35 / 188
35 グラウ魔術学園(1)
しおりを挟む
大きな扉のような門を潜ると、そこは確かに木の中だった。
木をそのままくり抜いたと思われる、ゆるやかなカーブを描く木の壁。磨いたようにツヤツヤとしている。
木の中であるにも関わらず、壁には蔦が走る。
中は思った以上に広く、天井は高い。
1階は庭のようになっており、ベンチに囲まれた中心には、大きな階段が折り返しながら天井へと続いている。足下は地面のようで、一面草花で埋まっている。階段の裏手にヴァルが馬車を連れていくところを見ると、あちらが厩舎なのだろう。
窓は小さいけれど、沢山あり、この広い空間だというのに暗くはない。むしろ、昼間の外であるかのように明るかった。
「きれい……」
エマが呟くと、シエロが満足そうににっこりと笑った。
階段前には、チュチュと先ほど門から出てきた2人が居た。
2人はやはりチュチュよりどこか幼い。男の子と女の子という違いはあるものの、背の高さも同じで、とてもよく似ていた。どうやら双子のようだった。
「はじめまして。ぼくはメンテ」
男の子の方が、エマに向かって恥ずかしそうにそう言った。
「はじめまして。あたしはリナリです」
女の子も、それに倣って、挨拶をする。
エマは、にっこりとした。
「エマです。よろしくね」
「この学園は小さくてね。学園長である大魔術師様をいれて、これで全員なんだ」
シエロが説明してくれる。
そう、この学園は、このメンバーで全員だった。
学園長である大魔術師マルー、教師をしているシエロ。双子のメンテとリナリ。そして、チュチュにヴァル。エマを入れれば7人だ。
学園長は多忙で、あまり学園にはいない。
「大魔術師様のことは“学園長”と。僕のことは、よければ“先生”って呼んでくれるかな」
そう言いながら、シエロが首をかしげる。
その仕草が『メモアーレン』そのものすぎて……心臓がドキドキしてしまう。
「はい……、先生」
「2階は玄関ホール。3階は大広間。4階はサロン。5階が教室。6階が食堂。7階が図書室。8階から上が個人の部屋になっている。だいたい食堂に集まることが多いかな」
それからは、みんなでぞろぞろ、学園を案内してくれた。いつの間にか、馬をかえしに行ったはずのヴァルまですぐそばに居た。馬車にあったエマの荷物を、すでに持ってくれている。
「ありがとう」
受け取ろうとすると、
「いいよ。部屋ちょっと遠いから」
と言って渡してはくれなかったので、そのままお願いした。
2階に上がると、また圧巻だった。
階段を上がればすぐに玄関ホールで、広い空間に出た。上がってきた階段は、ちょうど木の中心のようで、エマがいる場所を取り囲むようにアンティークな家具で飾られている。
ファンタジー風と言ったらいいのか、カントリー風と言ったらいいのか。暖かな雰囲気に包まれた空間だ。
階段の正面には、壁沿いに左右に向けて、上への階段が据えられている。ここから上の階段は、壁沿いにつけられているらしい。
その階段を上がると、3階。広い廊下になっている。少し先にまた上へ続く階段が伸びている。
外側にも内側にも大きな窓がついていて、天井は高い。内側の窓の向こうは、王宮のような柱が立つ、ダンスホールのようだった。
丸くくりぬかれた天井は、金や銀のキラキラとした装飾で飾られている。
「この大広間は優秀でね。中がお洒落でしょう?」
シエロが大きな扉を音もなく開け、中を指し示す。
……おお、シエロくんのドヤ顔……。
「ダンスパーティーをする時やお客様と会食をする時はもちろん、魔術の訓練などもここでできるよ。とても頑丈なんだ」
すぐそばで興味深そうにしていた手を繋いだ双子の1人に、声をかけてみる。
「リナリもここで魔術の練習をするの?」
すると、こくこくと頷いて、メンテの後ろに引っ込んでしまった。
◇◇◇◇◇
とうとう学園に入ることができました!
