いきなり婚約破棄されたので、聖女になって人助けをします。

Seabolt

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――シュヴァルツヴァルトの異変

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――シュヴァルツヴァルト


王都クラリスから西へ100キロ、アルム地方のオンジ山脈の西側に広がる広大な森、魔物達の巣窟。

なんでこんな話から始まったかというと、王様の使者が来られたと聞いて、部屋に入って頂くと、黒いローブを羽織って仮面をつけた怪しい人だった。しかも、王様の使者ということで人払いもしている。しかし、この人物は私は分かっている。

「王様、どうしたんですか?そんな格好をして」

すると素直に仮面を外してくれた。

「なんだ、分かっていたのか」

「そうですね。どこから見ても王様でしたし」

「そんなはずはない」

なぜ、王様ってわかったかというと、コロンの匂い…前に私が教えた通り、体臭に気遣いをしているから、普段からコロンをつけている。しかし、本人はその匂いに慣れてしまって気付いていないのだろう。

「私にはわかるんですよ」

「フリージアにまいったな~流石、聖女様というところか」

「そんなんじゃないんだけと」

「じゃあ、どういうことかな?」

「女の感…かな」

そんな会話が終わって、お茶を淹れていると王様はいつになく不安そうな顔をしている。これはひょっとして王女様との仲がまた悪くなられたのかしら?と思いつつ紅茶をだした。

「はい。アールグレイです」

「そうか…いい香りだ…」

こうしてお茶で一服したころの私から話しかけた。

「王女様とうまくいってなのですか?」

「それがうまいこといってな。一緒にお風呂に入ったり、添い寝をしたりしているんだよ。ハハハ」

これまた上機嫌になっているんだけど。これはこれで良しとしよう。と思っていると、我に戻った様子でコホンと咳払いをして、急に真剣な顔になった。

「実は、シュヴァルツヴァルトの魔物が騒がしくなってな。最近もデルフリ村に1匹のはぐれオークが現れて、村に甚大な被害が出てしまった」

「一匹でそんな被害が出るのですか」

「ああ…今はオンジ山脈が防波堤の役割をしている。しかし、冒険者の情報では、シュヴァルツヴァルトの魔物たちの間で覇権争いが始まっていると聞く、それが一体何なのかはわからない。王子たちが討伐に行くと言い出したのだが、あの森は危険すぎる」

王様の表情は硬い。さっきまでのルンルンしていた表情とは打って変わっている。でも、そんな危険な森へ王子様は行こうとしていたのか、これでさっきの話と辻褄があったんだけど、どうしよう…あ…そうだ。

「王様、先程、言われていた冒険者を雇うのはいかがですか?」

「冒険者?あいつらは、自分勝手な連中だ。いざとなったら依頼を放棄して逃げてしまう」

「それはどういうことでしょう?」

「ギルドは成功報酬制だ。失敗しても別に罰もない。だから冒険者は自分ができることしかしない」

「でも、さっき、冒険者からの情報って」

「それはシュヴァルツヴァルト行って、様子を調べて来いという案件だからだ。魔物討伐だと誰も手を上げる奴はいない」

「そんなものなんですか」

「そうだ。勇者みたいなのがいればいいのだが、そんなのはいるはずもない」

「そうでしたか…」

「そこでフリージアの名もなきネモ騎士団にデルフリ村の警備とシュヴァルツヴァルトの情報収集をお願いしたいのだ」

「しかし、それをすると名もなきネモ騎士団のことが世にでますし、私が兵隊を持っていることがばれるとまずいのではないのでしょうか」

「だから、そこへ前回討伐の時のように王子の騎士団を合流させる」

「わかりました」

と言うしかなかった。









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