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ダークエルフ
ダークエルフ④
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身長では向かい合った女の方が高いか。
視線を顔から下に向けると、閻鬼は「勝った」と小さく呟いた。胸部装甲は僅差で勝利。
「では、ホントにホント、思い切りいって宜しいのですね?」
「しつこいね、君も。いいよ、さあ、やりなよ」
挑戦代はレベッカに払ってもらい――まず、直ぐに返せると思っている。
周囲で見ている民衆が、勝手に賭けを始めた。
「なあ、黒髪の子が勝てると思うか?」
「俺は、紫の子が最後まで立っていると思うけど。あの大男でも駄目だったんだぞ」
「それじゃあ、賭けにならねえな」
そんな声が耳に届けば、嫌でも力は入るというもの。
拳が届く位置まで近付いた。
「貴女、名前は?」
「知りたい?」
「万一の時、墓標に名前を刻まなくてはいけませんもの」
「ふーん、万一なんてないけど、教えてあげるよ。フェイノートだよ」
「私は閻鬼。地獄で聞かれたら、そう獄卒に教えるといいでしょう。あっ、こちらには無いのでしたか」
フェイノートが砂時計の上下を変えた。落ちきるまでに膝を付かせれば、閻鬼の勝ちだ。
僅かに右足を前に出して、左の拳を握り締める。
スーと息遣いをして、ストレートで打ち込んでいく。
ブンっと音がして、インパクトの瞬間だけ、本気度を上げた。
ズバンっと響き渡る。
おお、っと観衆から漏れる声がした。
「あら……、へえ、そうきましたか」
肉を捉えた感触がなかった。フェイノートの顔面の直前、周囲からは直撃に見える寸で、拳は止まっていたが、彼女の額から冷や汗が流れていく。
――何らかの魔法の障壁ですか。
左腕をゆっくり引きながら、少しだけ体を捻り、不意を突くように素早く右の拳を放った。
「っ!!」
次の刹那――、フェイノートは避けた。彼女の顔の横で閻鬼の拳が紫の髪を僅かに散らしている。
「くく……、それが正しい反応です」
ちょっと小馬鹿にする笑みを見せる閻鬼に対して、フェイノートが顔を真っ赤にさせる。
「あああん、もう! 反射的に避けちゃったよ」
「で、これは私の勝ちで?」
「う……、金は……ない」
そうでしょうね。
こんな商売は金を持っている者がする事ではない。先の体格の良い男の時の周囲の反応からして、まだ始めたばかりだったのだろう。
「一万とは言いませんが、有り金で良いので」
「鬼!」
鬼ですが、なにか?
「まあ、最初にそちからも殴っていいと言いましたから――」
「じゃあ、ノーカンで?」
「儲けるまで待ちます。さあ、臓器でも売ってきてください」
「やっぱり、鬼!」
「はあ、仕方ありませんね。では、貴女の借金という事で、そのうち返してください」
ここで金を得るつもりでいたが、百ストンが二百ストンになったところで、喜びは大きくはない。
「エンキ様……」
レベッカが近付いてきた。
「お待たせしました。行きましょうか、レベッカ様。ケーキを頂きに」
フェイノートが身を乗り出す。
「ケーキ!?」
半開きになった口から、涎を垂らしているのだ。
「え、えーと、良ければ、貴女もいらっしゃいます? ケーキ代は私が払いますから」
「いいの!?」
この令嬢はお人よしなのか。
――ますます、狸には勿体ないですね。