物語の中心になる場所です。とにかくかわいい学校です。
木をそのままくり抜いたと思われる、ゆるやかなカーブを描く木の壁。磨いたようにツヤツヤとしている。
木の中であるにも関わらず、壁には蔦が走る。
中は思った以上に広く、天井は高い。
1階は庭のようになっており、ベンチに囲まれた中心には、大きな階段が折り返しながら天井へと続いている。足下は地面のようで、一面草花で埋まっている。階段の裏手にヴァルが馬車を連れていくところを見ると、あちらが厩舎なのだろう。
窓は小さいけれど、沢山あり、この広い空間だというのに暗くはない。むしろ、昼間の外であるかのように明るかった。
「きれい……」
エマが呟くと、シエロが満足そうににっこりと笑った。
階段前には、チュチュと先ほど門から出てきた2人が居た。
2人はやはりチュチュよりどこか幼い。男の子と女の子という違いはあるものの、背の高さも同じで、とてもよく似ていた。どうやら双子のようだった。
「はじめまして。ぼくはメンテ」
男の子の方が、エマに向かって恥ずかしそうにそう言った。
「はじめまして。あたしはリナリです」
女の子も、それに倣って、挨拶をする。
エマは、にっこりとした。
「エマです。よろしくね」
「この学園は小さくてね。学園長である大魔術師様をいれて、これで全員なんだ」
シエロが説明してくれる。
そう、この学園は、このメンバーで全員だった。
学園長である大魔術師マルー、教師をしているシエロ。双子のメンテとリナリ。そして、チュチュにヴァル。エマを入れれば7人だ。
学園長は多忙で、あまり学園にはいない。
「大魔術師様のことは“学園長”と。僕のことは、よければ“先生”って呼んでくれるかな」
そう言いながら、シエロが首をかしげる。
その仕草が『メモアーレン』そのものすぎて……心臓がドキドキしてしまう。
「はい……、先生」
「2階は玄関ホール。3階は大広間。4階はサロン。5階が教室。6階が食堂。7階が図書室。8階から上が個人の部屋になっている。だいたい食堂に集まることが多いかな」
それからは、みんなでぞろぞろ、学園を案内してくれた。いつの間にか、馬をかえしに行ったはずのヴァルまですぐそばに居た。馬車にあったエマの荷物を、すでに持ってくれている。
「ありがとう」
受け取ろうとすると、
「いいよ。部屋ちょっと遠いから」
と言って渡してはくれなかったので、そのままお願いした。
2階に上がると、また圧巻だった。
階段を上がればすぐに玄関ホールで、広い空間に出た。上がってきた階段は、ちょうど木の中心のようで、エマがいる場所を取り囲むようにアンティークな家具で飾られている。
ファンタジー風と言ったらいいのか、カントリー風と言ったらいいのか。暖かな雰囲気に包まれた空間だ。
階段の正面には、壁沿いに左右に向けて、上への階段が据えられている。ここから上の階段は、壁沿いにつけられているらしい。
その階段を上がると、3階。広い廊下になっている。少し先にまた上へ続く階段が伸びている。
外側にも内側にも大きな窓がついていて、天井は高い。内側の窓の向こうは、王宮のような柱が立つ、ダンスホールのようだった。
丸くくりぬかれた天井は、金や銀のキラキラとした装飾で飾られている。
「この大広間は優秀でね。中がお洒落でしょう?」
シエロが大きな扉を音もなく開け、中を指し示す。
……おお、シエロくんのドヤ顔……。
「ダンスパーティーをする時やお客様と会食をする時はもちろん、魔術の訓練などもここでできるよ。とても頑丈なんだ」
すぐそばで興味深そうにしていた手を繋いだ双子の1人に、声をかけてみる。
「リナリもここで魔術の練習をするの?」
すると、こくこくと頷いて、メンテの後ろに引っ込んでしまった。
◇◇◇◇◇
とうとう学園に入ることができました!
物語の中心になる場所です。とにかくかわいい学校です。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる