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林間学校 8

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修学旅行の夜

夏の夜

男子たちはソワソワとしている。一部は女子の部屋に侵入したいと思っている不埒な連中と山奥の旅館、ということでカブトムシやクワガタを撮りたいと思っている輩がいた。しかし、彼らは当然のごとく玉砕している。

俺はというとそんなことに興味もなかったのだが、当時、家では去年もらったカブトムシが卵を産んで成虫になっていた。
そんなこともあって、カブトムシのえさを持ってきていた。それは樹液と呼ばれるもので、現在みたいにぜりー状にはなっていないのだ。因みに現在で言うところのウナギのたれのプラスチックの入れ物に入っているのでお手軽に持ってこれる。
更に言うとこの時代、当然クーラーなんて物は使わせてくれない。網戸と扇風機である。
だから、窓の外側に樹液を垂らしておいたのだった。そして、夜更かしをしていた連中とは違って俺は、あさ早くに起きて、樹液を塗った場所を見ると

「おお!!」

ノコギリクワガタとコクワ、そして、カブトムシまでいた。

「ラッキー」

俺は用意していた。カップにこいつらを個別に入れておいた。そして、起床の時間になって、中田君がそれを見つけた

「佐藤!!これどうしたんだ?」

「あ・・・昨日、寝る前、そこに樹液を塗ったら、来ていた」

すると中田君たちはその場所へ行くと

「おお!!」

どよめきが上がった。そして、中田君の手にはミヤマクワガタがあった。後はカナブンが集まっていただけだった。俺としては、クワガタとかがほしい訳ではない。

「あんまり騒ぐと先生におこられるよ」

丁度、そのころ先生がやってきたのだった。

「お前ら早く起きろ!!!」

俺たちは落ち合えず体操服に着替え、ラジオ体操の集合場所に行った。そして、ラジオ体操が終わって、朝食に、小林さんが朝からくっついてくる。やはり、昨日のことは本当のようだ。逆に太田さん山田さんがフォローをする始末だそうだ。

朝食も終り、帰り支度をしていると先生に昆虫を持っていることがばれてしまった。

しかし、樹液を塗ったことは隠しておいて、網戸についていたとみんなで口裏を合わせて、その場をしのいだのだった。すると先生は見つけた場所を除いた。

ばれた・・・そう思っていると

「おお!!カブトムシがいるぞ!!」

先生はメスのカブトムシを捕まえていたのだった。

こうして、俺が捕まえた昆虫はクラスで飼育することになった。

やがて、旅館を出るころになる。そして、世話をしてくれた旅館の皆さんにお礼を言う時、ふとあのにーちゃんがいないことに気付いた。それは、彼と遭遇したみんな、そう思ったに違いない。だから、俺が

「あのもじゃもじゃ頭のにーちゃんは?」

するとおかみさんが

「はて?もじゃもじゃ頭のって誰のことだ?」

「だから、背が高くてひょろっとしていて、頭がもじゃもじゃのにーちゃんは?あの人に助けてもらったんです」

俺の言葉を聞いて、おかみさんたちはお互い顔を見合わせた。

「実はな」

そこまでいったところで先生が

「佐藤!!余計なことを聞くな」

「でも!!先生、先生も助けてもらったでしょ」

「・・・」

先生の顔色がわるい。なぜだ?と思っているとおかみさんがいちまいの写真を見せてくれた。

「この子のことかい?」

そこにはあのにーちゃんの姿があった

「ええ・・・そうです」

「はぁ・・この子は5年前に亡くなっているんだ。子供が大好きでな子でな」

俺たちみんなの血の気が引いたのは言うまでもなかった。

こうして、林間学校も無事に終わったのだった。

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