金を払うのがレベッカであるのなら、ここで反対する理由もなく、印象も良くない。賢者の連れ、という立場もあるのだ。
当初の予定通りに、王都を目指すべきであるが、ハクレウスがいないと王国の協力を得るのは難しい。彼が暫くここに留まる事になるのなら、自分だけ先に向かっても意味はない。
カサブランダルでも最も大きな通り沿いに、その茶屋はあった。
閻鬼から見て、アンティークな内装のオープンカフェといった感じで、若い女性に人気が出そうであるが、ここでは高級店らしく、比較的、身なりの良い人間が客層のようだ。
だから、フェイノートの格好はかなり浮いている。レベッカがいなかったら、絶対に入店拒否されていた。
「おお、すっげえ」
メニューはよく分からず、レベッカにお任せしたが、テーブルに運ばれたベリーと苺っぽい果物の飾られたタルトにフェイノートが歓喜している。
レベッカはシンプルにショートケーキっぽい物で、閻鬼も同じにした。
併せて紅茶が淹れられる。
「平和、ですね」
噛み締めるようにレベッカが言った。
「いつ、魔物が襲撃してくるか、分からないのに、この街の人々は明るいですね」
「あー、エンキ様もここにいらっしゃるまでにご苦労をなさったのですよね」
「私はそれ程でもありませんよ」
横目でファイノートの様子を確認すれば、タルトに夢中になっている。
「村々から、逃げてきた人たち……、早く戻れるといいのですが」
「レベッカ様は不安ですか?」
「いいえ、カラハ様もいらっしゃいます。賢者様も来てくださいました。あの方々が、私たちの希望になって、だから、皆、明るくいられるのです」
どっちも人外ですけどね。
二人を人間だと思っているから、無条件で信用して、希望にもなっている。この世界に人間にとって、正体不明な妖怪なんていう存在だと分かったら、逆に疑いの目を向けていただろう。
こうなると、上手く国王に会う事ができても、妖怪の仲間を探す協力をどう取りつけたらいいのか。正体を明かす訳にもいかない。
「ふーん、じゃあ、その二人が簡単に殺されちゃったら、この街の人間は絶望しちゃうね」
聞いていないようで、フェイノートはちゃんと耳を傾けていたようだ。
「え、えーと、お二人がそう簡単に、なんて、絶対にないわ」
考えたくない想定に、レベッカは戸惑った様子である。
「そう? まっ、そう思うならいいや」
フェイノートが立ちあがった。
「ご馳走さま。美味しかったよ」
そのまま店から出ていくのである。
「…………」
閻鬼も立った。
「エンキ様?」
「レベッカ様はゆっくりしていてください」
おしとやかな所作で、店を後にすると、閻鬼は気配の残り香を追う。それはあからさまであって、自分を誘っているように感じた。
大通りから、路地裏に入る。
濃厚な強者の気配に、無意識に人間はこちらに近付いてはこないようだ。それは自然発生した結界のようになっている。
フェイノートがいた。笑っている。
「来たね。来てくれると思っていたよ」
「何者ですか、貴女? この世界の亜人とかもまだよく知らないのですが、そうではないですよね?」
「悪魔だよ」
悪魔は元の世界にもいた。詳しい訳ではなかったが、どうも違って感じる。
「ここにも魔界があるのですね」
「魔界? 何それ?」
「魔界がない?」
異世界だ。常識が違っていてもおかしくはない。
「では、天界は?」
フェイノートが首を傾げる。
――魔界も天界もない? なら、神や破滅神とかいうのは、何処にいるの?
