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――ビンセント家の面子

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「ここは?」

「オリバー様、ドラボール家に行くのでは?」

「そうだった。行くぞ!!」

オリバー達は我が家に再びやって来た。丁度その頃、私は両親から驚愕の真実を知ることになる。それは、あの貧楚なオリバーが私の婚約者であったこと、そして、婚約を破棄された私は自暴自棄になって、馬車に引かれたということだった。

「そんな…あんな奴に婚約破棄されていたとは」

今の私からは想像がつかない。しかし、両親の話を聞くと私がそんな行動を起こした理由は、社会構造にあるという。女性は基本的に仕事につかない。特に貴族の女は、結婚適齢期までに結婚できなければ、庶民と結婚するか、貴族の妾になるしかないと聞いた。だから、私は自暴自棄になったのだろう。しかし、今の私にとって、結婚に何の魅力もない。だって、治療するだけで十分食べていけるようになったからだった。
するとそこへ召使の一人が入ってきた。

「大変です。ビンセント家の方がまたやってきました。どうなさいますか?」

「追い返すと厄介だ。もう一度家に入れろ」

「どうします?」

「厄介なことになったな」

「大丈夫ですよ。私に任せてください」

それは、マーリン様から何かあったら、現在修行中ですと押し通せと言われたのだった。だから、絶対に大丈夫だと思っていたんだけど…



「フリージア、まさか、君が聖女になっていたとは」

本日2回目の台詞、記憶を消したことを知っている私にとっては、想定内だけど、両親は呆然としている。ま…とうぜんだけど、そのことは置いておいて、

「そうですか…」

「元婚約者のよしみだ。今や上流貴族ビンセント家の俺様の妾にしてやる。光栄に思え」

「お断りします」

「そうか‥そうだよな…」

一人勝手に納得してくれた、これで帰ってくれれば、っと思っていると護衛の一人がオリバーソースに耳打ちをしている。

「な!!今、何と言った?」

「お断りします」

「はぁ~?フリージア!!正気か?」

「正気ですが…なにか?」

オリバーソースの顔が面白いくらいにゆがんでいる。完全に怒っているみたいなんだけど、今の私にとって、結婚なんてどうでもいい。しかし、私の言動に彼のプライドを思いっきり傷つけたようだった。

「断るか!!このビンセント家の申し出を」

「はい。マーリン様から修行中の身と言われておりますので」

この言葉がトリガーとなったようだった。

「この中流貴族のくせに!!こやつを捕まえろ」

彼の護衛が私を取り囲んだ。

「あなたは、王宮筆頭魔導士様の命令を無視されるのですか?」

「やかましい!!ここまでコケにされて、黙ってられるか?」

両親はこの光景におびえている。当然だろう、上流貴族ビンセント家の命令だ。貴族社会においてこの上下関係は破ることができないことなのだ。しかし、私はこんな理不尽なことは許すことはできなかった。

「そうですか…残念ですね…『パラライズ』」

すると私を取り囲んでいた。護衛が一斉に倒れ込んだ。

「な…何をした?」

「正当防衛です。か弱い私に5人もの男性が剣を振りかざして襲ってこようとしたのですよ」

「やかましい!!ここで俺の剣の錆にしてくれる!!」

彼は剣を抜いて構えた。一応、中流貴族出身だから剣の腕はそれなりになっている。けど、私には魔法があるので、どうとでもなるんですけど、するとそこへ別な人物から声がかけられてきた。

「そこのもの待ちない!!」

「何奴」

そこには3人の男性が立っていたのだった。






















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