いきなり婚約破棄されたので、聖女になって人助けをします。

Seabolt

文字の大きさ
上 下
41 / 69

――葛藤

しおりを挟む

あの女、ひょっとして本物の聖女なのか?

教会でも不可能な蘇生を簡単にやってのけ、しかも、あのような行動をして、更にあの後だ。

「あの家主は怪しいわ」

「あやしいって?」

「とりあえず、今晩、もう一度ここへ来ましょう」

そう話を終えた後、私は彼女と別れた。



教会宿舎に戻ると魔力を使い切った私は、目の下にクマを作っていた。
教会のシスターが私の顔を見てびっくりして

「きゃぁあああ」

まさか、叫び声をあげられるとは思ってもみなかった。更に教会の衛兵がやってきた。

「貴様!!ナニヤツ?」

「教会騎士団のクラリスだ」

私は身分を証明できる手形を見せると

「誠に申し訳ございません。あまりにもお顔がやつれておりましたので、見間違えました」

部屋に戻った時自分の顔を見て目の下にものクマに驚いた。そして、夕食時、その話をホーリーにすると大爆笑された。

「それは、仕方がない。いくらお前でも町中で大量殺人をしたら、教会としてはどうすることもできないからな」

「まったくた…えらい目にあったよ。あの女、聖女というより悪女だな、本当に」

「それは言えてる。あいつ変なところで頭が切れる。この間の鑑識の時もそうだ。してやられたよ。本当に」

この時、クラリスにはいつもと違う感情が湧いていた。いつも戦場を駆け巡り闘いの日々を送っていた。時には暗殺もした。教会からはよくやったと言われたが、達成感がない。初めの頃は、敵のせん滅という目標を達成したことに、充実感を感じていたが、最近は、人殺しが当たり前となって、充実感はなく、虚しさが心を支配していた。だから、一般人から心底感謝されたこと、更に心のどこかから湧いてくるうれしいという気持ちに悩んでいた。

そろそろ時間だ。私は、フリージアとの約束の場所へ行くと

「早くしないと」

「どういうこと?」

「とにかく」

彼女は私の手をつかんだ。

『テレポーテーション』

すると女の子の家につくと

「娘をどうするつもりなの」

「ええい!!はなせ」

数人の男とあの女が家に入っていて、女の子をとらえていた。

「ママ―」

「さっさと行くよ」

すると彼女らは振り向いて私たちの存在に気付いた。

「こいつの借金の方だ!!文句あるのか?」

証文を見せてきたが。その金額は銀貨一枚だった。そして、彼女手には銀貨3枚があった。するとフリージアはにこやかに

「その手にある銀貨3枚はどうしたんですか?」

「これは…私のだ!!」

「ふーん。嘘とつくんですね」

「なんだと!!」

「それはただの銀貨じゃありませんから、嘘をついた人が持つと熱くなるようなまほうをかけていますから」

「え?そんなはずない。これは私が持ってきたものだ」

するとその女は銀貨をぐっと握った途端、ジュッという音が聞こえた。

「あーーつーーー!!」

そう叫んで銀貨を手放したのだった。

「貴様!!お前らやっておしまい」

男たちがフリージアに襲い掛かったので、思わず倒してしまった。

「ひっ!!」

その光景を見ていたフリージアは、にっこりとほほ笑んで。

「もうすぐ、警察がここにきますから…」

すると後ろから

「すみません。通報があったので来たのですが」

「すみませんね。こんな時間に、この人たちが子供を誘拐しようとしていたんで」

すると例の女は

「わ…私は知らない、こんなやつら知らん」

すると警察官が

「話は署で伺います。しかし、あんたらの悪事は全て聞いていましたので、覚悟しなさい」

こうして、フリージアは、女の子たちを救ったのだった。更に、彼女の実家、ドラボール家の使用人として、雇うことにしたという。

ここまでする彼女が偽聖女だとは到底思えない。

しかし、数日後、私はホーリーからある伝言を受けた。そう彼女暗殺しろと言う命令だ。

「フリージアが動いた。今日、エターナル平へ向かう。途中で一人になるように仕組んであるからその時を狙え」

「はっ」

***

フリージアはエターナル平へ向かう街道で一人ぽつんと歩きながら、思わずため息をついた。

今、私はエターナル平に向かっています。何故か一人で、マーリン様は、昨日の内にエターナル平に、なんでも、コーエン殿と打ち合わせがあるとか、それで何故私が一人になったかというと、王宮からの使いが来て