この世界がおかしいのか、それとも元いた世界が特殊なのか。
「ねえ、エンキは黒い鎧を着た耳の尖った奴を殴った事はある?」
「唐突に……、あるような気はしますけど」
よく覚えていない。
「やっぱり……。オーガもどきとか言って、全然違うじゃないか、あのダークエルフ」
「何の話?」
「さっきまで一緒にいた人間のお嬢様、レベッカって、伯爵の妹だよね。じゃあ、勇者って噂される奴とも合流してんだ」
「だから?」
「妖怪……」
「ん……」
燃尾が獣人の村で何があったか教えてくれてはいた。その時に妖怪だと話しているから、伝わっているのか。なら、この悪魔は魔物側にいる。
「殺り合う気になったかい?」
「ええ、貴女は危険そうですから」
「それはお互い様さ。妖怪の中で、君が一番強い。そうでなかったら、お手上げだよ」
得体の知れない力が、フェイノートの体から滲み出ていく。
――魔力のようですが、何というか、もっと禍々しい。
これが本来の姿なのか。そして、きっと戦い方も違う。
「来なさい。相手をしてあげる」
「そういって、自分の得意な距離にしたいのかい? ごめんだね」
幾つもの魔法陣が囲むように展開された。
――――
一人残されて、レベッカは胸騒ぎを覚えた。
特別、勘がいいとか、注意力が高いとか、そういった訳でもないのだが、こればかりは説明ができない。
自分とのお茶を嫌ったとか、そんな雰囲気ではなかった。願望かもしれないが。
「ケーキ、半分残っています」
楽しみにしていたはずだ。
雰囲気が変わったのは、フェイノートという少女と出会ってから。
――あの時、私にはエンキ様のパンチが見えなかった。気付いたら、あのフェイノートさんの顔の横に、エンキ様の手があって……。
カラハの娘であるなら、同じように強いのかもしれない。そして、そんな強い彼女が、フェイノートと会ってから僅かだが緊張感のある顔になっていた。
「ん……。ゆっくりとか言われたけど……」
このままじっとしていていいのだろうか?
考えたら、エンキはこの街の事をよく知らないはず。
「そうね、私がエスコートしなくちゃいけないのだわ」
立ちあがると、三人分のケーキと紅茶の代金を支払って、店を出た。
――どちらに向かわれたのかしら?
まだ、そんなに時間は経っていないはず。
周囲を見回して、エンキの着ていたキモノという衣装を探した。あれはこの街ではかなり目立つ。
「いない……」
それから、これも勘で動きだし、周りを気にしながら探していく。
こうして進んでいくと、ふとこれ以上は進みたくないと感じてしまう場所があった。よく観察すると、他の人々も、無意識そうだが、避けているようだ。
どうにもそれが、感じている胸騒ぎに近いように思えてしまった。
「こ、この先……」
路地裏。この辺りなら、街の陰でも不穏な輩と出会う事もないだろう。
なら、行ってみるべきだ。
ごくりと生唾を飲み込んで、令嬢は一歩を踏み込んでいく。
視線を顔から下に向けると、閻鬼は「勝った」と小さく呟いた。胸部装甲は僅差で勝利。
「では、ホントにホント、思い切りいって宜しいのですね?」
「しつこいね、君も。いいよ、さあ、やりなよ」
挑戦代はレベッカに払ってもらい――まず、直ぐに返せると思っている。
周囲で見ている民衆が、勝手に賭けを始めた。
「なあ、黒髪の子が勝てると思うか?」
「俺は、紫の子が最後まで立っていると思うけど。あの大男でも駄目だったんだぞ」
「それじゃあ、賭けにならねえな」
そんな声が耳に届けば、嫌でも力は入るというもの。
拳が届く位置まで近付いた。
「貴女、名前は?」
「知りたい?」
「万一の時、墓標に名前を刻まなくてはいけませんもの」
「ふーん、万一なんてないけど、教えてあげるよ。フェイノートだよ」
「私は閻鬼。地獄で聞かれたら、そう獄卒に教えるといいでしょう。あっ、こちらには無いのでしたか」
フェイノートが砂時計の上下を変えた。落ちきるまでに膝を付かせれば、閻鬼の勝ちだ。
僅かに右足を前に出して、左の拳を握り締める。
スーと息遣いをして、ストレートで打ち込んでいく。
ブンっと音がして、インパクトの瞬間だけ、本気度を上げた。
ズバンっと響き渡る。
おお、っと観衆から漏れる声がした。
「あら……、へえ、そうきましたか」
肉を捉えた感触がなかった。フェイノートの顔面の直前、周囲からは直撃に見える寸で、拳は止まっていたが、彼女の額から冷や汗が流れていく。
――何らかの魔法の障壁ですか。
左腕をゆっくり引きながら、少しだけ体を捻り、不意を突くように素早く右の拳を放った。
「っ!!」
次の刹那――、フェイノートは避けた。彼女の顔の横で閻鬼の拳が紫の髪を僅かに散らしている。
「くく……、それが正しい反応です」
ちょっと小馬鹿にする笑みを見せる閻鬼に対して、フェイノートが顔を真っ赤にさせる。
「あああん、もう! 反射的に避けちゃったよ」
「で、これは私の勝ちで?」
「う……、金は……ない」
そうでしょうね。
こんな商売は金を持っている者がする事ではない。先の体格の良い男の時の周囲の反応からして、まだ始めたばかりだったのだろう。
「一万とは言いませんが、有り金で良いので」
「鬼!」
鬼ですが、なにか?
