抜剣少女は魔術教師に恋をする

大天使ミコエル

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58 認めてやったわけじゃない(1)

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 その日の昼、部屋に1通の手紙が届けられた。

「師匠、現地視察の催促が来てますよ」
 大魔術師は手渡した手紙を受け取りながら、
「ああ~~~~」
 と、欠伸混じりの返事をする。
「宿屋の、現地視察、な。ワシな、行けんのよ」
「…………」

 行けないと言われてはいそうですかと引き下がるわけにもいかない。

「じゃから、ジークとシエロで、行ってきてくれんかの」

「え、僕が……ですか」

 ジークと二人というのは引っかかるところだけれど、師匠がどんな事をやっているのか気にはなった。
 一部だけでも見ておいた方が、今後の手伝いも捗るというものだ。
 これほどの魔術師が、ここまで必死に行なっている研究とは、どういうものなのだろう。

「行きます」

 そう、ハッキリと答える。

 結果、魔術師の塔から借りた黒い幌馬車に二人で乗ることになった。
 小さく塔の紋章が入った馬車。

 黙って御者役を務めるジークを、じっと眺める。
 いつだってなんだかつまらなそうだから、こんなこと嫌がるのかと思ったのに。
 意外と真面目なんだろうか。

 ガタガタと走る馬車。
 青い空。
 陽の光が杖に付いた赤い宝玉に反射するのを、じっと眺めた。

 辿り着いたのは、小さな町だった。
 これといって何かがあるわけではない。
 山裾の、小さな町だ。

 ここに何が……?

 塔の黒い馬車でさえも少し目立つ。
 好奇の目で見られているのがわかる。

「着いたぞ」

 ジークの声に、馬車を降りる。
 2人の案内人と共に目の前にあるのは、大きな建物だった。
 3階建のその建物は、大きな扉が付いている。
「……宿?」
「そう。今日の仕事は、この宿の確認」
 この宿の?
「この宿は、師匠が建てた宿なんだ。これを俺たちが営業できる状態か確認すれば、晴れてオープンするというわけだ」
「……へぇ」
 渡された書類を見る。
 数十枚の紙に、大魔術師の字で細かくこだわりが書いてあった。
「この宿が、仕様通りに出来てるか、危ないところはないかチェックする」

 そして、ジークが、建物を見上げた。
「じゃあまず、外から行くか」

 師匠が建てた宿。
 魔術が使われていたりするのだろうか。

 そんな期待とは裏腹に、その宿を任されている男が案内する宿は、ごく普通の宿だった。
 外は特に異常なし。
 宿にしては質素だけれど、それはどうやら大魔術師のこだわりの一つであるらしかった。

 正面玄関を入っても、少し大きなホール、そして隣接する食堂があるだけで、これといって特別なものはない。

 そして、いよいよ部屋の前。
 普通よりは大きく厚い扉が開けられる。

 へぇ……。

 暖炉があり、すでに火が燃えていた。
 柔らかな色の壁紙。
 居心地の良さそうな部屋。

 とはいえ、魔術を使っている気配はないな。



◇◇◇◇◇



さて、毎度お馴染みお泊まりイベントです!この二人で!
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