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――封印の扉

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シュヴァルツヴァルトの森を眼下に、その中央の湖がキラキラと光っている。

「あの湖までいけばいいんだね」

などと簡単に言ってみたけど、内心はドキドキものです。しかも、みんなひどい、私一人で大丈夫って、どういうことかしら

この間の魔物との戦いは、レンジディフェンスと王子様の護衛があったからだし、聖騎士団の戦いでも、クラリスがいてくれたからなんだけど、今回は一人だけで行けって

どう思う?

と話しかける相手はいない。だって、私一人でシュヴァルツヴァルトの森を湖に向けて歩いているのだから、

「さてとここまでは、何もでてこなかったけど」

ここまで来て、道は途切れ目の前には鬱蒼と生い茂る原始の杜が立ちはだかっていて、何もしないで入り込むと迷ってしまいそうだ。

「どうしよう」

実は私、13峠の麓の村から出る時に、道を作ったのだ。方法は簡単、湖に向けて、ファイヤーボールを撃つだけ、しかし、撃つ時に、マーリン様とライデンにもっと魔力を抑えてと散々忠告を受けて、ようやく撃たせてくれたんだけど、こうして出来た道はここまでらしい。

という訳でさっきと同じ要領で

『ファイヤーボール』

するとわたしが放った最小のファイヤーボールは、杜に弾かれ淡く消えたのだった。

もう一度、魔力最小のファイヤーボールを撃ったけど、結果は同じだった。

「うーん。どうしよう?このままでは、前進できない。マーリン様とはこれ以上、魔力を高めるのは禁止されているし」

私は暫く悩んだ。

「そうだ」

『ファイヤーボール』

『ファイヤーボール』

今度は2回連続で撃ったけど、結果は同じ

「同じか?大きなファイヤーボールは、禁止されているし、どうしよう」

しばらく考えて出した答えはこうだった。

『連続ファイヤーボール』

私は、普通は一回の呪文で一発しか撃つことができないファイヤーボールを連続で発射する感じ、いわゆるマシンガンみたいな感じを想像して、ファイヤーボールを打った。

ダダダダダダ!!

パリンパリンとファイヤーボールは淡く消えてきているが、さっきとは違い、砕け散る音が徐々に高くなってきている。

「やぁああああああ!!!」

ダダダダダダ!!

「やぁああああああ!!!」

ダダダダダダ!!


しばらくして目の前の結界らしきものにひび割れができ始めた。もうちょっと

「やぁああああああ!!!」

ダダダダダダ!!

パリン!!

やったぁーと一人で叫んで恥ずかしくなった。さてと、鬱蒼と生えている杜は変わらないのだけど、よく見ると少し奥に大きな岩があって、そこに古びているけど頑丈そうな扉があったのだった。





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