「まあ、最初にそちからも殴っていいと言いましたから――」
「じゃあ、ノーカンで?」
「儲けるまで待ちます。さあ、臓器でも売ってきてください」
「やっぱり、鬼!」
「はあ、仕方ありませんね。では、貴女の借金という事で、そのうち返してください」
ここで金を得るつもりでいたが、百ストンが二百ストンになったところで、喜びは大きくはない。
「エンキ様……」
レベッカが近付いてきた。
「お待たせしました。行きましょうか、レベッカ様。ケーキを頂きに」
フェイノートが身を乗り出す。
「ケーキ!?」
半開きになった口から、涎を垂らしているのだ。
「え、えーと、良ければ、貴女もいらっしゃいます? ケーキ代は私が払いますから」
「いいの!?」
この令嬢はお人よしなのか。
――ますます、狸には勿体ないですね。
金を払うのがレベッカであるのなら、ここで反対する理由もなく、印象も良くない。賢者の連れ、という立場もあるのだ。
当初の予定通りに、王都を目指すべきであるが、ハクレウスがいないと王国の協力を得るのは難しい。彼が暫くここに留まる事になるのなら、自分だけ先に向かっても意味はない。
カサブランダルでも最も大きな通り沿いに、その茶屋はあった。
閻鬼から見て、アンティークな内装のオープンカフェといった感じで、若い女性に人気が出そうであるが、ここでは高級店らしく、比較的、身なりの良い人間が客層のようだ。
だから、フェイノートの格好はかなり浮いている。レベッカがいなかったら、絶対に入店拒否されていた。
「おお、すっげえ」
メニューはよく分からず、レベッカにお任せしたが、テーブルに運ばれたベリーと苺っぽい果物の飾られたタルトにフェイノートが歓喜している。
レベッカはシンプルにショートケーキっぽい物で、閻鬼も同じにした。
併せて紅茶が淹れられる。
「平和、ですね」
噛み締めるようにレベッカが言った。
「いつ、魔物が襲撃してくるか、分からないのに、この街の人々は明るいですね」
「あー、エンキ様もここにいらっしゃるまでにご苦労をなさったのですよね」
「私はそれ程でもありませんよ」
横目でファイノートの様子を確認すれば、タルトに夢中になっている。
「村々から、逃げてきた人たち……、早く戻れるといいのですが」
「レベッカ様は不安ですか?」
「いいえ、カラハ様もいらっしゃいます。賢者様も来てくださいました。あの方々が、私たちの希望になって、だから、皆、明るくいられるのです」
どっちも人外ですけどね。
二人を人間だと思っているから、無条件で信用して、希望にもなっている。この世界に人間にとって、正体不明な妖怪なんていう存在だと分かったら、逆に疑いの目を向けていただろう。
こうなると、上手く国王に会う事ができても、妖怪の仲間を探す協力をどう取りつけたらいいのか。正体を明かす訳にもいかない。
「ふーん、じゃあ、その二人が簡単に殺されちゃったら、この街の人間は絶望しちゃうね」
聞いていないようで、フェイノートはちゃんと耳を傾けていたようだ。
「え、えーと、お二人がそう簡単に、なんて、絶対にないわ」
考えたくない想定に、レベッカは戸惑った様子である。
「そう? まっ、そう思うならいいや」
フェイノートが立ちあがった。
「ご馳走さま。美味しかったよ」
そのまま店から出ていくのである。
「…………」
閻鬼も立った。
「エンキ様?」
「レベッカ様はゆっくりしていてください」
おしとやかな所作で、店を後にすると、閻鬼は気配の残り香を追う。それはあからさまであって、自分を誘っているように感じた。
大通りから、路地裏に入る。
濃厚な強者の気配に、無意識に人間はこちらに近付いてはこないようだ。それは自然発生した結界のようになっている。
フェイノートがいた。笑っている。
「来たね。来てくれると思っていたよ」
「何者ですか、貴女? この世界の亜人とかもまだよく知らないのですが、そうではないですよね?」
「悪魔だよ」
悪魔は元の世界にもいた。詳しい訳ではなかったが、どうも違って感じる。
「ここにも魔界があるのですね」
「魔界? 何それ?」
「魔界がない?」
異世界だ。常識が違っていてもおかしくはない。
「では、天界は?」
フェイノートが首を傾げる。
――魔界も天界もない? なら、神や破滅神とかいうのは、何処にいるの?
