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48 パーティーにて(1)
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パーティー当日。
「お、覚えた?」
「ああ。主催はタルエド・バークレー。アマンダ・バークレー夫人に、娘がローラ・バークレー」
しれっとヴァルが答える。
ガタガタと馬車が走る。
今日の馬車は箱型の馬車だ。学園に1台だけ置いてある。御者さんは学園長が派遣してくれた人。
エマの隣には正装したヴァル、目の前には正装したシエロが座る。
ヴァルは黒を基調とした色で、金糸で模様が入っている。シエロのほうは、いつもの白いマントのように、触りたくなるような布地の白いジャケットだ。杖はいつも通り持っている。
もちろん、どっちもかっこいい。
……もし、ジークがいたらどんな格好だっただろう。緑かな……。黒かも。ううん、赤も捨てがたい……。
「はぁ……」
緊張と萌えで今日数度目のため息を吐く。
「緊張しなくて大丈夫だよ」
目の前でシエロが首を傾げながらふんわりとした笑顔を見せる。
これが、22歳ショタの威力……。
でも、緊張しないなんて無理だよ!
「……先生のパートナーは?」
なんとなく聞いてみる。
確か、公式設定集の記憶によると、シエロは公爵家の三男なのだけれど、婚約者のような人はいなかったはずだ。
シエロがふふっと笑う。
「今日は妹が来てくれることになってるんだ」
妹?
確かに小さい妹がいたような。設定資料集で6歳だったから、今は16歳か。
馬車が止まると、相変わらず、当たり前のようにヴァルが手を貸してくれた。
今日は、パーティーのパートナーなので、そのまま手を繋いでいく。
……ちょっと照れるじゃん。
「ああ、あの子だよ」
バークレー邸、大広間。
シエロが指し示した方を見ると、やはり金髪碧眼のとても目立つ少女が立っていた。
特に誰かといるわけでも、何かを話しているわけでもない。
ただ、そこに存在しているだけで、惹きつけられてしまう煌びやかさがある。
「ブランカ」
シエロが呼ぶと、その少女がふいっとこちらを向く。
その青い瞳で微笑まれると、清々しい気持ちにさえなる。
「お兄様。お久しぶりです」
「ああ、なかなか家に足を運べなくて済まないね」
ブランカが、ヴァルとエマの方へ目を向けた。
「あら、かわいいカップル」
エマとヴァル、2人して頭を下げる。
「初めまして、エマ・クレストと申します」
「ブランカ・ロサよ。よろしくね」
ふんわりとした笑顔。兄が兄なら妹も妹だ。
思わず照れてしまう。
4人でバークレー夫妻に挨拶に行った。
シエロに紹介され、控え目に「ご招待ありがとうございます」と挨拶をした。
「かわいいカップルさんね」
エマとヴァルを見た夫人は、ちょっと嬉しそうだ。
うぅ……。
今日はそういう評価らしい。
慣れない評価につい赤面する。
「ダンスも楽しみにしてるわね」
周りは大人ばかりだし、隅っこにいてダンスを免れるんじゃないかとちょっと思ってしまったが、子供が2人というのはどうしても目立つようだった。
ダンスタイムが始まると、周りがそわそわしているのが手に取るようにわかった。
「行くか」
差し出される手。
もう、当たり前のように、エマに差し出される手。
自分の手を重ねれば、いつだってとても安心する。
「こうなったらとことん楽しもっか」
あはは、とエマは困ったように笑うと、ヴァルはいつものようにふっと笑った。
◇◇◇◇◇
シエロくんは兄2人と妹1人がいます。この4人の中でもシエロくんとブランカが特にキラキラした雰囲気のようです。
「お、覚えた?」
「ああ。主催はタルエド・バークレー。アマンダ・バークレー夫人に、娘がローラ・バークレー」
しれっとヴァルが答える。
ガタガタと馬車が走る。
今日の馬車は箱型の馬車だ。学園に1台だけ置いてある。御者さんは学園長が派遣してくれた人。
エマの隣には正装したヴァル、目の前には正装したシエロが座る。
ヴァルは黒を基調とした色で、金糸で模様が入っている。シエロのほうは、いつもの白いマントのように、触りたくなるような布地の白いジャケットだ。杖はいつも通り持っている。
もちろん、どっちもかっこいい。
……もし、ジークがいたらどんな格好だっただろう。緑かな……。黒かも。ううん、赤も捨てがたい……。
「はぁ……」
緊張と萌えで今日数度目のため息を吐く。
「緊張しなくて大丈夫だよ」
目の前でシエロが首を傾げながらふんわりとした笑顔を見せる。
これが、22歳ショタの威力……。
でも、緊張しないなんて無理だよ!
「……先生のパートナーは?」
なんとなく聞いてみる。
確か、公式設定集の記憶によると、シエロは公爵家の三男なのだけれど、婚約者のような人はいなかったはずだ。
シエロがふふっと笑う。
「今日は妹が来てくれることになってるんだ」
妹?
確かに小さい妹がいたような。設定資料集で6歳だったから、今は16歳か。
馬車が止まると、相変わらず、当たり前のようにヴァルが手を貸してくれた。
今日は、パーティーのパートナーなので、そのまま手を繋いでいく。
……ちょっと照れるじゃん。
「ああ、あの子だよ」
バークレー邸、大広間。
シエロが指し示した方を見ると、やはり金髪碧眼のとても目立つ少女が立っていた。
特に誰かといるわけでも、何かを話しているわけでもない。
ただ、そこに存在しているだけで、惹きつけられてしまう煌びやかさがある。
「ブランカ」
シエロが呼ぶと、その少女がふいっとこちらを向く。
その青い瞳で微笑まれると、清々しい気持ちにさえなる。
「お兄様。お久しぶりです」
「ああ、なかなか家に足を運べなくて済まないね」
ブランカが、ヴァルとエマの方へ目を向けた。
「あら、かわいいカップル」
エマとヴァル、2人して頭を下げる。
「初めまして、エマ・クレストと申します」
「ブランカ・ロサよ。よろしくね」
ふんわりとした笑顔。兄が兄なら妹も妹だ。
思わず照れてしまう。
4人でバークレー夫妻に挨拶に行った。
シエロに紹介され、控え目に「ご招待ありがとうございます」と挨拶をした。
「かわいいカップルさんね」
エマとヴァルを見た夫人は、ちょっと嬉しそうだ。
うぅ……。
今日はそういう評価らしい。
慣れない評価につい赤面する。
「ダンスも楽しみにしてるわね」
周りは大人ばかりだし、隅っこにいてダンスを免れるんじゃないかとちょっと思ってしまったが、子供が2人というのはどうしても目立つようだった。
ダンスタイムが始まると、周りがそわそわしているのが手に取るようにわかった。
「行くか」
差し出される手。
もう、当たり前のように、エマに差し出される手。
自分の手を重ねれば、いつだってとても安心する。
「こうなったらとことん楽しもっか」
あはは、とエマは困ったように笑うと、ヴァルはいつものようにふっと笑った。
◇◇◇◇◇
シエロくんは兄2人と妹1人がいます。この4人の中でもシエロくんとブランカが特にキラキラした雰囲気のようです。
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