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第三章
空へ
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アリシアが町づくりを始め、さらに3年の月日が経った。
農家の家もいくつも建ち、けっこうな広い土地が農地となった。
晴れた夜だったので屋根の上で朝までのんびりしようと登っていったところで、ベランダにアリシアがぐったりしているのを見つけた。
昨日まで町に行ってたというのに、明日からまた仕事をするというのだからそりゃあ疲れるだろう。人間は弱い。
「どうした?」
ベランダの外側から、声をかける。
剣の稽古は続いていたが、ずいぶん回数は減っていた。食事も忙しいときはそれぞれの部屋で取ることもあり、会わない日も増えた。
この日も、アリシアが留守にしていたこともあって、6日ぶりの再会だった。
「昨日行った町の町長が……この屋敷のことをよく思ってないわ。国王だって視察に来て、承認を得ているというのに」
二人を、月明かりが照らしていた。
行ったら戻ってくるものはないと言われていた城だ。おいそれと交流するでもないだろう。
「……人間の心を思いのままに操るのは容易ではないよ」
「…………」
アリシアは、眉毛をまげて、手すりに寄りかかる。頭をふせて、考え込んでしまった。
「ぐぬぬぅ……」
手に力を入れ、一つ大きな深呼吸。
「そう、よね」
困った顔で笑ってみせる。
そんな顔を見せられて、元気付けようと思っただけだ。
手を、差し出した。
「…………」
その手をじっと見つめたあと、アリシアは不可解な顔のまま自分の手を差し出した。
サイズが違いすぎるほど違う、二つの手。
二人の姿を月明かりが照らした。
その手を掴み、ぐい、と引きあげた。
「きゃっ」
アリシアが小さく悲鳴をあげる。
両の手を取り、アリシアの足が、宙に浮く。
ひょいっとアリシアを片手で抱き上げた。
そのまま、空へ。
悪魔に必死でつかまり、力を入れ、目をぎゅっとつぶっていたアリシアだったが、次第にそっと目を開ける。
悪魔とアリシアの目の前に広がるのは、星空と、大きな月だ。
星空を駆けるように、悪魔は、アリシアを連れ、飛んだ。
「あぁ……!すごいわ!ねえ、すごいわ!!」
アリシアの瞳が、キラキラと輝く。
「ねえほら!星空がとても綺麗……!」
どうやら少しは機嫌も持ち直したようだ。
「私達の家は、こんな星空を持っているのよ。素晴らしいわ」
悪魔にとっては毎日見る星空だ。
けれど、誰かと見る星空は、やはり綺麗だと思えた。
二人で、空の散歩を楽しんだ。
湖ギリギリのところで、サーっと飛んでいくと、冷たい空気が二人を撫でていった。
また、元いたベランダにアリシアを立たせると、すっかり落ち込む気配は消えていた。
アリシアは、にっこりと悪魔を見上げた。
「ありがとう」
悪魔も、その笑顔を受け止めて、少しだけ、優しい目をしたかもしれなかった。
次の瞬間には、悪魔は星の海に溶けて、消えた。
アリシアは、しばらく、そのベランダに立ち、空を見上げた。
農家の家もいくつも建ち、けっこうな広い土地が農地となった。
晴れた夜だったので屋根の上で朝までのんびりしようと登っていったところで、ベランダにアリシアがぐったりしているのを見つけた。
昨日まで町に行ってたというのに、明日からまた仕事をするというのだからそりゃあ疲れるだろう。人間は弱い。
「どうした?」
ベランダの外側から、声をかける。
剣の稽古は続いていたが、ずいぶん回数は減っていた。食事も忙しいときはそれぞれの部屋で取ることもあり、会わない日も増えた。
この日も、アリシアが留守にしていたこともあって、6日ぶりの再会だった。
「昨日行った町の町長が……この屋敷のことをよく思ってないわ。国王だって視察に来て、承認を得ているというのに」
二人を、月明かりが照らしていた。
行ったら戻ってくるものはないと言われていた城だ。おいそれと交流するでもないだろう。
「……人間の心を思いのままに操るのは容易ではないよ」
「…………」
アリシアは、眉毛をまげて、手すりに寄りかかる。頭をふせて、考え込んでしまった。
「ぐぬぬぅ……」
手に力を入れ、一つ大きな深呼吸。
「そう、よね」
困った顔で笑ってみせる。
そんな顔を見せられて、元気付けようと思っただけだ。
手を、差し出した。
「…………」
その手をじっと見つめたあと、アリシアは不可解な顔のまま自分の手を差し出した。
サイズが違いすぎるほど違う、二つの手。
二人の姿を月明かりが照らした。
その手を掴み、ぐい、と引きあげた。
「きゃっ」
アリシアが小さく悲鳴をあげる。
両の手を取り、アリシアの足が、宙に浮く。
ひょいっとアリシアを片手で抱き上げた。
そのまま、空へ。
悪魔に必死でつかまり、力を入れ、目をぎゅっとつぶっていたアリシアだったが、次第にそっと目を開ける。
悪魔とアリシアの目の前に広がるのは、星空と、大きな月だ。
星空を駆けるように、悪魔は、アリシアを連れ、飛んだ。
「あぁ……!すごいわ!ねえ、すごいわ!!」
アリシアの瞳が、キラキラと輝く。
「ねえほら!星空がとても綺麗……!」
どうやら少しは機嫌も持ち直したようだ。
「私達の家は、こんな星空を持っているのよ。素晴らしいわ」
悪魔にとっては毎日見る星空だ。
けれど、誰かと見る星空は、やはり綺麗だと思えた。
二人で、空の散歩を楽しんだ。
湖ギリギリのところで、サーっと飛んでいくと、冷たい空気が二人を撫でていった。
また、元いたベランダにアリシアを立たせると、すっかり落ち込む気配は消えていた。
アリシアは、にっこりと悪魔を見上げた。
「ありがとう」
悪魔も、その笑顔を受け止めて、少しだけ、優しい目をしたかもしれなかった。
次の瞬間には、悪魔は星の海に溶けて、消えた。
アリシアは、しばらく、そのベランダに立ち、空を見上げた。
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