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45 ダンスレッスン(1)
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夕食の後は、ダンスの練習。
冷やかしなのか一緒に練習をするつもりなのか、なぜか全員が大広間に集まっていた。
シエロのそばには、装飾が施された大きな蓄音機が床に置かれている。
シエロがエマとヴァルに向かう。
「君達、ダンスの経験は?」
「私はまったく」
「俺は一応」
「じゃあ……」
と悩んだ末、まずシエロがヴァルと踊って見せることになった。
「僕が女性側やるから、エマはよく見てて。ヴァルは付いてきて思い出すこと」
「はーい」
ワルツの場合、腕を回して組む必要がある。
二人が組んでみせたけれど、さすがに背の高さが違いすぎて、手を繋いだだけで踊ることになった。
「ゆっくり行くよ」
「ああ」
「はい、いち、に、さん、いち、に、さん」
おどおどしたダンスが始まった。
エマはすぐ隣でチュチュと手を繋ぎ、ステップの確認をする。
双子も近くでステップをたどたどしく踏んだ。
「ヴァルはダンスの実践したことないのかな」
なんて言われながら、最終的にヴァルとエマで組んでみることになった。
「こう……?」
「手、逆だろ」
「ん?あ、そっか」
シエロが、頭の上から、「君達、不器用だね」なんて言いながら、形を直してくれる。
なんとか形になったところで、最初のステップを踏む。
「いくぞ」
「うん……」
右足……右足……。
「いっせーの、いち……」
と言ったところで、早速エマはヴァルの足に引っかかった。
「ふきゃっ」
ビタン。
エマは、思いっきり床にダイブした。
「だ、大丈夫かよ」
「あ、うん」
あはは、なんてごまかしてみる。差し出してくれたヴァルの手に掴まって、助け起こされる。
さすがにそれ以上は転ばなかったけれど、あまり優秀とは言えない状況だった。
音楽なしでなんとか動けるようになるまで2日を要した。
残り10日となったその日。
遅くまで付き合ってくれたチュチュが帰ってしまい、大広間の真ん中、二人きりでダンスの格好で立っていた。
「だんだん上手くなってはきてるよね」
「だよな……」
「ふああ~~~」
「今日はもう終わりにするか」
エマを左手でくるんとターンさせて、ヴァルが疲れたように言う。
「そだね……。お茶飲んで帰ろうよ」
「だな」
二人、食堂のテーブルについた。
ヴァルと二人で食堂にいるのは初めてのことだ。正面に座るのも。
目の前には、疲れを取るためのホットミルク。
この食堂には、冷蔵庫があるので、牛乳がいつでも飲み放題なのだ。
それも氷使いのシエロがいるため。
意外と近代的で、食料は豊富。
食堂の時計の針はいつもの就寝時間を示している。
「遅くなったな」
「うん、でもけっこう楽しい」
ヴァルが、ハハッと笑う。
「時間制限がなかったらな」
「明日もがんばろ」
エマはにっこり笑ってみせた。
ホットミルクから立ち上る湯気は、とても温かかった。
◇◇◇◇◇
食卓の席は絶対ではないですが、みんななんとなく決められた席に座ります。
キッチン側のお誕生日席がシエロ。シエロの右側に、シエロ側からヴァル、リナリ、メンテ。左側にシエロ側から、チュチュ、エマ。
食卓のシエロの席とは逆側にクッションコーナーがあります。
冷やかしなのか一緒に練習をするつもりなのか、なぜか全員が大広間に集まっていた。
シエロのそばには、装飾が施された大きな蓄音機が床に置かれている。
シエロがエマとヴァルに向かう。
「君達、ダンスの経験は?」
「私はまったく」
「俺は一応」
「じゃあ……」
と悩んだ末、まずシエロがヴァルと踊って見せることになった。
「僕が女性側やるから、エマはよく見てて。ヴァルは付いてきて思い出すこと」
「はーい」
ワルツの場合、腕を回して組む必要がある。
二人が組んでみせたけれど、さすがに背の高さが違いすぎて、手を繋いだだけで踊ることになった。
「ゆっくり行くよ」
「ああ」
「はい、いち、に、さん、いち、に、さん」
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エマはすぐ隣でチュチュと手を繋ぎ、ステップの確認をする。
双子も近くでステップをたどたどしく踏んだ。
「ヴァルはダンスの実践したことないのかな」
なんて言われながら、最終的にヴァルとエマで組んでみることになった。
「こう……?」
「手、逆だろ」
「ん?あ、そっか」
シエロが、頭の上から、「君達、不器用だね」なんて言いながら、形を直してくれる。
なんとか形になったところで、最初のステップを踏む。
「いくぞ」
「うん……」
右足……右足……。
「いっせーの、いち……」
と言ったところで、早速エマはヴァルの足に引っかかった。
「ふきゃっ」
ビタン。
エマは、思いっきり床にダイブした。
「だ、大丈夫かよ」
「あ、うん」
あはは、なんてごまかしてみる。差し出してくれたヴァルの手に掴まって、助け起こされる。
さすがにそれ以上は転ばなかったけれど、あまり優秀とは言えない状況だった。
音楽なしでなんとか動けるようになるまで2日を要した。
残り10日となったその日。
遅くまで付き合ってくれたチュチュが帰ってしまい、大広間の真ん中、二人きりでダンスの格好で立っていた。
「だんだん上手くなってはきてるよね」
「だよな……」
「ふああ~~~」
「今日はもう終わりにするか」
エマを左手でくるんとターンさせて、ヴァルが疲れたように言う。
「そだね……。お茶飲んで帰ろうよ」
「だな」
二人、食堂のテーブルについた。
ヴァルと二人で食堂にいるのは初めてのことだ。正面に座るのも。
目の前には、疲れを取るためのホットミルク。
この食堂には、冷蔵庫があるので、牛乳がいつでも飲み放題なのだ。
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意外と近代的で、食料は豊富。
食堂の時計の針はいつもの就寝時間を示している。
「遅くなったな」
「うん、でもけっこう楽しい」
ヴァルが、ハハッと笑う。
「時間制限がなかったらな」
「明日もがんばろ」
エマはにっこり笑ってみせた。
ホットミルクから立ち上る湯気は、とても温かかった。
◇◇◇◇◇
食卓の席は絶対ではないですが、みんななんとなく決められた席に座ります。
キッチン側のお誕生日席がシエロ。シエロの右側に、シエロ側からヴァル、リナリ、メンテ。左側にシエロ側から、チュチュ、エマ。
食卓のシエロの席とは逆側にクッションコーナーがあります。
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