「近くで魔物が出現。応援要請で護衛の者を連れて行きます」

「それでしたら私も行きましょうか?」

すると使いの者を始め全員が慌てている。

「い…いえ、我々だけでダイジョブです」

「そうなの?」

「マーリン様からも今日中に到着するよう言われておりますので、ここで魔物と戦うと間に合わなくなります」

「確かにそうですが、魔物を倒す方が大事なのでは?」

「それは我々で何とかします。我々を信じてください。フリージア様は、早くエターナル平に向かって下さい」

「わかった」

という訳で一人になってしまった。か弱い女性をこんな片田舎の道を一人で歩かすなんて、盗賊でも出たらどうするのよ。すると、目の前に、あの騎士様が現れた。

「待ってたぞ」

やっぱり…しつこい人とは思ったけど、しかも、ここは街からはかなり離れている場所、やっぱり、私を殺しに来たと判断して方がいい。しかし、どうやって逃げようかな、多分、テレポーテーションで逃げる?かと言って、いきなり、エターナル平にテレポーテーションを使って行くことは、マーリン様から禁止されている。どうしよう?そうだ。盗賊だ。私は騎士様の後ろを指さした。、

「きゃー!!盗賊よ!!」

すると騎士様は私の声にびくっとなって、後ろを振り向いた。よし今のうちに…ダッシュしてにげた。

「あ…逃げたな」

騎士様は直ぐに私を追いかけてきた。しかも、早い…追いつかれると思っていたら目の前に10人くらいの人間が現れた。
見るからに盗賊風の輩だ。どうする?後ろには騎士、前には盗賊。えーい

『ミラージュ』

『テレポーテーション』

盗賊の前で私が立ち止まった状態の幻影を残して、盗賊の向こう側へテレポーテーションしたら、盗賊は

「観念しな。これからお前の味見をして…」

そこへ、私の後ろを追いかけてきた騎士様が叫んだ。

「貴様~!!」

その声に反応した盗賊は、騎士様が女だとわかると

「今日はついているね。女が二人も…ぐぁあああ!!」

騎士様は、一瞬で10人くらいいた盗賊を一掃してしまった。そして、私がいないことに気付いた。

「あの悪女め逃げたな」

そう言うと逃げている私を見つけた。

「待てーー!!」

きゃー追いかけてきた。待てと言われて逃げない人はいない。私、悪いこと何もしていないんだけどね。ん?そうだ。私、悪いこと何もしていないんだから逃げる必要がない…てそういえばこの間、あの人を無理矢理、聖女にさせたから怒っているのかも。ということは逃げるしかない。と思っていたら見えない壁にぶつかった。

「あれ?なによこれ!!」

私は焦った。この壁はどうも魔力によるもの。しかも、強力な奴。すると私の後ろに追いついた騎士様が

「これで逃げれまい。フリージア…いや、偽聖女様」

「う…」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔石交換手はひそかに忙しい

押野桜
ファンタジー
メーユ王国の2級文官、イズールは「お年寄り専門」の魔石交換手。 辺境勤務の騎士団第4団団長アドルとの一日一回わずかな時間の定期連絡が楽しみの地味な毎日だ。 しかし、ひょんなことから国一番の「謎の歌姫」をすることになってしまい……?!

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」 その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。 『万能職』は冒険者の最底辺職だ。 冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。 『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。 口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。 要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。 その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...