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――初仕事

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こうして、マーリン様のもとで修行することになったんだけど、魔力に関する測定と適性を調べあとは、回復魔法の練習をしていた。といっても、王宮騎士団や魔導士達が訓練で怪我をした人たちを相手に練習をしていた。
すると急に外が騒がしくなってきた。

「急いでくれ!!」

「はやく!!」

「王子様…まずはあなた様を」

「何を言っておるのだ。クラウスは今にも死にそうなんだぞ」

などと声が聞こえてきたんだけど、見習いの私には全く関係ないと思って、目の前の騎士さんの捻挫を直していた。

「はい。治療終わりです」

騎士は捻挫したところの動きを確認した。

「うん…痛みは消えている。これで明日からも訓練ができる。ありがとう」

「どういたしまして」

「ふう…終わった」

これで今日の練習は終わりと思っていると再び外が騒がしくなってきた。

「誰かいないのか~!!クラウスを治せるものは」

「それよりも王子様!!あなた様の治療を!!」

「そんなことより、本当に誰もいないのか?マーリンはどうした?どこにいる?」

「マーリン様は、今、浄化魔法の最中です」

「そうか…」

見習いの私には一切関係ないと今日行った治癒魔法のカルテを読み返しまとめをしていた。すると、私の部屋の扉が開いた。

「いるではないか」

「え?」

目の前には左手を失っている男性がいきなり入ってきて、私の手を引っ張った。

「ちょっと来い!!」

「え?ちょっと」

振り払おうにもその男性の力が強すぎる。

「痛い!!」

「いいから来い!!」

こうして無理やり連れてこられた場所には、瀕死の状態の人たちが横たわっていた。その悲惨な状況から私は目を背け、吐き出してしまった。

「王子様!!この者は見習いとしてきたばかりです」

「見習いだろうが。関係ないだろ」

ようやく落ち着いた私なんだけど、目の前の男の暴力的な言葉いプチンと切れてしまった。

「さっさとやれ」

「何を言っているのよ!!そんな暴力的な言葉でやれと言われてもできるわけないでしょ。魔法を使うのよ。わかっているの?」

すると王子様は、黙ってしまった。そして、私に対して頭を下げてきた。

「すなない。けど、あいつらは俺を守るためにああなったんだ。頼む…この通りだ」

そこまで言われては断ることができなくなった。

「私は見習いですが、やれるだけやってみます」

重体が5名、重傷者は王子様も含め20名、こんな大人数を治せるの魔法はない。一人づつやるしかない。初日で『ヒール』が使えるようになった私、マーリン様の確認で『完治の光』を今朝確認したもらったところだった。やるしかない。私は魔力をこめて手をかざした。

『完治の光』

すると本来は手からかすかな金色のオーラが出て、患者を包んでなおすはずだったんだけど、私の体は、金色の輝き、辺り一面をその光で包んだのだった。

「ま…まぶしい」

わずか数分の出来事…

奇跡が起きた。

重体5名、重傷者20名、全て完治したのだった。

「ありえないことが起きた」

「奇跡だ」

しかし、この奇跡は世に出ることはなかった。





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