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59 実家からの手紙(1)
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夕食の時間だった。
「はい注目~」
シエロがそう言った瞬間、ヴァルが、「俺ちょっとその日は用事あって」なんてあさっての方を向いて言った。
「まだ何も言ってないよ、ヴァルくん」
シエロがヴァルに微笑む。まるでハートを飛ばすかのような笑顔。
「実は、またパーティーの依頼が来ていてね」
ヴァルが、エマ特製のフルーツゼリーをスプーンでつつく。
「それなら双子だろ?」
最初にパーティーに行って以来、少なからず同じような依頼が届いていた。
その度に行くことになったのは双子で、ヴァルとエマは最初の一度以来、共にダンスを踊ることはなかった。
「それが、」
とシエロが口を開く。
「今回は、ヴァルとエマに行って欲しいんだ」
「…………」
ヴァルが眉を寄せる。何かを訝しむ目だった。
エマはエマで、ヴァルと2人でいるのは、最近ちょっと気まずいような緊張のような気持ちがあるので複雑だ。
「時期は夏休み中。申し訳ないけど、帰省できる期間は短くなるね」
そう言って、シエロはミルクティーを一口飲むと、一息つく。
「ダンス、練習しておいてもらえるかな。大広間はいつでも使ってくれていいから」
ということだった。
夕食後、ヴァルとシエロが食堂に残った。
ヴァルが食堂を出て行こうと立ち上がり、扉へ歩きかけたところで、シエロがヴァルに声をかけた。
「今度のパーティーの主催なんだけど……」
「いいよ、わかってる」
言いかけたシエロの言葉を、ヴァルが遮った。
ヴァルが、静かに振り返る。
シエロの伏せられた目は、どこか、後ろめたいことがある子供のようだった。
「俺はもう小さな子供じゃないよ」
それから数日後。
エマの家から荷物が届いた。
中身はやはりドレスだった。
一緒に入っていた手紙はやはりマリアからで、今回のドレスは母が選んだこと、夏休みの帰省を楽しみにしていることなどが書いてあった。
チュチュとリナリとエマ、3人でドレスを出してみる。
「この靴きれーい!」
「髪飾りも……きれい……」
ドレスは、数年前に送られてきたドレスよりも濃い薄紫色。エマが広げると、歓声が上がった。
「うっわ!きれい!」
「大人っぽいね」
「う……わぁ……」
確かに、そのドレスは大人っぽく、綺麗だった。
きちんとした、パーティー用のドレス。
それはまるでシンデレラのような。
そして、あまりにも肩と胸元が開いているドレス。
「とりあえず合わせてみないとね」
チュチュが言って、チュチュとリナリ、2人がかりでエマにドレスを着せていった。
リナリは、髪型にもこだわってくれる。
数十分後、出来上がったのは、本当にどこかの宮廷かと思うほど綺麗なエマのドレス姿だった。
「う…………うわぁ……」
デザインこそ可愛い系プリンセスといった感じだけど。
あまりにも肩が出ていて恥ずかしい。
かーっと顔が熱くなるのを感じた。
……今日やることになったダンスの練習で、またヴァルにお披露目しようと思っていたのに……。これは流石に恥ずかしい。
どう見てもこれは母の趣味だ。マリアが選べば、こんなことはなかったのに……。
私まだ15歳なんですけど。
そんな時。
コンコン、と、不幸にも扉を叩く音がした。
この部屋の中にこの2人がいるということは、どうあっても、扉を叩いているのは、ヴァルかメンテかシエロしか、あり得ないのだから。
◇◇◇◇◇
夏休みは2ヶ月ほどあり、帰省も可能です。特にエマやチュチュは、毎年帰るのを楽しみにしています。
「はい注目~」
シエロがそう言った瞬間、ヴァルが、「俺ちょっとその日は用事あって」なんてあさっての方を向いて言った。
「まだ何も言ってないよ、ヴァルくん」
シエロがヴァルに微笑む。まるでハートを飛ばすかのような笑顔。
「実は、またパーティーの依頼が来ていてね」
ヴァルが、エマ特製のフルーツゼリーをスプーンでつつく。
「それなら双子だろ?」
最初にパーティーに行って以来、少なからず同じような依頼が届いていた。
その度に行くことになったのは双子で、ヴァルとエマは最初の一度以来、共にダンスを踊ることはなかった。
「それが、」
とシエロが口を開く。
「今回は、ヴァルとエマに行って欲しいんだ」
「…………」
ヴァルが眉を寄せる。何かを訝しむ目だった。
エマはエマで、ヴァルと2人でいるのは、最近ちょっと気まずいような緊張のような気持ちがあるので複雑だ。
「時期は夏休み中。申し訳ないけど、帰省できる期間は短くなるね」
そう言って、シエロはミルクティーを一口飲むと、一息つく。
「ダンス、練習しておいてもらえるかな。大広間はいつでも使ってくれていいから」
ということだった。
夕食後、ヴァルとシエロが食堂に残った。
ヴァルが食堂を出て行こうと立ち上がり、扉へ歩きかけたところで、シエロがヴァルに声をかけた。
「今度のパーティーの主催なんだけど……」
「いいよ、わかってる」
言いかけたシエロの言葉を、ヴァルが遮った。
ヴァルが、静かに振り返る。
シエロの伏せられた目は、どこか、後ろめたいことがある子供のようだった。
「俺はもう小さな子供じゃないよ」
それから数日後。
エマの家から荷物が届いた。
中身はやはりドレスだった。
一緒に入っていた手紙はやはりマリアからで、今回のドレスは母が選んだこと、夏休みの帰省を楽しみにしていることなどが書いてあった。
チュチュとリナリとエマ、3人でドレスを出してみる。
「この靴きれーい!」
「髪飾りも……きれい……」
ドレスは、数年前に送られてきたドレスよりも濃い薄紫色。エマが広げると、歓声が上がった。
「うっわ!きれい!」
「大人っぽいね」
「う……わぁ……」
確かに、そのドレスは大人っぽく、綺麗だった。
きちんとした、パーティー用のドレス。
それはまるでシンデレラのような。
そして、あまりにも肩と胸元が開いているドレス。
「とりあえず合わせてみないとね」
チュチュが言って、チュチュとリナリ、2人がかりでエマにドレスを着せていった。
リナリは、髪型にもこだわってくれる。
数十分後、出来上がったのは、本当にどこかの宮廷かと思うほど綺麗なエマのドレス姿だった。
「う…………うわぁ……」
デザインこそ可愛い系プリンセスといった感じだけど。
あまりにも肩が出ていて恥ずかしい。
かーっと顔が熱くなるのを感じた。
……今日やることになったダンスの練習で、またヴァルにお披露目しようと思っていたのに……。これは流石に恥ずかしい。
どう見てもこれは母の趣味だ。マリアが選べば、こんなことはなかったのに……。
私まだ15歳なんですけど。
そんな時。
コンコン、と、不幸にも扉を叩く音がした。
この部屋の中にこの2人がいるということは、どうあっても、扉を叩いているのは、ヴァルかメンテかシエロしか、あり得ないのだから。
◇◇◇◇◇
夏休みは2ヶ月ほどあり、帰省も可能です。特にエマやチュチュは、毎年帰るのを楽しみにしています。
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