この世界がおかしいのか、それとも元いた世界が特殊なのか。
「ねえ、エンキは黒い鎧を着た耳の尖った奴を殴った事はある?」
「唐突に……、あるような気はしますけど」
よく覚えていない。
「やっぱり……。オーガもどきとか言って、全然違うじゃないか、あのダークエルフ」
「何の話?」
「さっきまで一緒にいた人間のお嬢様、レベッカって、伯爵の妹だよね。じゃあ、勇者って噂される奴とも合流してんだ」
「だから?」
「妖怪……」
「ん……」
燃尾が獣人の村で何があったか教えてくれてはいた。その時に妖怪だと話しているから、伝わっているのか。なら、この悪魔は魔物側にいる。
「殺り合う気になったかい?」
「ええ、貴女は危険そうですから」
「それはお互い様さ。妖怪の中で、君が一番強い。そうでなかったら、お手上げだよ」
得体の知れない力が、フェイノートの体から滲み出ていく。
――魔力のようですが、何というか、もっと禍々しい。
これが本来の姿なのか。そして、きっと戦い方も違う。
「来なさい。相手をしてあげる」
「そういって、自分の得意な距離にしたいのかい? ごめんだね」
幾つもの魔法陣が囲むように展開された。
――――
一人残されて、レベッカは胸騒ぎを覚えた。
特別、勘がいいとか、注意力が高いとか、そういった訳でもないのだが、こればかりは説明ができない。
自分とのお茶を嫌ったとか、そんな雰囲気ではなかった。願望かもしれないが。
「ケーキ、半分残っています」
楽しみにしていたはずだ。
雰囲気が変わったのは、フェイノートという少女と出会ってから。
――あの時、私にはエンキ様のパンチが見えなかった。気付いたら、あのフェイノートさんの顔の横に、エンキ様の手があって……。
カラハの娘であるなら、同じように強いのかもしれない。そして、そんな強い彼女が、フェイノートと会ってから僅かだが緊張感のある顔になっていた。
「ん……。ゆっくりとか言われたけど……」
このままじっとしていていいのだろうか?
考えたら、エンキはこの街の事をよく知らないはず。
「そうね、私がエスコートしなくちゃいけないのだわ」
立ちあがると、三人分のケーキと紅茶の代金を支払って、店を出た。
――どちらに向かわれたのかしら?
まだ、そんなに時間は経っていないはず。
周囲を見回して、エンキの着ていたキモノという衣装を探した。あれはこの街ではかなり目立つ。
「いない……」
それから、これも勘で動きだし、周りを気にしながら探していく。
こうして進んでいくと、ふとこれ以上は進みたくないと感じてしまう場所があった。よく観察すると、他の人々も、無意識そうだが、避けているようだ。
どうにもそれが、感じている胸騒ぎに近いように思えてしまった。
「こ、この先……」
路地裏。この辺りなら、街の陰でも不穏な輩と出会う事もないだろう。
なら、行ってみるべきだ。
ごくりと生唾を飲み込んで、令嬢は一歩を踏み込んでいく。
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