっと、学園長の目を見る。
ヴァルは、ひとつため息を吐いた。
「師匠の言うことは信じるよ」
束の間、思案するような表情を見せ、ヴァルは言った。
「あいつ、変なことに巻き込んでないだろうな」
すると、学園長はあからさまに遠い過去を見るような瞳をした。
「こっちか……」
ヴァルが呆れたように呟く。
「あの子を大事にするのは、お前の役目じゃろ」
茶目っ気を装った目の前の老人に、ヴァルはまた一つため息を吐いた。
◇◇◇◇◇
大魔術師は、自分の部屋でも、仕事の時はスーツスタイルで決めちゃうタイプです。コーヒーはブラック。
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