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ばかなことを
しおりを挟む「ばかなことを」
それが司令部からの連絡を聞いたディカッシュの一言目だった。今回の土星沖での会戦の結果は、ほぼ互角といってもよかった。実は、ミドロフ率いる艦隊の奇襲によって、敵本体と挟撃を受けたE2連合艦隊主力は、かなりのダメージを受けていた。たまたま、土星の輪に潜んでいたディカッシュの艦隊が、敵主力の側面から攻撃をしたたから、E2艦隊は全滅を逃れることができた。それは、土星の輪の中からの超アウトレンジ攻撃というものだった。土星の輪から突然攻撃をうけた地球艦隊は体勢を崩し、その隙をついて、E2艦隊が逃げることが出来たようなものだった。しかも、地球艦隊の体制を戻るのが予想よりも早いため、完全には逃げるというよりは、双方の艦隊が真正面からぶつかり合うような形となり、もはや消耗戦の様相を呈しいた時に、地球艦隊は、鮮やかな艦隊行動によって、撤収をしたのだった。こうして終えたばかりの会戦を本国は、完全に勝利したと勘違いしていたのだった。
そして、出てきた司令は、アルデバラン攻撃だった。そんな言葉を聞いたディカッシュは我が耳を疑った。しかし、司令は同じ言葉を繰り返した。しかも、指揮をディカッシュにゆだねるというのだ。実際には、帝国を追い払ったといって、息を荒くする政治家と責任を取りたくない軍部の小競り合いの結果、現在の艦隊でアルデバランを攻略するという方針が出たようだった。本国の政治家たちは、早く艦隊を地球に送り込みたいのが本音だったが、現在の戦力を持っていくには、時間がかかるというのが事実だった。しかし、バカな人物もいたもので、我こそはと、名乗り出た人物がいた。名前もめでだくハッピーという人物だった。
彼の経歴はすこぶる優秀で宇宙軍大学を首席で卒業していて、現在は、軍の要職についていた。彼の登場で、ディカッシュがもがいている最中にも関わらず、E2連合の第2、第4艦隊が地球に向け出港することになった。しかし、この事実は、ディカッシュには知らされていなかった。
土星沖で待機するディカッシュと要塞防衛艦隊の司令だったルーカスは、話し合いをしていた。
「どうする?」
「命令は、しかたないさ。けど、防衛艦隊は一度要塞に戻すべきだ」
「わたしもそう思う。しかし、命令はどうする?」
頭を掻いたディカッシュ、しばらく考えていると、ぼそりと
「ダミーはどのくらいある」
「は?」
意味が解らないルーカスにもう一度ディカッシュは聞いた
「ダミー艦はどのくらいある」
ようやく理解したルーカス
「ああ・・・200くらいあるぞ」
「守備艦隊は、約80隻くらいか・・・とりあえずダミーをくれ」
それを出して、進軍するふりをするその隙に、要塞に戻ってくれ
「わかった」
こうして、ディカッシュは、やむなしに進路をアルデバラン要塞へ向けることになった。
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