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――葛藤
しおりを挟むあの女、ひょっとして本物の聖女なのか?
教会でも不可能な蘇生を簡単にやってのけ、しかも、あのような行動をして、更にあの後だ。
「あの家主は怪しいわ」
「あやしいって?」
「とりあえず、今晩、もう一度ここへ来ましょう」
そう話を終えた後、私は彼女と別れた。
教会宿舎に戻ると魔力を使い切った私は、目の下にクマを作っていた。
教会のシスターが私の顔を見てびっくりして
「きゃぁあああ」
まさか、叫び声をあげられるとは思ってもみなかった。更に教会の衛兵がやってきた。
「貴様!!ナニヤツ?」
「教会騎士団のクラリスだ」
私は身分を証明できる手形を見せると
「誠に申し訳ございません。あまりにもお顔がやつれておりましたので、見間違えました」
部屋に戻った時自分の顔を見て目の下にものクマに驚いた。そして、夕食時、その話をホーリーにすると大爆笑された。
「それは、仕方がない。いくらお前でも町中で大量殺人をしたら、教会としてはどうすることもできないからな」
「まったくた…えらい目にあったよ。あの女、聖女というより悪女だな、本当に」
「それは言えてる。あいつ変なところで頭が切れる。この間の鑑識の時もそうだ。してやられたよ。本当に」
この時、クラリスにはいつもと違う感情が湧いていた。いつも戦場を駆け巡り闘いの日々を送っていた。時には暗殺もした。教会からはよくやったと言われたが、達成感がない。初めの頃は、敵のせん滅という目標を達成したことに、充実感を感じていたが、最近は、人殺しが当たり前となって、充実感はなく、虚しさが心を支配していた。だから、一般人から心底感謝されたこと、更に心のどこかから湧いてくるうれしいという気持ちに悩んでいた。
そろそろ時間だ。私は、フリージアとの約束の場所へ行くと
「早くしないと」
「どういうこと?」
「とにかく」
彼女は私の手をつかんだ。
『テレポーテーション』
すると女の子の家につくと
「娘をどうするつもりなの」
「ええい!!はなせ」
数人の男とあの女が家に入っていて、女の子をとらえていた。
「ママ―」
「さっさと行くよ」
すると彼女らは振り向いて私たちの存在に気付いた。
「こいつの借金の方だ!!文句あるのか?」
証文を見せてきたが。その金額は銀貨一枚だった。そして、彼女手には銀貨3枚があった。するとフリージアはにこやかに
「その手にある銀貨3枚はどうしたんですか?」
「これは…私のだ!!」
「ふーん。嘘とつくんですね」
「なんだと!!」
「それはただの銀貨じゃありませんから、嘘をついた人が持つと熱くなるようなまほうをかけていますから」
「え?そんなはずない。これは私が持ってきたものだ」
するとその女は銀貨をぐっと握った途端、ジュッという音が聞こえた。
「あーーつーーー!!」
そう叫んで銀貨を手放したのだった。
「貴様!!お前らやっておしまい」
男たちがフリージアに襲い掛かったので、思わず倒してしまった。
「ひっ!!」
その光景を見ていたフリージアは、にっこりとほほ笑んで。
「もうすぐ、警察がここにきますから…」
すると後ろから
「すみません。通報があったので来たのですが」
「すみませんね。こんな時間に、この人たちが子供を誘拐しようとしていたんで」
すると例の女は
「わ…私は知らない、こんなやつら知らん」
すると警察官が
「話は署で伺います。しかし、あんたらの悪事は全て聞いていましたので、覚悟しなさい」
こうして、フリージアは、女の子たちを救ったのだった。更に、彼女の実家、ドラボール家の使用人として、雇うことにしたという。
ここまでする彼女が偽聖女だとは到底思えない。
しかし、数日後、私はホーリーからある伝言を受けた。そう彼女暗殺しろと言う命令だ。
「フリージアが動いた。今日、エターナル平へ向かう。途中で一人になるように仕組んであるからその時を狙え」
「はっ」
***
フリージアはエターナル平へ向かう街道で一人ぽつんと歩きながら、思わずため息をついた。
今、私はエターナル平に向かっています。何故か一人で、マーリン様は、昨日の内にエターナル平に、なんでも、コーエン殿と打ち合わせがあるとか、それで何故私が一人になったかというと、王宮からの使いが来て
「近くで魔物が出現。応援要請で護衛の者を連れて行きます」
「それでしたら私も行きましょうか?」
すると使いの者を始め全員が慌てている。
「い…いえ、我々だけでダイジョブです」
「そうなの?」
「マーリン様からも今日中に到着するよう言われておりますので、ここで魔物と戦うと間に合わなくなります」
「確かにそうですが、魔物を倒す方が大事なのでは?」
「それは我々で何とかします。我々を信じてください。フリージア様は、早くエターナル平に向かって下さい」
「わかった」
という訳で一人になってしまった。か弱い女性をこんな片田舎の道を一人で歩かすなんて、盗賊でも出たらどうするのよ。すると、目の前に、あの騎士様が現れた。
「待ってたぞ」
やっぱり…しつこい人とは思ったけど、しかも、ここは街からはかなり離れている場所、やっぱり、私を殺しに来たと判断して方がいい。しかし、どうやって逃げようかな、多分、テレポーテーションで逃げる?かと言って、いきなり、エターナル平にテレポーテーションを使って行くことは、マーリン様から禁止されている。どうしよう?そうだ。盗賊だ。私は騎士様の後ろを指さした。、
「きゃー!!盗賊よ!!」
すると騎士様は私の声にびくっとなって、後ろを振り向いた。よし今のうちに…ダッシュしてにげた。
「あ…逃げたな」
騎士様は直ぐに私を追いかけてきた。しかも、早い…追いつかれると思っていたら目の前に10人くらいの人間が現れた。
見るからに盗賊風の輩だ。どうする?後ろには騎士、前には盗賊。えーい
『ミラージュ』
『テレポーテーション』
盗賊の前で私が立ち止まった状態の幻影を残して、盗賊の向こう側へテレポーテーションしたら、盗賊は
「観念しな。これからお前の味見をして…」
そこへ、私の後ろを追いかけてきた騎士様が叫んだ。
「貴様~!!」
その声に反応した盗賊は、騎士様が女だとわかると
「今日はついているね。女が二人も…ぐぁあああ!!」
騎士様は、一瞬で10人くらいいた盗賊を一掃してしまった。そして、私がいないことに気付いた。
「あの悪女め逃げたな」
そう言うと逃げている私を見つけた。
「待てーー!!」
きゃー追いかけてきた。待てと言われて逃げない人はいない。私、悪いこと何もしていないんだけどね。ん?そうだ。私、悪いこと何もしていないんだから逃げる必要がない…てそういえばこの間、あの人を無理矢理、聖女にさせたから怒っているのかも。ということは逃げるしかない。と思っていたら見えない壁にぶつかった。
「あれ?なによこれ!!」
私は焦った。この壁はどうも魔力によるもの。しかも、強力な奴。すると私の後ろに追いついた騎士様が
「これで逃げれまい。フリージア…いや、偽聖女様」
「う…」
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