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第三章
屋敷の主人 1
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この国には魔女がいる。
魔女は、天災だ。
通った道には何も残らず、命は軽く扱われる。気まぐれのままに遊ぶ。
魔女がいるため、人間同士で争うことはあまりない。けれど、魔女がいるため、人間は進歩することもない。
どんな防壁も敵わない。けれど、何もしないわけにもいかない。
王はただ、魔女から国を守るため尽くす。
所々にほどほど栄えた町がある。それがこの国。
そんな国からほどほど外れた森の中。湖の辺りに、その城はあった。
噂だが、その城には悪魔が住んでおり、やってきた人間は片っ端から食べてしまうのだと。だから、その城の周囲は肥沃な大地が広がるけれど、人が住むことはできないのだと。そう言われていた。
「いただきまーす」
森で迷った二人の旅人は、そんな噂に違わず、頭から悪魔の口の中へ。
人間と同程度の大きさでありながら、頭上から落ちるように、その獣の頭蓋骨のような口を開けて人間を飲み込む。
口の中でむしゃむしゃと音がして、人間は跡形もなく消えてしまう。
本来、魂さえ食べられればよいのだが、後に身体だけ残していても、対処に困る。なので、悪魔は、その身体ごと魂をいただいていた。
消化に悪そうな金品は取り上げていたが、それでもあまり美味しいものでもない。ただ、攻撃してくるから、返り討ちにし、栄養にしている。ただそれだけだ。
頑丈なブーツを履いていれば、口の中が不快なほどにもごもごする。眉間にシワを寄せ、食べ尽くす。
そして、何の感傷もないまま一人になると、屋根の上にふわりと浮いて、空中で寝転がり空を見上げた。
黒い翼をゆらゆらと羽ばたかせる。
気に入っている場所だ。
おかしな噂に感化されたおかしな人間達が、打倒悪魔という旗を掲げやってくる以外は、とても静かな森の中。
「うひぃ~、姫様待って~」
「早く来ないと悪魔が逃げてしまうわよ!」
城のほど近くでカシャンと剣が掲げられる音。馬のいななき。
どうやら今日もまた、おかしな人間達がやってきたようだ。
しかし、食事の後にまた食事とは。
腹も減っていなければ食後の運動にもならない。面倒極まりなく、やり過ごせればそれでいいと、人間から見えないように高度を落とす。
城の前に2頭の馬が止まり、物色するように城の周りをまわった。
「ねえ、ほら見てサウス。すごく綺麗な城だわ。ここよ、悪魔がいるという城は」
「怖いもの知らずにも程があるでしょう……」
一人は、10代後半といった風情の髪の長い気の強そうな女。素朴な茶色の髪がなびく。簡素な剣士のような格好をしているが、品物は上質そうだ。
そしてもう一人は、そのお付きらしく、服装も従者らしさがにじみ出ている。気弱そうな20代程度の男。
城に入ってくるようなら相手をしなくてはならないか。
今日はのんびり寝ていようと思ったのに、そうもいかないものだ。上質なジャケットにしわがついたらどうしてくれるんだ。
「はぁ……」
悪魔はひとつ、ため息をつく。
馬の上で、剣を構えているのは女の方だ。
「もっとご自分の立場をわきまえてください、アリシア様~」
アリシアと呼ばれた女は男の方を見向きもしない。
眉毛をつりあげ、悪魔の登場を今か今かと待っていた。
魔女は、天災だ。
通った道には何も残らず、命は軽く扱われる。気まぐれのままに遊ぶ。
魔女がいるため、人間同士で争うことはあまりない。けれど、魔女がいるため、人間は進歩することもない。
どんな防壁も敵わない。けれど、何もしないわけにもいかない。
王はただ、魔女から国を守るため尽くす。
所々にほどほど栄えた町がある。それがこの国。
そんな国からほどほど外れた森の中。湖の辺りに、その城はあった。
噂だが、その城には悪魔が住んでおり、やってきた人間は片っ端から食べてしまうのだと。だから、その城の周囲は肥沃な大地が広がるけれど、人が住むことはできないのだと。そう言われていた。
「いただきまーす」
森で迷った二人の旅人は、そんな噂に違わず、頭から悪魔の口の中へ。
人間と同程度の大きさでありながら、頭上から落ちるように、その獣の頭蓋骨のような口を開けて人間を飲み込む。
口の中でむしゃむしゃと音がして、人間は跡形もなく消えてしまう。
本来、魂さえ食べられればよいのだが、後に身体だけ残していても、対処に困る。なので、悪魔は、その身体ごと魂をいただいていた。
消化に悪そうな金品は取り上げていたが、それでもあまり美味しいものでもない。ただ、攻撃してくるから、返り討ちにし、栄養にしている。ただそれだけだ。
頑丈なブーツを履いていれば、口の中が不快なほどにもごもごする。眉間にシワを寄せ、食べ尽くす。
そして、何の感傷もないまま一人になると、屋根の上にふわりと浮いて、空中で寝転がり空を見上げた。
黒い翼をゆらゆらと羽ばたかせる。
気に入っている場所だ。
おかしな噂に感化されたおかしな人間達が、打倒悪魔という旗を掲げやってくる以外は、とても静かな森の中。
「うひぃ~、姫様待って~」
「早く来ないと悪魔が逃げてしまうわよ!」
城のほど近くでカシャンと剣が掲げられる音。馬のいななき。
どうやら今日もまた、おかしな人間達がやってきたようだ。
しかし、食事の後にまた食事とは。
腹も減っていなければ食後の運動にもならない。面倒極まりなく、やり過ごせればそれでいいと、人間から見えないように高度を落とす。
城の前に2頭の馬が止まり、物色するように城の周りをまわった。
「ねえ、ほら見てサウス。すごく綺麗な城だわ。ここよ、悪魔がいるという城は」
「怖いもの知らずにも程があるでしょう……」
一人は、10代後半といった風情の髪の長い気の強そうな女。素朴な茶色の髪がなびく。簡素な剣士のような格好をしているが、品物は上質そうだ。
そしてもう一人は、そのお付きらしく、服装も従者らしさがにじみ出ている。気弱そうな20代程度の男。
城に入ってくるようなら相手をしなくてはならないか。
今日はのんびり寝ていようと思ったのに、そうもいかないものだ。上質なジャケットにしわがついたらどうしてくれるんだ。
「はぁ……」
悪魔はひとつ、ため息をつく。
馬の上で、剣を構えているのは女の方だ。
「もっとご自分の立場をわきまえてください、アリシア様~」
アリシアと呼ばれた女は男の方を見向きもしない。
眉毛をつりあげ、悪魔の登場を今か今かと待っていた。
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